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石蕗亮さん

占師。および魔術師。 WEB幽にて怪談投稿してました。 弟子育成の経験や実体験を基にした不思議な話を中心に書いていきたいです。 沢山の方に読んで頂き、反論含めコメント頂けると幸いです。

性別 男性
将来の夢 作家、起業
座右の銘 人は言葉に置き換えれるものしか理解できない。置き換えた言葉でしか理解できない。

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時と場を越える氏子

12/12/04 コンテスト(テーマ):第二十回 時空モノガタリ文学賞【 お正月 】 コメント:6件 石蕗亮 閲覧数:1823

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 ごぉーぉぉん・・・ごぉー…ぉん
遠くで除夜の鐘が響いている。
今年も歳が明けた。
辺りは一面の雪景色であった。
積もった雪は丸みを帯びて柔らかな輪郭を浮かび上がらせ
その白い肌に闇の蒼と木々の影の玄を映していた。
生き物の足跡も無いその雪原の中に朽ちかけた社があった。
鳥居は崩れ原型を留めず、注連縄は落ちて久しかった。
「もう、今年で終わりかねぇ。」
社の中で呟く声がした。
「大きな社持ちの神はいいなぁ。うちは誰も参拝に来なくなってもう幾遠世か。」
朽ちかけた社の土地神はしみじみと呟いた。
 ここが完全に朽ち果てて原型を失えば、ワシも消えるまでよの。
最早声に出すこともなく最期を思った。
その姿は朧のように幽んでいた。

サク ザク ズク …

おや?足音が聞こえる。
まさかな。こんな歳も明けたばかりでまだ真っ暗な刻に。
しかももう何年も人なんて見ていない。
きっと獣の類か、それともどこぞの妖怪でも道でも間違えたかの?

「しぃーしょ〜。本当にこっちで間違いないんですかぁ?」
「あぁ、合ってる合ってる。もうちょい行ったところに社があるはずだ。」
一人は若者、一人は初老の男が木々の間を雪を掻き分けやってきた。
その後ろを黒いローブを纏った男が雪に足跡を残さず付いてくる。肩には猫を乗せていた。

んん?人が来おったぞ。珍しいこともあるもんだ。
はて、あの初老の男はどこかで見たことがあるような…。

「あった!師匠、ここですね!」
「そうだ。じゃぁ準備に取り掛かるぞ。」
「えぇ〜、少しは休みましょうよ師匠。」
「体が温かいうちに終わらせないと、汗が冷えて風邪の元になるぞ。」
そう言うと男は朽ちて外れた扉を開けて社の中へ入った。
「思ったより老朽が酷いな。ザランブール頼めるかい。」
雪に足跡を残さない悪魔の男は「もちろん。」と笑顔で快諾すると雪の中へ腕を突き刺した。
そのままブツブツと呟くと雪の下から急激に成長した木々が生え、朽ちた社を支えるように伸びていった。
幾つもの木々が瞬く間に大樹に成り、その中に社を抱えるように繁った。
「少しやりすぎだな。」「細かいことは良いではないか。」
男の感想に悪びれも無く悪魔は応えた。
男は社の奥に行くと背負ってきたリュックから色々取り出すと祭壇を組み上げた。
祭壇には榊と正樹を立て、塩と米をそれぞれ小皿に盛り、お神酒を2本立てて拍手を打った。
「おお、心力が通じる。」
社の土地神がそう言うとそれまで朧だった姿が鮮明になった。
「うわっ、何か出た!」
驚く弟子に「礼を失するにも程がある。」と師は嗜めた。
「どこかで見たと思ったらお主、氏子だったな。」
「久しく参詣も奉りもせず不情法しておりました。」
「ふむ。来るのが遅かったな。ワシはもう保たぬ。今更奉じられても何の加護も与えてやれぬまま消えるが定めよ。」
師と土地神の会話に弟子がおずおずと手を挙げて割り込んだ。
「あのぉ、神様も消えるんですか?」
「ふほほほ。当たり前じゃ。神とて不老不死ではないのじゃよ。」
神は寂しそうに教えた。
「神は奉る氏子が居てこその神なのじゃよ。氏子が居らなくなり誰からも忘れられたら消えてしまうものなのじゃ。ワシの氏子はおそらくこの男だけなのじゃろう。」
神の話を聞いて弟子が師を振り返ると師は静かに頷いた。
「そんな!じゃぁ、氏子を増やせば消えなくて済むんですよね?」
弟子は憤りを露に質問した。
「まぁなぁ。」
土地神はすでに諦めた面持ちで答えた。
「神様っ!神様のご利益って何ですか?」
「ん?吉夢だが。それがどうした?」
それを聞くと弟子は携帯を取り出し土地神に向けた。
カシャ
「よし、撮れた!」
弟子はそう言うと社の外に出て樹木に埋もれて生えているような社の画像も映すとカチカチと携帯を打ち始めた。
「これで完成っと。」
弟子がそう言って暫くすると
フォン
淡い光が社の周りに発生した。
フォン フオン
次々と光が発生し次第に社自体が淡く光り始めた。
「これは…心力!?一体どこから?」
戸惑う神に弟子は携帯を見せた。
「ホムペに初夢に御利益有り!って隠れスポット紹介として載せました!。」
キョトンとする土地神に「つまりここの知名度が上がって氏子が増えたんです。」と師が教えると
「時代が変わったものだのぅ。最近の人間はそんな魔術が使えるのかい。ふほほほ、これではまだまだ消えることなんぞ起きなさそうだのぅ。」
と少しうれしそうに言う土地神に弟子は満面の笑顔で応えた。
それを見て師と悪魔は「お前、すごいなぁ。」「現代っ子。」と褒めた。
その後は弟子も氏子となり夜が明けるまで社の中で神を奉る酒宴が開かれた。
土地神はこっそりと師と弟子に夢の加護を授けた。
今年一年実り多く成長のある歳であるようにと。


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このストーリーに関するコメント

12/12/05 草愛やし美

石蕗亮さん、拝読しました。

今時ですね、凄いよい案じゃないですか、なるほどと感心してしまいました。これは、悪魔も神も、知らない奥の手だったんですね。

12/12/05 石蕗亮

草藍さん
読んで頂きありがとうございます♪
氏子とは本来奉るべき信者のようなものですが、現代では持ち神をしている方はすでに皆無かと思われます。
一部地方にはまだいるかと思われますが。(土地神持ちや犬神やその他諸々風習が残っている土地も多いですから)
しかし、その風習はメンタル面に働きかけるクラシックなものが多く、現代のハイテクで対応できるものは正直少ないと思います。
今回の話も正しくは心力ではなく、認識に依る存在力の流動を利用した話だったんですが、書ききれませんでした。
いつか師匠か悪魔に説明させたいと思います(笑)
これからも作品へのお付き合いよろしくお願い致します。

12/12/08 草愛やし美

石蕗さん、評価消えてしまいました。マイペースではありますが、再度訪問して評価入れに回っています。

石蕗さんの作品、私は好きです。シリーズで書かれていて凄いなと思います。

12/12/09 石蕗亮

草藍さん
ありがとうございます♪
いつも応援ありがとうございます^^
私も草藍さんの作品応援していますよ。

12/12/09 泡沫恋歌

あ、私も好きな作家さんの作品には再度ポイント入れてますよ。

12/12/10 石蕗亮

泡沫恋歌さん
再訪問ありがとうございます^^
やっぱり好きな作家さんのとこにはまた行きますよねぇ。

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