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与井杏汰さん

突然思い立って短編小説を書いてみたくなりました。このサイトを知って、うれしく思います。

性別 男性
将来の夢 そこそこの健康と、そこそこの自由。
座右の銘 病は気から。

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オフィスの叱責

17/09/10 コンテスト(テーマ):第142回 時空モノガタリ文学賞 【 上司 】 コメント:0件 与井杏汰 閲覧数:113

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笑顔もなく、ただ「わかりました」と答え、自席に戻るH君に、小声で話しかけた。
 「ねぇ、課長に何言われたの?」
彼は面白くなさそうに答えた。
 「先週、顧客からクレームがあったそうだ。俺の対応が気に入らないって。で、次もこうだと、担当を変えるって」
 「それって、T商事? だったら、相手の担当も昔から問題あるでしょ? 何であなたの失点みたいになってんのよ」
 「知らないよ。むしろ担当から外れたいくらいだからいいさ」
彼はつまらなそうにそう言うと、パソコンのキーボードを打ち始めた。

正直なところ、K課長の評判は悪かった。
今回の件に限らず、過去の経緯や、個々の事情を考えずに、特定の個人、その多くは彼とそりが合わないと目されているのだが、その人の責任に置き換えて叱責することがあった。
私は今日何度目かの溜息をつくと、K課長の席に向かった。
 「課長、お話があります」
 「何だね」
 「ここでは何ですので」
 「いいから言いたまえ」
相変わらずこれだ。そう思いながら言った。
 「課長、ふたご座、ですよね?」
 「なに?」
あきらかに苛立っていた。
 「それがなんだっていうんだ」
 「今日の朝の占いで8位でしたよ」
バン!と机がなった。
 「君は、仕事中に、私の星占いの説明に来たのか!」
K課長は目を吊り上げて怒った。
しかも8位って嬉しくねぇ、という顔だ。
 「そんなことより、君の課題はどうなった? S企画の提案書、まだできてないんだろ? それから、先週のレポートも後から言おうと思ってたんだが、不足だらけだ。いい加減、自分の仕事の遅さを自覚したらどうだ?」
 「続きがあるんです。私はしし座です」
 「だから! そんなことは聞いてないんだ!」
もはや私の顔も見ずに憮然としていた。
 「今日のラッキーパーソンが、ふたご座のダンディーな人、なんです」
 部屋中がシーンとなった。そしてK課長の顔色が変わった。
 「そ、それとなんだ、私と、どう関係があるんだ」
 「ですから、課長とお話ができたら、何かいいことがあるかなって思ったんですけど、ごめんなさい。お仕事中に」
 課長は顔が真っ赤になって、ごもごも言った。
 「あ、あれかな、部長とか専務も星占い好きかもしれないし、聞いて見ろ。もしかしたら、ふたご座かもしれないだろ」

私は一礼して席に戻ると、H君にニコっと笑った。
 「お前やるな」
彼は言った。
 「あのね、ふたご座の本当の今日の運勢は『口車にご用心』。そして、私しし座のラッキーパーソンは『毒舌な人』だったの」
そういって笑うと、H君も笑った。


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