1. トップページ
  2. 行けえっ!

井川林檎さん

ネット小説を書いております。 PR画像はカミユ様からの頂き物です。

性別 女性
将来の夢 小説をずっと書き続けていたい。
座右の銘 人は人、自分は自分。

投稿済みの作品

0

行けえっ!

17/09/11 コンテスト(テーマ):第144回 時空モノガタリ文学賞 【 事件 】 コメント:0件 井川林檎 閲覧数:255

この作品を評価する

 事件である。エマージェンシーだ。
 一刻も早く、この深刻な事態を鎮めなくては……!
 


 攻撃技は、だいたい一日に三回。
 それ以上使っても無意味とされている。

 今回、わたしに使う事を許された攻撃技は4種類だった。
 (今回はまあ、多いほうだな)
 わたしは、ただ俯いて、説明を聞く。なんでもいい、どうせ聞かされても分からない。
 頭にあるのは、とにかくこの状況をなんとかしたいという一念。

 (はやいとこ、攻撃を仕掛けなるべき)
 奴が暴れ回っている事態は、変わらないどころか、刻一刻と悪化している。
 4種類の攻撃技を一日に三回。ぐっと、与えられた「攻撃の種」を胸に抱える。
 
 攻撃技を使用するにあたり、長い説明と丁寧なプリントが手渡される。早く。こんなことしている場合じゃ。
 ……。
 


 やっと、説明から解放された。
 外に出て、車に乗り込む。

 一秒の猶予もない。今ここで、さっそく仕込まれた「攻撃の種」を繰り出してやる。

 ……見てろよ。



 「いでよ、タリオン!」
 巨大ロボが天から降ってくる。大地を揺るがす轟音がたつ。もうもうと砂煙――アスファルトが割れるほどの威力を期待するぜ、タリオン。

 タリオンが落ち着く。
 すぐさま次の攻撃に移る。間を入れずに参る。
 奴め、唐突に現れたタリオンに、あんぐり口を開いて茫然自失だ。

 「トスフロ〜キサシン〜トシルっ」
 溜めて溜めて――今だ。
 「……さあん、えぇえええんっ」
 酸塩!

 行け、焦げ付かせる勢いで!灼熱の攻撃が炎を上げて地を走る。
 うねる赤い怒りよ。
 
 のんべんだらりと、この世の春を謳歌していた奴らは、タリオンが現れた衝撃から立ち直っていない。
 炎の攻撃を真正面から浴びて、悶絶している。
 
 まだだ。まだまだだ。これからが本番だ。
 行くぞ、次だ。

 「ムコダイン、召喚っ」
 召喚獣ムコダインが、にゅるんと空気中から現れる。赤い目をした凶暴なムコダイン。
 いい。いいぞムコダイン。
 召喚主をも喰らい尽くす勢いの、獰猛な魔界の野獣だ。ねばっとして、どろっとして、ぐちゅっとして、べっと切る。
 これには、流石の連中もびっくりだ。斜め上の攻撃だろう。いいぞそのまま奴らを絡めとれ。

 
 そこでわたしは、はっとたじろぐ。
 いい加減に聞き流していた説明の部分を思い出した。
 説明書は手元にあるが、こんな文字、まともに読むわけがない――しまった、攻撃の手順を間違えた――本来一番最初に飲むべきだったこれが、最後になってしまったぞ。

 どうしよう、どうしようか。

 だが、迷ったのはほんの数秒だった。
 いや、彼は最後にこう言ったではないか?ながながとした説明なんか、どうでも良くなるような一言だ。
 むしろ、あんな説明はいらなかった、と思われる位の一言だ。
 わたしはそれを思い出した瞬間、自信を取り戻し、最後の技を繰り出したのである。



 「喝」
 びりぃっ。封を切る。
 「っ魂っ」
 きゅぽん、んぐっ、ごっ、ごっ、ごっ――口腔内をお助け水で満たし。
 「ぐぶぼっおっ」

 闘おおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!
 ……んごっくん。


 


 「……こちらはですね、抗生剤の役割を持っておりまして、朝夕の二錠となっております。こちらは痰の切れを良くするもので、一日三回。そしてこちらは、抗アレルギーのものでして、これも一日三回。ええと、そしてこちらは葛根湯ですね、こちらも三回ですが、これは食前でお願いします」
 
 食前と食後。
 一日二回と三回。
 五日分……。
 
 だけど最後に彼は言ったのだった。
 「ですが、お忙しかったりなどしましたら、まとめて食後に服用されても構いません」



 (毎回説明するのも大変だろうな、薬剤師さん)
 ちなみに今は、食事には全く関係のない時間だ。
 いいんだよ、なんでもいいんだ、体に入れさえすりゃあ……。


 第一回目の攻撃を喰らった「奴ら」は、ちょっとは大人しくなるだろうか。
 暗示効果で、心なしか楽になったようだ。エンジンをかける。うちに帰ったらまた熱を測ろう。
 お薬さん、体の一大事に、早く早く効いておくれ。


コメント・評価を投稿する

コメントの投稿するにはログインしてください。
コメントを入力してください。

このストーリーに関するコメント

ログイン
アドセンス

ピックアップ作品