1. トップページ
  2. 幸せの青い板

山盛りポテトさん

ショートショートがすきです。 星新一さんの小説が好きです。 社会でもがいています。 わかりやすい王道のショートショートを書きたいと思いつつ・・・脱線してます。

性別 男性
将来の夢 海外旅行!一度でいいから行ってみたかったり。
座右の銘 人見るもよし見ざるもよし我は咲くなり 跪く前に開き直る

投稿済みの作品

1

幸せの青い板

17/08/07 コンテスト(テーマ):第141回 時空モノガタリ文学賞 【 黒板 】 コメント:0件 山盛りポテト 閲覧数:149

この作品を評価する

「ちょっと」
俺は突然背後から話しかけられ、驚き体を仰け反らせた。
「ん・・・どうしたんですか」
この敬語は同級生、いや下級生に対しても同じだ。人との距離感を掴めないため、せめて不快にさせまいと常に敬語を使っていたのだが、どうやら余計に奇妙な人間になってしまい、今さらやめることもできず、ずっとこの調子だった。
そして休み時間中にいつも寝たふりをしていたので、さも今起きたような雰囲気を醸し出して振り向き、返事をした。
「あ、ごめん寝てた?」
吉沢奈保だ。クラスで3番目くらいに可愛い女子だ。
俺のような暗いタイプの人間にも何かというとちょっかいをかけてくるので、一見面倒くさそうにするも内心はとても嬉しかった。
「なに・・・?」蚊の鳴くような声でボソっと言うと、そんなことも気にも留めず吉沢は続けた。
「ん?何か言った?あ、私ねちょっと聞きたいことあってさ」
「あなた様のような人が何を聞きたいんでございましょ」
いつからか吉沢を意識するようになり、平常心ではいられなくなっていた。何やら時代劇に出てくる使用人みたいな台詞なってしまい、顔が真っ赤になった。
「これ何色に見える?」
吉沢は黒板を指でさして首をかしげた。首をかしげる様が可愛らしく、そのあざとさを差し引いても有り余る何かがあった。
「黒」
「ほんとに?」
俺は少し考えこんだ。
「いや緑・・・かな、ああそういう引っ掛けでしたか」
吉沢は何も答えなかった。
「じゃあこれは?」
そういうと教室でいちゃついているカップルを指さした。
なんでも先月から付き合い出したらしく皆にみせつけるように、その不快なライトペッティングを繰り返しているのだった。
「ピンク」
「きもいよそれ」
「え、ごめんなさい」
「うそだよ、ごめんごめん、あれはね青色なの」
「どうして?」
気が付くと自然と敬語が取れていることに気づいた。いつもは言葉につまったりしてまともに会話もできないのに。
「青春っていうでしょ、青い春」
「じゃああの黒板も青だ」
「ん・・・?あーー、緑のこと青っていうもんね信号とか、じゃあ今日から青だね」
この奇妙な会話はしばらく続き、俺はつかの間の充実した時間を楽しんだ。
「でもなんで急に俺なんかにそんなこと聞いてきたの?」
「理由なんかいる?」
「いりませんか?」
「なんで敬語に戻っちゃったの」
「気づいてまし、気づいてたんかい貴様」
「え・・・うーん、君はまだ気づいてないことがあるんだけどね」
「え?」
「馬鹿」
そういうと踵をくるりと返し、肩まで伸びた髪をなびかせて行ってしまった。
今、俺の目には真っ青な黒板が広がっている。




コメント・評価を投稿する

コメントの投稿するにはログインしてください。
コメントを入力してください。

このストーリーに関するコメント

ログイン
アドセンス