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Sage.Nさん

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障害者社会

17/08/25 コンテスト(テーマ):第142回 時空モノガタリ文学賞 【 上司 】 コメント:2件 Sage.N 閲覧数:185

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 あるところにある、ある会社のある課の課長が、ある太った平社員をみとめていった。
「君、近ごろ運動不足なんじゃないのかい?」
 すると相手は、キッと課長をにらみつけ、こういい返す。
「僕は、運動意欲低下障害という障害の認定を受けています。いまの発言は撤回してください。さもなければ、障害者差別で訴えますよ」
「す、すまん。そうとは知らなかった……」
 平社員がたるんだ腹を揺らしながら行ってしまってから、課長は小さくため息をついた。
「やれやれ。最近は、なんでもかんでも差別差別と、息苦しい世の中になったものだ。昔はハゲでもペチャパイでも笑い者にしていたというのに……」
「課長。うかつなことをいわないほうがいいですよ」
「そうですよ。いまの発言だって、私たちが訴えたら勝てますからね」
 育毛不全および毛根欠損者の係長と、乳房成長障害者の課長補佐が穏やかな声でたしなめた。
「す、すまん……そうとは知らなかった」
 課長は、うんざりした。あちこちに障害者がいるせいで、うかつなことはいえない。
 世の中には、いわなくてもいいことをいってしまって他人の気分を損ねてしまう人間がいる。昔は他人の気分を損ねるだけでよかったが、いまではそれが裁判沙汰にまでなってしまうのだった。課長のような人間には窮屈で窮屈でしょうがない。
 あんまり窮屈なせいで、精神を病んでしまった課長は、あるとき、心療内科へ行くことにした。課長の順番が来て、診察室に入ると、無表情な心療内科医が事務的に尋ねてくる。
「どうされました」
「近ごろ、どうにも参ってしまって……」
 課長は、ありのままを吐露した。すると医者はいう。
「どうやらあなたは、『発言過剰障害』のようですね」
「……発言過剰障害とは?」
「俗にいう『一言多い』というやつです」
「バカな。そんなものまで障害として扱われるのか」
「ええ。元来、障害というのは治療ができない、治癒の見込みのないものをいいます。医学がこれほど発達しているにも関わらず治らないということは、あなたの障害はかなり重大な障害ということになります。ですからあなたも、申請をすれば障害者認定が受けられますが、どうしますか?」
 課長は衝撃を受けたが、ちょっと考え、それからにんまりと笑って答えた。
「もちろんです。これで私も、立派な障害者だ。誰からも文句をつけられず、一言でも二言でも余計なことをいえるようになるぞ」


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このストーリーに関するコメント

17/09/01 沓屋南実

はじめまして。

本当に、こういう時代がくるかもしれません。
変というよりも、そうなったほうが、楽に生きられるかなと思ったり。
日本人は頑張りすぎるから、病気のせいにして好きなようにする。
お互い病気だしということで、いたわり合えば良いのかもしれません。
そうなると、精神科や心療内科は流行りますね。

最初から終わりまで、とても面白かったです。

17/10/23 光石七

拝読しました。
確かに「○○障害」とか「○○症候群」とか増えましたね。
作中の障害名に笑ってしまいました。
風刺が効いていて、とても面白かったです!

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