1. トップページ
  2. この雰囲気を壊さないために

笹岡 拓也さん

文章で笹岡 拓也の世界を伝えられたらいいなと考えてます。 キャラクターたちがイキイキとした物語を書いて、読んだあと何か残れるような作品にしていきます。

性別 男性
将来の夢 自分の作品を多くの人に読んでもらうこと
座右の銘 生きているだけで幸せ

投稿済みの作品

2

この雰囲気を壊さないために

17/08/08 コンテスト(テーマ):第141回 時空モノガタリ文学賞 【 黒板 】 コメント:1件 笹岡 拓也 閲覧数:485

この作品を評価する

私は旭ヶ丘中学校の問題児ばかり集まる3年2組の担任をしている。どうして私はこのクラスの担任を任せられたのか?きっと私を好まない先生の嫌がらせと考えている。
しかし問題児と言っても所詮は中学生。受験を控えて精神バランスが整わないことから、不安になり悪さをしてしまうような子たちだ。そんな不安定な感情を抱く年頃だから仕方がない。そう私は解釈する。
私は3年2組の担任になってから二ヶ月、意外にも上手く立ち回っているように感じる。
「先生、その問題めんどくせーからやらなくていーよ」
私が授業をしていると頻繁にこの言葉が聞こえる。やらなくてもいい問題なんてこの世にはない、社会に出たら問題から逃げるだけで生き幅を狭めてしまう。
「そんなこと言わずにしっかりやりなさい」
その一言を言ってあげるのが、先生や大人としての役目だろう。しかしこの上手く流れている雰囲気を壊すことができない私は
「そう...だな。そうだな、これはやらなくていいかもな」
と生徒の言う通りにしてしまう。これじゃ生徒のためになっていないのはわかってる。それでも問題児ばかり集まった3年2組では、これしか上手く切り抜ける方法はない。
そんなある日、私は授業をするために教室に入ろうとした時、異変に気付く。教室の扉が少しだけ開いているのだ。普段は完全に開いているのが普通、クーラーがついている時は完全に閉まってるのが普通の教室の扉。私は疑った目で扉の上を見る。案の定、黒板消しが挟まってるじゃないか!
しかもその黒板消しは一日の量とは思えないほどチョークが付いている。これもまた問題児たちの悪さだろう。チャイムが鳴った後に設置したようだから、クラスメイトに対してやってるわけではなさそうだ。そこでひとまずホッとする。
つまり私の頭に黒板消しを落とそうと企んでいるのだろう。これはちょっとした暴力にも該当する内容だと私は考える。
しかしこの問題児たちに「こんなことをした奴らは誰だ」と怒っても、めんどくさそうな顔して「知らない」と一点張りされるのが目に見えてる。さらに私が今まで築き上げてきた関係が一瞬で打ち砕かれるだろう。だとしたら黒板消しを頭に受けた方がマシか?
それにしても黒板消しの位置が中途半端で、私の頭上には普通に入ったらどう考えても当たらない。やるならもっと上手くやれよ、と心の中でツッコミを入れる。問題児たちの期待を裏切ってでも注意するべきか?それとも問題児たちが笑ってくれるなら、わざと黒板消しに当たりに行くべきか?私の頭の中は忙しかった。
しなさは私は迷っているようで、全く迷っていなかった。普段とは違い変な静けさを感じる教室の扉を思い切り開ける。そして勢いよく頭から教室に入る。まるでマラソンのゴールシーンのように。
頭を早く教室に入れることでタイミングが合い、黒板消しは見事に私の頭に当たる。するとクスクスと教室の中から笑い声が聞こえる。問題児たちはまだ何かを求めているようだ。
「ちょっとお前たち!もーう、ほらスーツが汚れちゃったじゃないかー」
私は怒りながらも笑顔を絶やさない。それでも私は「もうやるなよ」としっかり伝えようとする。
そんな時、問題児たちが私に笑いながら
「先生!後ろ後ろ!」
と声を掛けてくる。私にこんな声を掛けてくるなんてことは今まで一度もなかった。仕方ない、もう1つだけ問題児たちの悪さに付き合ってやるか。そう思い私は後ろを振り返る。振り返った先に待っていたのは、大きな黒板に描かれた絵と言葉だった。
その黒板を見て開いた口が塞がらなかった。そして同時に込み上げてくる熱い感情に心拍数がみるみる上がってくのが分かった。
【先生!誕生日おめでとう!】
黒板には大きなケーキの絵、そして私の誕生日を祝う言葉が書かれていた。
今まで教師をしてきて味わったことがない経験だった。問題児たちではあるものの、人を喜ばせることができる優しい子たちだったんだ。私はこの3年2組の担任になれてとても幸せを感じる。
ただとっても嬉しかったけど、できればちゃんと私の誕生日を把握してほしかった。私の誕生日は明日だ。


コメント・評価を投稿する

コメントの投稿するにはログインしてください。
コメントを入力してください。

このストーリーに関するコメント

17/08/26 セレビシエ

笹岡 拓也さま 拝読しました。
最初、すこしぞっとするようなbad endが待っていそうだなと思いましたが、爽やかな終わりかたで良かったです。

ログイン