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セレビシエさん

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赤い風船

17/08/18 コンテスト(テーマ):第142回 時空モノガタリ文学賞 【 上司 】 コメント:2件 セレビシエ 閲覧数:358

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子どもの手を離れた赤い風船がどんどんと空へ昇っていき、割れた。抗うことなんて出来なかったろう。

私の大学の先輩−そして同じ会社の上司である赤井は優秀だった。
そして先月会社を辞めた。

赤井は順調にキャリアを詰み、入社時に私と仲良く話していた彼はもういなかった。
けれど別にそれは悲しいことではない。
彼は自分の将来のために必死に努力した。
私が努力をしなかった訳ではないが、彼の努力は常人のそれを越えていたのだ。
赤井は血の色みたいに真っ赤なネクタイをいつも着けていて、それのせいかは分からないが、厳格なイメージを回りから持たれていたらしい。赤井が課長になった頃、部下のひとりがどうしようもないほどレベルの低いミスをした。
もちろんその部下はこっぴどく叱られた。
その部下は新入社員だった。
それでその新入社員はあんまりひどく叱られたのを嫌に思ったのか翌月から、来なくなってしまった。
私は、今の若い人達には、打たれ弱いような人が多いのかもしれないな。と、思ったくらいだった。
しかし何故か、周りでは、赤井の叱り方が強すぎたとか、新入社員が可哀相という話になった。
その新入社員は「被害者」で、赤井は「加害者」なのだという構図がいつの間にか社内で出来上がっていた。
今思うと、赤井は厳格であったために、少し人から怖がられていたのかもしれない。
自分達とは違うものを人は必死に排除しようと試みる。所謂、出る杭は打たれる、といったものか。
赤井が部長になった頃、社内はすっかりピリピリとしていた。そしてクーデターが起こった。
それは些細な、しかし悪質な嫌がらせだった。
社員達がこぞって本部長に赤井の悪口、というよりデマだったり赤井の悪い癖だったりを吹き込んだのだ。
嫌がらせはだんだんとエスカレートしていき、それに赤井が気付くまでに時間はそんなにもかからなかった。はじめ、赤井は怒った。しかしそれは社内の空気を更に濁し、取り返しのつかないものにした。
それからは、すぐだった。
赤井の精神は、もたなかった。
いつもの血の色みたいなネクタイはくたくたによれ、そして「こわれた」のだ。

子どもはわんわんと泣いている。
お母さんと思われる人は子どもにもう1つ新しい風船を買ってやった。
子どもは喜び、大きく口を開けてわらった。
ぷかぷかと浮かぶ風船。
割れてしまったとしても、やり直せない訳ではない。
いつかはもっと高いところまでいけるだろうか。


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このストーリーに関するコメント

17/08/27 浅月庵

セレビシエさま
作品拝読させていただきました。

社会に出ると色々あります。
赤井は自身の出世のため、会社を守るために
尽力したのでしょうが、なかなか一方的に
厳しくするだけでは他の人間は付いてこないのかもしれません。

序盤の風船の描写から展開切り替え。
そして、赤井と赤い風船を繋げる最後の一文が
お見事だなと思いました。

17/08/27 セレビシエ

浅月庵さま 拝読ありがとうございました。
(初めてコメントがきたのでうれしいです)

今後の赤井が自身の振る舞いをまた考え直し、復帰すると良いと思います。

優しい感想をありがとうございました。

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