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荒木成生さん

はじめまして、こんにちは、荒木成生です。 二千字をオーバーした時の推敲作業に苦労しています。 説明不足になりがちですが、そこは想像力で補ってください。 二千字よりも長いものは小説投稿サイト『アットノベルス』に置いてありますので、興味があればこちらもよろしくお願いします。 ペンネームは同じです。

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箸が二人を分かつまで

12/12/03 コンテスト(テーマ):[CTITLE] コメント:0件 荒木成生 閲覧数:1451

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 まず、割り箸を水平にして持ちます。
 それから、左手を上、右手を下にして箸を掴みます。
 ゆっくりと左手を上げていけば、きれいに割り箸を割ることができるはず……、
「あっ……、ささくれてる!」
 がっくりとうなだれる……、今回もダメだったようだ。
 最初は箸を縦にして端の細い方を下にして持ち、ゆっくり左右に割るやり方でやっていたのだが、これだと利き手に力が入ってうまく割れないらしい。
 そこで、友達に箸の割り方をいろいろ聞いて回った中で、もっとも成功率が高いのが今回のやり方だったのだが……、自分の不器用さが憎い。
「ユリッペ、いい加減あきらめれば?」
 うなだれる私に、さらに追い討ちをかけるのは親友のメグッペだ。
 メグッペは幼稚園から小中高とずっと同じという腐れ縁であり、ユリッペ、メグッペと呼び合う仲だ。
「いいじゃん、もう……、それぐらいなら告白しちゃいなさいよ」
 メグッペの催促……、それもそのはず、きれいに割れたら好きな人に告白すると私が宣言して、かれこれ一年が経とうとしている。
「でもでも、もうちょっとで両思いだよ……、ほらほら、ささくれもほんのちょっとだし、明日は絶対成功するから!」
 私は必至で告白の期限延期をアピールする。なぜなら、告白に失敗は許されないからだ。
 割り箸がきれいに、左右均等に割れていたら両思い……、そのように聞いています。
 きれいに割れたら両思い……、当然、告白も成功……、ならば、ほんのちょっとのささくれも私は認めません。
「ユリッペなら大丈夫だよ……、かわいいんだから断られることなんかないって」
 まだ私に告白させることをあきらめないメグッペ……、何を言われようとも、まだまだ昼の学食での儀式は続けますからね。

 それから一年後、私は割り箸と爪楊枝を手にしている。
 割り箸の割れ目に爪楊枝を挟み、箸の頭をテーブルに押し当て、一気に爪楊枝を押し下げる。
 そうすれば、割り箸はきれいに、左右対称に……、って、爪楊枝の方が折れちゃってるよ……、どこまで不器用なんだ、私は。
「……もう終わりだ」
 私の口から絶望の言葉が漏れる……、そろそろ大学受験にも本腰を入れなきゃだし、恋だ何だと言ってる場合じゃなくなってきたし。
「小橋さん、ちょっといいか?」
 私を呼ぶのは誰? 声をかけてきたのは私の横に立っている男性……、私が告白しようとしている大橋君がいる。
 大橋君は両手を私の顔の前にかざす……、その手には割り箸がある。
 そして、無造作に……、あくまでも無造作に割り箸を割る。
 その二本の箸を見比べてみると、相似ではなく合同であることがわかる。
「付き合ってくれ!」
 大橋君が私に向かって告白の言葉を投げかける。
 割り箸を割るのも無造作なら、告白の言葉までも無造作だよ……、どこまで無造作なんだ、大橋君は。
「……なんで、大橋君が?」
 戸惑うよね……、告白しようと思ったのに、向こうから告白されたら戸惑うよね。
「それは私が説明しよう」
 私の戸惑いをよそに、メグッペが二人の間に割って入る。
「実をいうと、ユリッペに好きな人がいないかを大橋君に尋ねられたことがあるの……、それ以外の男数人にも聞かれたけど、そいつらには好きな人がいるからあきらめろと言っておいたわ」
 メグッペは私が大橋君を好きだということは知っている……、そして、大橋君が私のことを……、それも知っていることになる。
「大橋君にはユリッペには割り箸がきれいに割れたら告白する相手がいるのを伝えてるの……、その日が来るまで待てって言ったのに……」
 ということは、大橋君は私の好きな相手を知らなかった……、それでも私に告白を……、胸がキュンとなる。
「とりあえず、ユリッペにはこれをあげよう」
 メグッペはそう言って、新しい割り箸をくれた。
 今ならきれいに割れる……、両思いなんだからきれいに割れる……、割って追っかけ告白しろと、そういうこと?
「これは割っちゃダメだよ……、これがずうっと割れなかったら、二人がいつまでも幸せになるっていうお守りになるんだから……、汝、富める時も貧しき時も、箸が二人を分かつまで、愛し合うことを誓いますって言うじゃない」
 メグッペがうまいこと言ったぞっていうドヤ顔になっている。
「それから、離縁状代わりにも使えるわね。ユリッペが大橋君に愛想尽かしたら、この箸を割ってやればいいのよ……、断る権利は基本的に告白された側が持っておくもんだしね」
 そんなことまで考えて……、持つべきものは友達だよ。メグッペは心の友だよ。

 数年後、メグッペからもらった割り箸は今でも私と大橋君の新居の神棚に飾っている。


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