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黒板が好きだ。

17/08/27 コンテスト(テーマ):第141回 時空モノガタリ文学賞 【 黒板 】 コメント:0件 ワタナベ 閲覧数:195

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 黒板が好きだ。チョーク一つでテーマを整理したりアイデアを自由に広げたり。ホワイトボードもいいが味気がない。やっぱり黒板だ。落ち着く。
 壁に張り付いているのもいい。座って机の上に広げて書くノートのプライベートな世界とは違って、教壇に立ち周囲に向かって壁面で披露していくオープンな世界は、一度味わうと快感ですらある。
 例えるなら漆黒ならぬ深緑の宇宙――自分の脳内にある世界を外へさらけ出し皆に共有させるための、これ以上はないツールであり、プラットフォームだろう。
 黒板の思い出を挙げればキリがないが、まっさきに浮かぶのが学生時代の終業式に向けた掃除の時間だ。長い休みに入る前にこれまで授業で使い込まれて来たことへの感謝の念を込め、これ以上はないくらい綺麗に拭き取るのだ。
 理想は、水を掛けて雑巾で拭くことだが、それをすると黒板が痛む。だから黒板消しを何度もクリーナーに掛けてムラなくチョークを落としていくのだが、何といっても肝は、最後の仕上げ。
 黒板の淵のみを職人技顔負けの丁寧さで横長の長方形の輪郭を空間から切り取るように消しゴムをかけて行くのだ。そうすることで周囲から黒板のみがくっきり浮き立って見える効果があって、担任の先生や他のクラスメイトが戻って来てビックリする反応が凄く楽しかった。
 黒板というと授業での使用が主だが、課外活動となるとラクガキのうまいやつが主役となる。文芸部に入っていたが、皆ラクガキが羨ましいくらいうまかった。
 「その意味のない才能をもっと世のため人のために使えよ」と心の中で思っていたが、今思えば、ラクガキだからこその背徳感や忘れかけていた子供の頃の悪戯心があのクオリティーを作らせていたのだろう。
 だから、卒業のときに後輩が部室の黒板一杯に所狭しとお別れのメッセージや部活動の部誌に登場させていたオリジナルキャラクターをあのクオリティーで描いてくれたのを見たときは、本当に嬉しかったし消してしまうのがもったいなかった。
 考えてみれば、学生時代の大半は、この黒板とともにあったのだ。授業時間も休み時間も、学校を構成する上で重要で圧倒的な存在感が黒板には、あった。
 今でも街でオシャレな喫茶店が本日のメニューやおススメなどを小型の立てかけ黒板に書いてあるのを見たりすると無性に郷愁に駆られる自分がいる。改めて黒板って凄いな、と感じる次第だ。
 さて、ここまで黒板について、これまでの自分の思い出なりを綴って来たが、これからの黒板はどうなるのだろうと考えると不安がよぎる。本、ノート、紙幣等の紙が電子化されて行く時代の流れの中で黒板もいずれ姿を消すときがくるかもしれない。
 あんなに時間をかけて掃除しなくてもタッチ一つで画面を消せたり、再現させたり、記録として残したりできる電子黒板のようなものが主役になる気もする。 
 そもそも同世代が一斉に集まって授業を受けるという学校のスタイルそのものも情報化社会の中で変わって行くかもしれない。
 教室という個室で黒板という壁面に広げる世界がなくなり、ネットに置いたものを各自がタブレットで確認する世界に変わってしまったとき、自分は「時代に取り残された」と感じるのだろう。
 ただ、その一方で、職人顔負けに綺麗に掃除したり、無駄にラクガキしたりといった黒板をめぐる出来事は、形は変えれど相変わらずこれからも逞しく存在し続けると思う。
 そうあって欲しい、と願う次第である。


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