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小峰綾子さん

性別 女性
将来の夢
座右の銘 笑う門には福来る

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減らず口の俺の上司

17/08/21 コンテスト(テーマ):第142回 時空モノガタリ文学賞 【 上司 】 コメント:0件 小峰綾子 閲覧数:126

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営業の帰り、初めて主任を自分から飲みに誘った。明日から3連休という解放感もあり、しかも今日は直帰の予定で、いよいよ夏本番という季節で無性にビールが飲みたい気持ちも手伝って、自然と「主任、一杯どうですか」と口に出していた。

俺は入社2年目、朝倉主任は、5歳年上の女性で、社内でも営業先でもテンションが変わらずいつも自然体でいるにもかかわらず、営業成績はトップクラスという謎の才能を持つ上司だ。

1軒目は大衆居酒屋焼き鳥やキュウリの漬物をつまみながら、営業のノウハウなどを聞くことになった。

まだ帰宅するには早いので2軒目も、と誘ったら、意外にノリ良く付き合ってくれた。近くの雰囲気の良さそうなバーに入った。

実はそこからの記憶があまり定かではない。

「明日から3連休だけど石原は何すんの?」
「明後日、大学時代の友達とバーベキューですね。後はゴロゴロしたり掃除したりですかね」
「バーベキューか。リア充だね」
「いつも同じメンバーで遊んでるだけですよ。あ、主任次なんか飲みます?」
「じゃあ、ハイボール」
「結構飲めるんですね。社内の飲みだとあんまり飲んでないですよね。」
「お酒が好きなんだよ。好きだからこそ楽しい気分の時しか飲みたくないだけ。」
「あ、じゃあ今日は楽しい気分ってこと?」
「何で急にため口なんだよ」
「すいません酒のせいです」
「なんでも酒のせいにできるのは学生のうちだけだからね。」

ハイボールが運ばれてきた。

「俺、主任のこと好きですよ」
「ありがとう」
「真面目に言ってるんですけど。」
「真面目に答えたつもりなんだけど」
「なんとも思わないんですか」
「感謝の気持ちはあるよ。好きって言われて嫌な気はしないからね。」
「そういうことじゃなくて」
「同じ言葉をシラフで白昼堂々言ってくれたらそれなりの対応をするよ」
「それなりの対応って何ですか。」

「すいません。ソルティドッグ1つ」

「もうやめたら?相当キテるでしょ」
「大丈夫です。」
「何がどう大丈夫なんだよ。」
「酒の勢いで好きとか言ったと思われたら困るんですよ。」
「前に年下の子に酒の席で好きって言われたことがあってさ」
「それでどうなったんですか?」
「なんだかんだあって、結局付き合った」
「告白成功してるじゃないですか、それ」
「でも、3か月後に年下と浮気されたよ」
「うわー」
「そいつに告白された経過と今日が全く一緒なんだって。」
「一緒にしないでください」
「どうちがうの?」
「どうすれば証明できるんですか。やっぱり日が高いうちに口説けばいいんですか。」
「え、いま口説かれてたの?」
「なんでそんなに減らず口なんですか主任」
「よく言われる。」
「でしょうね」

ソルティドッグがテーブルに置かれる

「もしかして、こういう場所で、好きって言ったら女らしい部分とか出してきて泣いたり甘えたりすると思った?」
「そこまで考えてはいません。」
「考えろよ」
「酔ってますから。」
「都合のいいところだけ酔いで逃げんな。」
「主任、隙が全く無いですね」
「悪いね。この程度じゃコントロール不能にはならんのだよ。」
「ところで最初の質問のお返しなんですけど、朝倉さんは連休中何するんですか。」
「ちょっと旅行に行ってくる」
「へえ。彼氏と?友達と?」
「一人で。」
「え。どこに?」
「秘密」
「なんで秘密?海外ですか。」
「だから秘密」
「言えないようなところなんですか?」
「言えないところってなんだよ。ただ秘密なだけだよ。」
「意味不明」
「会社では言わないでよ。お土産買うの面倒だから誰にも言ってないんだから」

「繰り返しますが、朝倉さんのこと好きです」
「何で急に名前なの?」
「突っ込み所そこじゃないです。好きなんですよ。酔ってるなら信用しないということであればいったん忘れてください、時間と場所を改めます。」
「忘れろと言われてその記憶だけ消し去るとか器用なことできないんだけど」
「いや、できます。朝倉さんぐらいできる女ならできます。」

「すみません、ラストオーダーのお時間となります」

そのあと多分だけど朝倉さんが支払いをし、多分だけどタクシーに乗せられて帰宅した。

次の日12時ごろ目が覚めて、昨日の一連の会話を思い出して我ながらドン引きであった。

「昨日はすみませんでした。旅行楽しんで来てください。お気をつけて」
そうメッセージを送ると、3時間後にきれいな空と海の写真が送られてきた。場所は分からないが南の方であることは分かる。

いつか、こんな空の下を二人で歩けたらきっと楽しいだろう。一度目は木っ端みじんになったが、連休明けからまた仕切り直しで頑張ろう。減らず口の朝倉さん。次は酒の力を借りずに伝えるんだ。
二日酔いの頭痛を抱えながらそう誓った。


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