1. トップページ
  2. ママとの約束

笹岡 拓也さん

文章で笹岡 拓也の世界を伝えられたらいいなと考えてます。 キャラクターたちがイキイキとした物語を書いて、読んだあと何か残れるような作品にしていきます。

性別 男性
将来の夢 自分の作品を多くの人に読んでもらうこと
座右の銘 生きているだけで幸せ

投稿済みの作品

1

ママとの約束

17/09/07 コンテスト(テーマ):第143回 時空モノガタリ文学賞 【 約束 】 コメント:1件 笹岡 拓也 閲覧数:642

この作品を評価する

「一緒に頑張って東国大学に行こうね!約束しましょ」
私が小学5年生だった頃、ママは私に言った。その日から私とママは約束を果たすために頑張った。
私はとにかく塾や家で勉強を、ママは私に合った勉強方法を探していた。私とママを見てパパは
「もう少し気楽にやればいいんじゃないか?」
と言ってくれていた。それでも私とママは約束を守るために努力した。
塾の友達はみんな休み時間になるとゲームやスマホをいじったり、恋愛話を楽しんでいる。そんな中、私は次の授業の予習に勤しんだ。
中学生になるとみんな私を神童と呼び始めた。勉強ができるとみんなから認められていることが私の励みになった。でも私は勉強ばかりしているから友達なんていなかった。
ママは私の成績を見て喜んでくれない。まだやれる、もっとできるはずと口を酸っぱく叱る。でもママはいつだって最後に
「私たちの約束、一緒に頑張って果たそうね!」
と言ってくれる。だから私は勉強を頑張ることができたんだ。

私は県内トップクラスの高校に入学することができた。しかしその高校では私より勉強ができる子ばかり。どんなに勉強を頑張ったって上にはいけなかった。
「ねぇ。こんなんじゃママとの約束果たせないよ?一緒に頑張ってきたんじゃないの?」
ママは私の成績を見て呆れた顔をしながら怒っていた。私はママとの約束を守りたくて勉強を頑張ってきた。だから私はママに言った。
「ごめんなさい」
またいつものように「私たちの約束、一緒に頑張って果たそうね」と言ってくれると思っていた。でもこの日のママは違った。
「おとなりの修一くんね、海外でもトップの大学に入学が決まったんだって。ママと約束してもこんな成績じゃ修一くんのようにはなれないわね」
私の頭の中でプチンと小さく音が鳴った。私は今取り返しのつかないことを言おうとしている。それは分かっていても感情は言葉となって口から飛び出していった。
「ねぇ。ママの言う約束ってなんなの?私はママのなんなの?約束守れなかったら見捨てられちゃうの?」
ママは私の怒りに言葉を詰まらせる。それでも私は言葉を吐き捨てるように言った。
「私はママが喜んでくれると思って約束を守ろうとしたけど、ママはまわりの人ばかり見て私に期待してるだけじゃない!」
その言葉を境に私とママは約束の話をしなくなった。いや、あの日以来勉強の話も学校の話も話さなくなった。そしてママとの会話はなくなった。
何年も私とママは約束を果たすための話しか話して来なかったと気がついた。

「卒業おめでとう。あなたは私との約束が無くても東国大学に入学できたのね」
私は大学受験に見事合格し、高校を卒業した。あの日からほとんどママとの会話はなかったから、卒業式の日に話しかけられて少し驚いてしまう。
「ううん。私はママと約束してなかったら大学受験はできなかったと思うよ。私も約束してなかったらもっと友達とか作って楽しく過ごしてたかもしれない。ママとももっと家族らしい会話ができてたかもしれない」
私はあの日からママと上手く話せなかったことが怖くてたまらなかった。
「ごめんなさい」
私の言葉にママは謝った。謝るママの姿を見て、私はママに謝ってほしかったんじゃないと感じた。
「あの日約束した大学合格は叶えたよ?だからこれからは楽しい話いっぱいしよ?楽しいことたくさんしよ?」
私はこれから楽しい未来をママと約束したかったんだ。
「そうね。ママも同じことを思ってた。じゃあ約束しましょ」
ママは涙を持っていたハンカチで拭いながら、私に小指を突き出してくる。そして子どもの頃いつも見ていたニコッと笑うママがそこにはいた。


コメント・評価を投稿する

コメントの投稿するにはログインしてください。
コメントを入力してください。

このストーリーに関するコメント

17/09/10 文月めぐ

『ママとの約束』拝読いたしました。
約束とはある意味自分を縛ってしまうものですね。約束によってがんじがらめにされた親子の果てには何が待っているのだろうかと考えました。

ログイン