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鮎風 遊さん

この世で最も面白い物語を見つけ出したい。 そのために、ひとり脳内で化学反応を起こし、投稿させてもらってます。 テーマに沿った個別物語の他に、いくつかのシリーズものをコツコツと書き続けさせてもらってます。 その主なシリーズものを紹介させてもらいます。  ☆❤☆❤☆ 新シリーズ 『ツイスミ不動産』 __ 2017.07.16よりスタートさせてもらいました。 カサリンとクワガタ野郎があなたが求める終の棲家を紹介いたします。  ☆❤☆❤☆ 『刑事 : 百目鬼 学(どうめき がく)』 __ 2017.05.21 ただ今、27話 __ 1話完結の2000文字推理小説です。この少ない文字数の中で、百目鬼刑事と部下の芹凛(せりりん)がいかに事件を解決していくか、その醍醐味を味わって頂ければ、光栄です。 これからも引き続き難しい事件に挑戦して参りますので、よろしくお願いします。  ☆❤☆❤☆ 『漢字一文字の旅』 __2017.04.04 ただ今、連載41__ 漢字にまつわるエッセイです。  ☆❤☆❤☆  『歴詩』 __歴史上の人物になりかわって、その波瀾万丈の生き様の思いを詩に綴らせてもらってます。 本作品については、フォト音(on)小説という形で、you tubeにもUPさせてもらってます。 詳細はこちらHPです。  ☆❤☆❤☆  http://ayukazeyuu.net/index.html  ☆❤☆❤☆                         よろしくお願いします。              

性別 男性
将来の夢 この世で最も面白い物語を見つけ出したい。
座右の銘 Do what you enjoy, enjoy what you do.

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妖怪児童の黒板

17/08/27 コンテスト(テーマ):第141回 時空モノガタリ文学賞 【 黒板 】 コメント:0件 鮎風 遊 閲覧数:132

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 猛暑続きの夏がやっと終わり、秋風を感じる季節となりました。そんな折に、浩二から誘いがありました、「直樹、お前に預かって欲しいものがあるんだ、だから今晩会わないか」と。
 あいつはいつも唐突。ムカッときましたが、何か特別な理由があるのではと思い、予約済みの居酒屋へと向かいました。

「再会に乾杯!」
 浩二がビールの泡を零しながら生中ジョッキをガチンと合わせてきました。その勢いに応え、とりあえず乾杯。
 私は一口飲み、「確か前回会ったのは未確認生物を探しに行った桜の頃だったよな、たった半年前のことだぜ、それでも再会に乾杯とは、ちょっと大袈裟過ぎないか」とブツブツと吐く。しかし浩二はその間にグググッと一気飲み。それから「もう一杯お願いします!」と声を張り上げました。
 息つく間もなく二杯目の注文ですよ。さすが学生時代は未確認生物発見同好会のリーダー、今もってその迫力と天真爛漫さに圧倒されました。私も負けじと飲み干し、ふうと一息吐き、「ところで、預かって欲しい物って何なんだよ」と尋ねました。
 浩二はジョッキを下ろし、私のこの問い掛けは性急過ぎるのか無視し、「なあ直樹、寛太って知ってるだろ」と話しを振ってきました。
 寛太は同窓生、あまり付き合いはありませんでしたが、まじめで……、そう言えば未確認生物発見同好会の部員だったかな。
 私はこのように思い出し、「ああ」と軽く返すと、浩二はゆっくりと目を閉じ、「これは弔い酒だよ」と絞り出しました。その後はグビグビと。
 私はじらされてしまい、「その寛太が一体どうしたんだよ?」とせっつきますと、浩二はおもむろに口を開きました。そして語られた顛末は残酷、いや、興味をそそる次のような話しでした。

 寛太は卒業後、倉庫管理会社に就職。その真面目な勤務が評価され大きな倉庫一つを任されるようになったとか。
 そして日々の入出庫と在庫管理に追われていたある日のこと、片隅に放置されてる1枚の黒板を見付けた。大きさは畳半分くらい、それほど大きくはない。ただ上部に――妖怪児童の黒板――と銘打たれていた。
 妖怪児童の黒板? 寛太は急に興味が湧き、何気なく白墨を取り、犬の絵を描いた。すると子犬が黒板から突然現れ出て来たのだ。ここで寛太は気付いた、この黒板に描いた生き物は黒板から飛び出し、現実のものになると。
 しかし、キャンキャンと五月蝿い。寛太がさっと絵を消すと、犬も同時に消えた。
 されどこれは実に便利だ! 仕事に追われるだけの毎日、彼女がいない。そこでタイプの、ちょっとオッパイ大きめのレディーを白墨で微細に描いた。すろとどうだろうか、それはそれはセクシーな女性が現れ出て来たのだ。
 これは人生最大のウハウハな出来事。歓喜昇天、寛太はこの女性に結婚を前提として向き合う。だが世の中にはそううまい話しは転がっていない。このレディは妖怪児童の黒板の産物そのもの。DNAはやまんば系で、今にも首を絞めて来そうなそれはそれは恐ろしい女だったのだ。
 寛太は夢破れ、この肉付き女子を消し去り、次に描いたのは、少年時代の夢、奉公人の今となっても夢追い続けてる恐竜ティラノサウルス。そやつがまさに小さな黒板から現れ出て来て、倉庫内でガガガッと10m級に肥大化したのだ。

「なあ直樹、ここからはお前の想像通りだぜ、寛太はティラちゃんに噛み殺されてしまったんだよ」
 浩二はこう言い切って、いつの間にか注文していた3杯目のジョッキを高々と上げ……献杯!
「ほう、人生何が起こるかわからないものだな」
 友が野獣に殺される、この深刻さの中でこんなだるい反応しか示せない私に、浩二は「倉庫会社から引き取ってきた妖怪児童の黒板、俺は充分試してみた。ところでお前、嫁さんが欲しいんだろ、だからしばらく預かってくれないか」と、割にアッケラカンとしている。
 この様子から察し、浩二はまたパンダ猫でも探しに旅に出るのだなと推測し、怪奇な黒板、恐くもありましたが、「まっいっか」と私も三杯目のビールをのど越しよく呷りました。

 黒板に描いた生き物が飛び出してくる。私は貧乏サラリーマンのアパートの一室で、この黒板にまず一番に何を描こうかと悶々と悩みました。
 朝起きて、トーストを囓りながら決心しました。それは浩二のお薦めの嫁さんではなく、白髪混じりの男です。
 チョークでの絵が完成すると、男はすっと現れ出て来ました。そして間髪入れずに、朝っぱらから人生訓話を一発ぶちかましてくれました。
「己の信じるところ生きろ!」と。
「ウッセイな、わかってるよ!」
 私はムカムカときて、もう一度だけ会いたかった人の絵を消してしまいました。しかし止めどもなく涙が溢れてきました。そして涙声で私は妖怪児童の黒板に向かって叫んでしまったのです。
「父さん、会えてよかったよ!」


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