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藍璃さん

大学生です。ピッカピカの1年生です。

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特等席

17/08/09 コンテスト(テーマ):第141回 時空モノガタリ文学賞 【 黒板 】 コメント:2件 藍璃 閲覧数:270

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進学校の黒板が、毎日、どんなに酷い目に遭っているのか
あなたは知っていますか?


筆圧の強い教師に、顔いっぱいに文字を書かれ、乱暴に消される。
50分の間に何度も何度も書いては消され、毎日毎日その繰り返し。
あまりの筆圧の強さに、
チョークがパキンと折れてしまうことだって、よくあるのですよ。
教師の唾はシャワーのように飛んで来て、
時には粉の詰まった汚い爪で引っ掻かれ、その度、教室中の生徒たちの鋭い視線を集めるのです。
授業が終わった後、黒板は粉だらけ。
まるで埃をかぶっているかのように、黒板も、すぐ下の床も、一面真っ白になるのです。

ほらほら、黒板掃除の担当になっている女子生徒がやって来ましたよ。
見てください、あの嫌そうな顔。
嫌そうな顔には見えないですって?
いやいや、見てくださいあの冷たい目を。
ここは冷たい目を持った人間だらけですよ。
黒板は、そのような人間たちから日中ずっと睨まれているのですからね、
考えるだけでもゾッとしますね。

ああ、そんなことを言っている間に、
あの女子生徒が雑巾を濡らして持って来ましたよ。
制服のスカートを床につけないように、細心の注意を払いながら、
まるで体育の準備体操の・・・あれ、何と言うのでしたっけ。
ああ、そうそう。前屈。
前屈をしているかのような姿勢で、黒板下の床の雑巾掛けを試みているのです。
ああ、ああ、何ということだ。
終いには雑巾を広げて床に落とし、
その上に片足を乗せて滑らせ始めたではありませんか。
あれはひどい。
黒板に同情してしまうね。
女子生徒は掃除を適当に済ませると
まるで汚いものを拾い上げるかのように、
指先だけで雑巾を持つと、さっさと向こうへ行っちゃった。
こんなに酷い目に遭いながらも、
黒板は小言の1つも言いやしない。
あいつは泣きもせず怒りもせずに、
いつも変わらず、穏やかな顔で教室を見守っているのだからね。
立派なものだね。


ああ、いけない。次の授業が始まりました。
この黒縁メガネの教師は、数学の教師ですね。
一番、黒板が酷くいじめられる時間です。
ほらほら始まりましたよ、
長い長い数式の説明。
黒板があまりにも可哀想なものだから、
私は授業中、黒板を見ません。
時計ばかりを見ています。
ノートに落書きばかりしています。
本当は眠ってしまいたいのですが、
眠ってしまうには、少し、都合が悪いのです。
私の席は、黒板からの距離が、少し、近過ぎるのです。

昼過ぎの眩しい日の光が教室に差し込んできました。
私は窓側の席でありますので、
日光が背中全体に当たり、ポカポカします。
そのせいで、眠気がよりいっそう増してしまいます。
地獄の席ですね。
いえいえ、しかし、この席は特別な席なのですよ。

私は静かに左腕を伸ばし、自分のすぐ隣の窓のカーテンを閉めました。
すると、前後の席の人も、次々とカーテンを閉め始めました。

気がつくと、黒板にはびっしりと数式が書き込まれ、
これ以上何も書くことができないような状態になっていました。
授業開始からまだ5分も経っていません。

教師が長い黒板消しを右手に持ちました。
さあ、来ましたよ。見ていてください。

黒板いっぱい書かれた数式を教師が乱暴に消し始めました。
チョークの粉が、どっと舞い上がります。

ほら!これだ! 綺麗でしょう?

視界いっぱいに舞う、チョークの真っ白な細かい粉が、
カーテンの隙間から差し込む日の光に反射して、キラキラと輝いているのです。

ダイヤモンドダスト。

あなたは、知っていましたか?
学校の教室でも、ダイヤモンドダストを見ることができるのですよ。

窓側の黒板に近い席だからこそ、見ることができる絶景です。


黒板の方に、ちらと目をやると、
どうだ、と埃だらけの黒板は、どこか誇らしげな様子でした。



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このストーリーに関するコメント

17/08/11 あずみの白馬

霞藍璃さま、
拝読させていただきました。

授業の様子が目に浮かんでくる描写がよかったです。
そしてこういう結びで来るとは思いませんでした。面白い作品だったと思います。

17/08/24 藍璃

あずみの白馬さま

面白いと思っていただけて嬉しいです・・・!
コメントありがとうございました。

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