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笹岡 拓也さん

文章で笹岡 拓也の世界を伝えられたらいいなと考えてます。 キャラクターたちがイキイキとした物語を書いて、読んだあと何か残れるような作品にしていきます。

性別 男性
将来の夢 自分の作品を多くの人に読んでもらうこと
座右の銘 生きているだけで幸せ

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彼の告白

17/09/26 コンテスト(テーマ):第144回 時空モノガタリ文学賞 【 事件 】 コメント:0件 笹岡 拓也 閲覧数:248

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「俺に近づかない方がいいよ。俺は原沢団地殺人事件の犯人の息子だから」
彼は私に告白した。今まで多くのことを語ってこなかった彼の言葉は想像以上に重かった。
原沢団地殺人事件は私が産まれてすぐに起きた事件。事件発生から十六年が経った今もなおニュースで時々特集が組まれるほどの大きな事件だった。
「え。でもまだ犯人って捕まって...」
この事件はまだ犯人が捕まっていない。ここまで大きい事件なのに、未だ犯人が捕まっていないのは極めて珍しい。とニュースで言っていたのを覚えてる。
「うん。俺の父ちゃんは平然と暮らしてるよ。父ちゃんが犯人なんて誰も知らないから」
彼は淡々と語っているが、これが本当だとしたら私はとんでもないことを聞かされてることになる。
「でも悪いことをしたらいつかは見つかる。その時になれば俺はここにいれなくなる。だから君を傷つける。その前に俺から離れるべきだ」

私は同じ高校に通う彼に一目惚れをした。しかし彼は誰とも交わろうとしなかった。そんなクールな姿が私を虜にした。
私は彼に毎日のように話しかけた。どこに住んでるのか?どんなことが好きか?中学時代は何部だったのか?今彼女はいるのか?
私がたくさん話しかけることで、彼は少しだけ話してくれるようになった。彼と出会えてから私は毎日が楽しくなった。
それでも私はただの友達の関係では満足できなくなっていた。好きという感情がもう抑えきれなくなっていた。そして私は彼を校舎裏に呼び出し告白をした。
「ずっと好きでした。付き合ってください」
その告白の答えはノーだった。そして彼から私の考えていた未来を打ち砕くような重い告白をされた。

「でもそれって何かの間違いなんじゃ」
私の声は微かに震えていた。まるで殺人犯と話しているかのように。私は彼を今までのようには見ることができなかった。ただこの告白が何かの間違いだと自分に言い聞かした。
「いや、それはないよ。父ちゃんが中学の頃言ってきたから。元々友達だったんだって、殺害された人と。でも口論になって殺したんだって」
彼の言葉はとても真実味があり、嘘でも間違いでもなさそうだった。
「だから俺に近づかない方がいい」
彼はそう言うとスタスタと教室に帰って行った。そんな彼の背中を私はただただ見つめるだけだった。

次の日から彼は学校に来なくなった。私に秘密を言ったからかは分からない。ただ彼が学校に来なくても、誰も困っていなかった。
私自身も彼が学校にいなくてホッとしていた。正直、私が彼に告白したことすら忘れてしまうような出来事だった。私は彼に会うのが怖かったんだ。
彼はその次の日もまた次の日も休みだった。このまま彼は学校に来ないのか?私は少しだけ彼のことを心配していた。
「なぁ!速報だって!」
「まじか!ってかこの辺じゃね?あれ?」
私の周りがスマホのニュースアプリから届いた速報に驚いていた。私もみんなにつられてスマホを取り出しニュースを見る。
【原沢団地殺人事件に終止符 鈴川博正容疑者逮捕】
私はニュースのタイトルを目にした途端、あまりの衝撃にスマホを落としてしまった。
今彼はいったいどこで何をしてるのか?私は何も分からなかった。それでもこの町のどこかにいることを願い、学校を抜け出し走った。
殺人犯の息子だから怖い?私は彼のことを好きになる資格なんかなかった。彼が休んだからホッとした?私は最低だ。秘密を打ち明けてくれた彼に寄り添うこともできない私はどうしようもない人間だ。
彼は何も悪いことをしてないのに、彼のことを傷つけたのは私だ。あの時、一言でも「私は鈴川くんの味方だよ」と言ってあげるべきだった。彼は今頃どこで何をしているだろう。
私は無様な走りを続けて、足がもつれてしまい転んでしまう。膝から血が滲んでいる。痛い。すごく痛い。こんな派手な転び方、小学生以来だ。こんなに痛いんだ。
でも私の痛みよりも彼はよっぽど痛かったはず。今も痛いはず。
私は彼を好きになる資格なんかない。彼を助けてあげる権利なんかない。それでも私は今、すぐにでも彼の側にいきたい。
だから私は立ち上がり、もう一度走り出す。彼が独りきりにならないように。


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