1. トップページ
  2. 血肉とサイリウム

柘榴さん

性別 男性
将来の夢
座右の銘

投稿済みの作品

0

血肉とサイリウム

17/10/02 コンテスト(テーマ):第144回 時空モノガタリ文学賞 【 事件 】 コメント:0件 柘榴 閲覧数:169

この作品を評価する

 残虐な事件が起こった。落ち目のアイドルの頭部に人気グラビアアイドルの胴体、更に人気モデルの手足を接合した死体を1人の男が造り上げた。
 俺は刑事になぜそんな事をしたのかと嫌というほど問い詰められた。
 答えはたった1つ、俺が最期に彼女を輝かせるための「プロデュース」するためだ。
 その過程を、犯人でありプロデューサーの俺が説明しよう。


 アイドルプロデューサーを初めて10年、俺の担当するアイドルは輝いているとは言い難かった。

「私は最後まで売れなかったけれど、プロデューサーと頑張ったこの10年は無駄じゃなかったよ!」

 俺の担当するアイドル、真衣はそう言う。
 そんなわけがあるか。お前が友達と遊ぶ時間、部活に打ち込む時間、恋をする時間の青春の全てを犠牲にしてまで努力をしてきたのを俺は知っている。
 それでも、真衣が大きなステージの上で輝く機会は与えられなかったのも知っている。

「もし、私が売れるようになったらね……まずプロデューサーにご飯奢ってあげるね!」

 真衣は俺に言い聞かせるようによくこう言ってくれた。
 真衣はモデルのように長く伸びた手足もなければ、グラビアアイドルのような豊満な肉体もない平凡な女の子だった。けれど、彼女の笑顔は太陽のように温かく、優しかった。
なのに、なぜ……なぜ真衣は認められない?

 俺は悩み続けた。そして、やっと1つの答えにたどり着いた。

 その答えにたどり着いてから、俺の頭の中は最後に彼女を輝かせる事への使命感と責任感で塗り潰された。彼女を輝かせるためならばどんな手段でも使おうとこの時、強く心に決めた。

 そこから真衣の引退の日までの記憶はあまり無い。確かなのは、俺が持病の精神疾患を拗らせて事務所を辞めた事と、その日こそが真衣を輝かせるために相応しい日であるという事。

 そしてその日、俺は真衣を殺した。
 最後の仕事を終え、俺の部屋を訪れた真衣の腹に思い切り包丁を刺した。
 なんで、どうして、と彼女は血と涙を流す。それでも俺はただ彼女の腹を刃で抉り続ける。

 やがて彼女は死んだ。
 これでやっと彼女を輝かせる準備が整った。ようやく彼女を輝かせ、プロデューサーとして最後の仕事を終える事ができる。

 俺は彼女の首だけを切断した。そして、真衣という唯一無二の「画」を完成させる為のピースを当てはめ始める。

 まず真衣の首と俺が一昨日殺した人気グラビアアイドルの胴体を繋ぎ合わせる。真衣の幼くも美しい顔と豊満な胸を持つ胴体が合わさり、神秘的だ。
妖艶さを増した真衣に俺は目眩を感じる。

 次に昨日殺した人気モデルの手足と真衣を接合する。真衣は低身長でスタイルは良いとは言えなかったが、今俺の目の前の真衣はしなやかで、少し大人びている。

「美しい……」

 俺は目の前で接合された歪な真衣を前に涙を流しながら歓喜する。美しい真衣の顔 と、豊満な肉体、恵まれたスタイル。ここまで完璧なアイドルが他にいるだろうか。いや、真衣だけだ。

 けれど、何か足りない。ピースを接合され完成されはずの真衣という完璧な「画」に何かが欠けている。
真衣の見開かれた温度のない目と俺の目が合う。

 ああ……そうだ。俺はようやく気付いた。
 笑顔だ。この肉塊には真衣にあった温かい笑顔は浮かべられないんだ。
 俺は、この手で真衣の笑顔を奪ってしまった事に初めて気がついた。

 テーブルの上に大切に飾られていたサイリウムが視界に入った。
 これは真衣の初ライブで俺が振っていたものだ。こんなものを、真衣はずっと大切に……
 薄暗い部屋の中で俺は縋る様にサイリウムを焚く。
ピンク色の灯りが部屋に広がる。
 その光は真衣の顔も美しく照らし、真衣の暗い瞳の中に微かに灯りが灯った。
 その照らされた瞳だけには、真衣の命が一瞬だけ宿って、真衣が俺に笑いかけてくれたように見えた。

「真衣、これでお前は狂ったプロデューサーに無残に殺された悲劇のヒロインとして世界中がお前に注目する。お前を起用しなかった業界の連中も、お前に振り向きもしなかった街中の連中も、みんなお前を憐れみ、みんなお前を見てくれる……」

 俺はサイリウムの安っぽい光の中、真衣の血肉に抱かれながら一晩中泣き続けた。



 


コメント・評価を投稿する

コメントの投稿するにはログインしてください。
コメントを入力してください。

このストーリーに関するコメント

ログイン
アドセンス