セレビシエさん

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17/08/12 コンテスト(テーマ):第141回 時空モノガタリ文学賞 【 黒板 】 コメント:0件 セレビシエ 閲覧数:322

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カツ、カツカツ、カツと小刻みに、リズム良く、チョークが黒板に当たる音がする。
先生は張り切って大きな声をだしているが、回りを見渡すとあくびをしていたり机に突っ伏していたりだった。
私は一番後ろの席からそれを眺めていた。
カツカツカツ、カツカツ。
カツカツ。カツカツカツカツ。
この心地良い音と先生の大きな声が混ざりあって睡魔が襲ってくる。
私はこの睡魔に打ち勝とうと、ほっぺをつねってみたり、足を伸ばしたりした。
しかし、努力虚しく、私はチャイムの音と一緒に目を覚ました。

放課後、私は何となく、教室に残った。
そして誰も居ない教室でなんとなく少し胸がドキドキするのを感じた。
横に長く、大きな黒板は教室の中で異様な存在感を放っていた。
その感じは、教室全体を飲み込んで支配している様だった。
それをずっと見ていると何だか中に吸い込まれてしまうような感じがした。
私は黄色いチョークを一本手に取り、落書きした。
カツカツ、カツカツ。
静かな教室にこの乾いた音は良く響いた。
私は自分の落書きがあんまりに下手くそだったから少し笑った。

其からは少しの間、ずっと黒板を見つめていた。
やはり飲み込まれそうになってほんの少しだけ、怖くなった私は教室を後にした。

翌日の授業であの音を聞くことはなかった。
授業では市の方針で新しく、黒板の代わりにホワイトボードやタブレットPCみたいなものを使うことになった。
この時まで、私はすっかりそんなことは忘れていた。

そして私は何だか、ほんとに少しだけ寂しく感じた。
あの心地の良い音が無い授業では皆が何だか変だといった風に起きて首を傾げていた。
先生も新しいスタイルの授業にまだ全然慣れていない様子だった。

その日の放課後、私はまた教室に残った。
黒板はまだ残ってはいた。
チョークは全てどこかへ片付けられてしまっていた。
私は黒板を触ってみた。
ヒンヤリと冷たく、どこか物憂げな感じがした。
サラサラともしていた。
役目を終えたそれは静かだった。
私はドアをノックするみたいにして、それをコンコンと叩いた。
あの音とは確かに違う音だった。
けれども、その乾いた音はまるでそれのように教室中に良く響いた。


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