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宮下 倖さん

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黒板パンデミック

17/08/28 コンテスト(テーマ):第141回 時空モノガタリ文学賞 【 黒板 】 コメント:1件 宮下 倖 閲覧数:280

時空モノガタリからの選評

これはなかなかうまくまとまった作品だと思います。見てはいけないものを見てしまい、追い詰められる恐怖、そして一縷の望みをかけて作文で伝えるも、さらに追い詰められてしまうという、畳み掛けるような展開がホラー的で面白いと思います。最初の方を読み返してみると、やはり先生も宇宙人の仲間、あるいは洗脳されているのでしょうか。先生も黒板も宇宙人だとして、子供達が教室という密室で徐々に洗脳されていくとしたら……確かになかなか怖いですね。学校の閉鎖性をうまく利用した内容だと思います。また、動画のイメージと、アナログな黒板がシンクロした点がユニークだと思いました。

時空モノガタリK

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 ぼくの学校の黒板はみんな宇宙人です。
 黒板が魔法のような方法で話をするのをぼくは見てしまいました。
 あれは夏休み中のことです。ぼくはプールで泳いだあと、こっそり学校の中に入りました。本当は、先生にことわらずに勝手に入ってはいけないと言われています。
 でも、みんながいない学校はひっそりしていて、ぜんぜん知らない場所みたいで、ぼくは探検してみたくなったのです。
 昇降口から静かにしのびこむと、げた箱がたくさん口を開けてぼくを見ていました。くつが入っていないげた箱はぬけがらみたいです。
 はだしのまま歩くと廊下はひんやりしていて、気持ちいいような、そのまま進むと底が抜けてしまうような不思議な気分になりました。
 ぼくはそうっと階段を上がり、五年二組の自分のクラスに入りました。
 そこでぼくは見てしまったのです。教室の黒板にたくさんの文字が流れているのを。
 それは、お兄ちゃんがときどき見ている動画サイトのコメントみたいでした。右から左に川のように次々に文字が流れていきます。英語や見たこともない字も交ざっているみたいでした。
「あっ!」とぼくが声を出すと文字はぴたりと止まりました。そしてぱっとすべての文字が消え、次の瞬間、黒板いっぱいに『見たな』という大きな文字が浮かび上がりました。
 ぼくは声も出せずその場にしりもちをついてしまいました。足にうまく力が入りません。
 あせって足をばたばたさせている間に、また黒板には文字が流れ始めました。
<見られた。どうする>
<われわれの計画>
<地球人を操作する、無意識に、都合のいい知識のうえつけ、黒板を利用して>
<どうする>
<誰も見ていない>
<消去>
 こわい言葉がたくさん流れてきてぼくはふるえてしまいました。
 プールから上がってよく拭かなかった髪の毛から水がぽたぽた落ちてシャツがぬれ、体が冷えてきます。
<実行>
 黒板に真っ赤な文字が現れたとたん、ぼくは飛び上がりそのまま走り出すことができました。
 廊下をぺたぺたと駆けながら、ちらりとほかのクラスを見ると、どのクラスの黒板にも『実行』と書かれていました。
 ぼくは階段を下りて職員室に飛びこみました。でも先生は誰もいません。
 夏休み中でもちゃんといるからねって言ってたのに!
 だけど、ここには黒板はない。きっと大丈夫と思ったのに、あったのです。先生たちの予定を書きこむ黒板が。
 でもそれを見ると『実行』の赤い文字も、こわい言葉も流れていませんでした。代わりに『落ちつきなさい』と書かれています。続けて文字がゆっくり流れてきました。
<わたしたちの邪魔をしなければ何もしません。今日見たことは忘れなさい。誰かに話すこともいけません。許すのはこの一度だけです。世界中の黒板はつながっている。学校以外にも黒板はたくさんある。あなたのことはみんなが見張っています。そのことを忘れないように>
 そのあと、どうやって家に帰ったのか覚えていません。体が冷えて夏風邪をひいてしまったので、なおさら記憶がぼんやりしています。
 でも気をつけてほしいです。世界中の黒板はみんな宇宙人です。地球人になにかしかけをしています。
 油断しないでください。


 読み終えて顔を上げると、クラス中に歓声と拍手が響いた。「空想の話を考える」という夏休みの宿題の発表だ。
「おもしろい〜」
「すげえ! SFみたいじゃん」
 友だちに褒められながら原稿用紙を半分に折った。発表の後、先生に提出してこの宿題は終わりだ。
 こんなふうに作文にしたって誰も信じちゃくれない。それこそぼくの空想話で終わる。
 ぼくはまっすぐにクラスの黒板を見た。
 あの日、全面を埋め尽くすくらい文字を流していた黒板は今日は静かだ。
 どうだ黒板。ぼくを見張ってるんだろ。どうする、黒板。
 ぼくは、黒板の横に座る真理子先生に原稿用紙をさし出した。先生はにっこりわらってそれを受けとる。
「すごくよく書けてたわね。想像力が豊かで先生びっくりしちゃった」
 先生がぼくを見る。先生がかけている眼鏡がきらりと光る。
 そのレンズに文字が現れた。右から左へ、文字がゆっくり流れる。

<許すのは、一度だけだと言ったはずですよ…………消去・実行>


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このストーリーに関するコメント

17/10/07 光石七

遅ればせながら、入賞おめでとうございます!
拝読しました。
前半、主人公と共に迫りくる恐怖を味わい、空想を作文にしただけだったのかとホッとしたのも束の間、空想ではなかった上に更なる恐ろしい事態が。
とても面白かったです!

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