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笹岡 拓也さん

文章で笹岡 拓也の世界を伝えられたらいいなと考えてます。 キャラクターたちがイキイキとした物語を書いて、読んだあと何か残れるような作品にしていきます。

性別 男性
将来の夢 自分の作品を多くの人に読んでもらうこと
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年功序列を覆した制度

17/08/25 コンテスト(テーマ):第142回 時空モノガタリ文学賞 【 上司 】 コメント:0件 笹岡 拓也 閲覧数:237

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私が勤めている会社では年功序列を覆した制度を設けている。
「あの部長、これやっておいてもらえます?」
最低限の敬語は使わせているものの、この会社では新人が一番偉い立ち位置になる。そして勤めている年数が増えるに連れ、地位が低くなっていく。
「わ、分かった」
この年功序列を覆した制度のおかげで入社1年目の退職率は驚異の1%以下を叩き出している。毎年この会社は10人ほどしか入社しない。つまり10年に1人だけが入社1年目で退職したことになる。これはどの会社を見てもあり得ないデータで会社の誇りにもなっている。
年数を重ねるごとに役職は上がっていく。それに連れて雑務も増えていく。
部長の私は会社の中でもかなり地位が低い。朝礼の1時間前に出社し、会社の至るところを掃除する。後輩が心地良く仕事をしてもらうためだ。
「あれ?今日ここ汚れてますね」
入社2年目になるとこの制度にも慣れてきて、私のような上司に構わず指摘するようになる。正直後輩に指摘されるのは気分悪い。それでも彼らより良い給料を貰ってる分、仕事を頑張らなくてはならない。それがこの制度だ。
ただこの制度のせいで明らかに入社5年目以降の社員が少なくなっているのも事実だ。最初は何もしなくてもよかったのに、年数を重ねることでやらなくてよかった仕事が増えてくる。これをほとんどの社員は嫌がり、役職に就く前に辞めていく。入社5年での退職率は驚愕の90%を超えるのだ。私のような逸材は本当に稀で、同期など私には存在しない。
「部長よく長く続けられますね」
退職が決まった部下によく言われる言葉。私も辞めようと考えたことはあるが、そんなタイミングで妻のお腹に子どもが授かった。他の会社に移って失敗するよりは、この会社に残った方がいいと私は考えた。あれから何年も経ち、子どもも今では中学生にまで成長した。ここまで大きく育てることができたのもこの会社に勤めているからだ。
しかし私はとうとうこの会社の制度に不満をぶつけてしまう。それは社長を含めた定例会議の最中だった。
部長クラスから上の役職者が集って会議を行う。そんな会議中も年功序列を覆した制度は健在だ。
「社長、こんなんじゃダメでしょ?」
「社長ちょっとお茶持ってきてください」
「社長はちょっと黙っててもらえます?」
この会社で一番権力があるはずの社長に、偉そうな口を利く役職者たち。社長も部下たちの言葉に文句を言わない。これがこの会社の制度だから。
この光景をずっと見ていたはずなのに、この日の私はいつもと違った。
「すみません、ちょっといいですか?」
私が会議中に挙手をして話し始める。周りの役職者は私に優しく声をかける。
「どうしました?何かありましたか?」
この会議では私が一番地位が高く、私の言うことにはみんなが耳を傾ける。
「もう止めませんか?社長に対してあの態度はさすがに無いと思います」
するとある役職者が笑いながら
「急にどうしたんです?ずっとこの制度でやってきたじゃないですか?おかげで新人の退職率はどの企業よりも上ですよ?」
と言ってくる。だからといって社長に何してもいいのか?私はやはりおかしいと感じる。
「そうかもしれません。しかし5年目以降、役職に就く頃には退職率が90%を超えているんですよ。この制度が正しいとは思えない。第一、この会社を築き上げた社長にその態度は、敬う気持ちが足らないと思います。社長の優しさや気遣いを知っていたら、そんな態度は取れないと思うんです」
この言葉に誰も返す言葉なかった。私は子どもを授かった時、一度社長と2人きりで食事に行ったことがある。その時に優しく親身になってくれたことを今でもよく覚えてる。そんな社長に対して酷い扱いをするのを、私は我慢して見続けていた。しかしそんなことじゃこの会社はいつかダメになる、社長が築き上げた会社が潰れてしまう。そう考えた私はこの場を借りて言わせてもらった。すると社長が挙手する。
「ちょっといいですか?」
今まで酷い扱いをしていた役職者たちが社長の方を向く。
「部長の言葉、私はとても嬉しく感じました。この制度を取り入れた私が一番意固地になっていたのかもしれませんね。新人の退職率1%以下ではあるものの新人の質が年々下がっているのも事実です。この制度を止める方向で考えましょう」

定例会議のあとしばらくして年功序列を覆した制度は廃止となった。この制度を止めたことで新人の退職率は上がってしまった。しかしダメなことばかりではなかった。
制度を廃止した後も役職者たちは部下に対して横柄な態度は取らず今までと変わらなかった。そのため、社員満足度は驚異の90%を超える結果となった。
上司にも部下にも低姿勢で対応することで、社長が築き上げた会社は良い結果に繋がっていた。


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