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瀧上ルーシーさん

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性別 男性
将来の夢 プロ作家になること。
座右の銘 犬も歩けば棒に当たる。

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悪いのは誰?

17/09/15 コンテスト(テーマ):第144回 時空モノガタリ文学賞 【 事件 】 コメント:0件 瀧上ルーシー 閲覧数:174

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 小学五年生の山上達也は広い自宅で家庭教師の下勉強をしていた。
 小学三年生から私立中学に入るために親に家庭教師をつけられている。勉強の最中、本当なら放課後は他の小学生のように遊んで過ごしたかった。普通の幼少期の遊びを知らないで勉強して私立の中学を目指すことは果たして健全なことなのだろうか、そんなことを勉強中に子供ながら達也は思った。
 家庭教師の大学生の男は優しい。問題がわからなくても定規で叩かれるとかそういうことはない。ただ単純に勉強をするのはつまらなかった。勉強ばかりだから友達がいないのは仕方がないにしても達也の親は漫画やゲーム機を買い与えてくれない。盗んでくるわけにもいかないので家庭教師が休みの日は近くのゲームショップまで行って、ソフトのパッケージやゲーム機本体を眺めて時間を潰すこともよくあった。だいたい家庭教師が週に四回。しかも一日につき三時間も勉強させられるのだから、達也からするとたまったものじゃない。家の門限も五時だし、家庭教師が終わってから外へ遊びに行く余裕は時間的にも体力的にもなかった。
 翌日、小学校で昼休みの時間。教室で達也は同級生達に煽られた。
「山上には友達がいないー」
「ゲーム機も持っていないー」
「ガリ勉野郎だろうからさー中学になったら別々だからさー」
 とても頭にくるが何か反応したら余計いじめられると思ったので、達也は親から読むことを許されている児童文学の本に目線を落とした。
 その日の学校が終わると達也は家庭教師をズル休みして、近くにある地元のショッピングモール内を一人でうろうろと歩いて回った。小遣いも貰っていないし、見ているだけで達也には何も買えなかった。それでも久しぶりにくるモール内は百円ショップやゲームショップを眺めているだけで楽しかった。
 そうして家庭教師が終わる時間帯になって家がある住宅街を達也はフラフラと歩いていた。母親に怒られることを想像すると家に帰るのは億劫だった。
 外からも見られるアパートのベランダで洗濯物を取り込んでいる中年の男がいた。男は大量の洗濯物を取り込んでいた。
 達也は無視して家へ帰ろうとする。ベランダから中年の男は叫ぶように言った。
「洗濯物取り込むの手伝ってくれない!」
 独特な喋り方をする男だった。吃音というか声が震えていた。
 そうしてアパートの前面から階段を上り男が洗濯物を取り込んでいた階に行くと、玄関のドアが開いている部屋があった。そこまで行くと、髪が薄い腹が出た男が達也を待っていた。
「手伝って手伝って」
 言われてアパートの中に入ると、漫画やDVDやゲーム機や人形などの遊び道具で部屋は溢れかえっていた。
 そうしてスリッパのまま狭いベランダに出ると、男が洗濯ハンガーから乾いた服を取って渡してくると、達也は何個も並んでいる籠の中にそれらを入れていった。それが終わるとアイロンはかけないが、洗濯物をたたむのも達也は手伝わされた。
「お礼にアイスをあげる。それ持って帰っていいよ」と男は言った。
 だが達也はもっと重要な対価を貰おうとしていた。
「そんなのいらないよ、おじさんの家で暮らしたい」
「おお! それは嬉しいな。ぼくも一人で寂しかったんだ」
 そして男の了承を得た達也はアニメDVDを見せてもらったり漫画を読んだり、教えてもらいながらパソコンでインターネットをやった。夜は男と二人で並んで布団の上で寝た。
 翌朝達也が目を覚ますと、パンの焦げる臭いとフライパンで何かを焼く音が聞えてきた。いいにおいもする。
 眠るときは壁に立てかけていたローテーブルの上にすぐに二人分の朝食が並んだ。トーストに目玉焼きにウィンナーにミルクだった。男はミルクではなくコーヒーを飲んでいた。
 達也は朝食を食べている最中に考えた。目の前で朝食を食べている男は、もしかしたら障害者なのではないか? 普通の判断力があったら見知らぬ子供を家に泊めるはずがない。
 それでも達也はできれば自宅ではなくここでずっと暮らしたかった。得体の知れない中年の男のことを好きになりかけていた。
 その日は学校にも行かないで男の部屋で遊んでいた。男も仕事へ出かけるそぶりは見せなかった。
 十時頃になって近所のスーパーへ二人で出かけて帰ってくると、昼食前くらいにアパートのドアを何度も叩かれた。
「警察です。昨日から行方不明の小学生がこの部屋に入るのを見た人がいるそうです。事情を聞かせて下さい」
「今もいるよー、ちょっと待っててー」
 なんて男は言った。警察が怖くはないのだろうか。今まで達也は自覚していなかったがこれは誘拐事件ということなのか。
 達也は男と二人でパトカーに乗せられ、警察署まで連れて行かれた。
 しばらくして泣き顔の母親が達也を迎えにくる。
 アパートの男はどうなるのかと達也は彼を心配した。


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