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藤原光さん

藤原光 ふじわらひかる。ブログ「ひかるのこころhikaru99.com」を運営。 掌編小説や、ショートショートと呼ばれる、短めの小説を書いています。人間観察や、風刺的なものが主です。 Twitter @fhikaru99

性別 男性
将来の夢 心理学者・カウンセラー
座右の銘 人間万事塞翁が馬

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とある物理学科にて-黒板の神秘-

17/08/26 コンテスト(テーマ):第141回 時空モノガタリ文学賞 【 黒板 】 コメント:0件 藤原光 閲覧数:161

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タブレットやプロジェクタなど、テクノロジーの進歩により、電子化が進む昨今。小学校や中学校でさえ、黒板が廃止され、徐々にほかのテクノロジーが大頭してきてきている。

そんな中、未だに黒板を愛用し続けている業界がある。それは、世界の名だたる大学の物理学科である。彼らの建物の中には、黒板とチョークが常設されている。

私光は、アメリカのとある世界屈指の名門大学を訪れた。友人の秀樹は、この大学の物理学科で研究員をしている。

秀樹との待ち合わせのため、私はこの建物の受付脇にある来客用の待合室に足を踏み入れた。

オフィスの入口には、公民館に市民の優勝トロフィーを飾るような、神社の神棚を飾るように、受付の脇の目立つ位置、中央には黒板が備え付けられている。

しばらくすると、オフィスの方から何やら小言をつぶやきながら、やや華奢で髪の毛が出来かけの雀の巣のように絡まった、ユダヤ人だろうか、中東系だろうか、とりあえずアジア人とも白人とも違う、TシャツにGパンの華奢な男が現れた。

彼は、ほぼ屑のようになりかけたチョークの切れ端をつかみ、何やらその黒板にアルファベットと数式を書き始めた。

黒板自体は縦横に数メートルある。しかし彼は端っこの方に、しかも左上とかでもなく、右端のほうに陣取った。

その間も絶えず呪文を唱えているのか、誰かと耳の中に隠し持っている無線でも使って会話しているのか、彼はぶつぶつとつぶやいている。

そののち、今度は性別は女なのだろうが、服装には気を使わないタイプと言って間違いない中国系の女性も現れた。彼女もぶつぶつとつぶやきながら、この黒板の前にやってきた。

彼女もまた、黒板に何かを書こうとしている、ように見えるが、黒板に人差し指をついたはいいが、めをつぶっいぇ首をかしげるように左下を向いたままピクリとも動かない。

そうしているうちに最初の彼は、雷か電撃にやられたのかビクっと動いたかと思えば、一目散にオフィスの方へ突っ走っていった。ただ、走り慣れていないのだろうか、欽ちゃん走りそのものであった。

この建物の人たちは何なのだろうか。その光景に呆然としていると、オフィスのドアが開き、友人の秀樹と思われる人影が見えた。

私は、少し心拍数が足音と共に速くなる。

秀樹「お久しぶり!」

私は、数年ぶりの再会を喜ぶとともに、何も変わらない秀樹を見て、額を少々汗に濡らしながら、安堵を覚えた。

私は、秀樹に案内されるがままに、オフィスへ向かった。

秀樹のオフィスは、専門書と書類が散らかっているものの、でかいパソコンと、ホワイトボードがあるだけのオフィスであった。

黒板はなかった。あの黒い板を見かけなかっただけで、額の汗は消えていった。


秀樹とは食事の約束をしていたが、それまで30分ほどあったので、彼の仕事や研究について聞いてみることにした。

私もさっぱりわからないながらもいろいろ質問をしていた。

私「なんかこの図って、あの鼻が長いモンスターのプラモに似てるね。昔作ったやつ。」

そういうと、今まで和やかだった秀樹は、突然両手で腕を組む姿勢から、左手を顎にやり何やら動かなくなった。目線はの宙にやり動かない。

私「え、どうしたの?なんか変なこと言った?」

次の瞬間秀樹はオフィスを飛び出した。

私「!?ん?」

私は見慣れない建物の中を秀樹を見失わないように必死追った。何が起きているのかわからない。

秀樹は受付脇にある黒板のところにいた。さっきの華奢な男と同様何かを小言で聞こえるのか聞こえないのか、そもそもそれは言葉なのかどうかすら怪しい。

若干どころかドン引きの私に気にもせず、秀樹は、さらに俯きながらそのあたりをキャンプの焚火があるのかの如く、その場を円を描くように回り始めた。



秀樹「黒板の前で考えると、たまに物理学者がいろいろ教えてくれるだろ?さっきなんてアインシュタインが、このモデルの近似は誤差が大きいからダメだ、って教えてくれてたじゃないか?聞こえただろ?」「いずれにせよ、なるほど、ひかる、ありがとう!長い鼻ね。すごく参考になった。」

そう言い残すと、彼は、オフィスのほうに戻っていった。昼食待ち合わせ予定をもう30分も過ぎているのに。結局秀樹との昼食は、秀樹が完全に忘れてしまったようなのでなくなった。

私は、とりあえずこの建物からはなるべく離れた方がいいというのは、考えるまでもなく、条件反射と動物的なカンで分かった。

秀樹の言っていることはさっぱりわからなかったが、今日ひとつだけ確実にわかったことがある。

僕はどうひっくり返っても、生まれ変わっても物理学者にはなれそうにもない、ということだ。



※世界の名門大学の物理学科が黒板とチョークを未だに常設しているのは事実です。


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