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むねすけさん

ブログで創作をやっていましたが、誰にも相手にしてもらえないため、こちらに辿り着きました。 面白い物語、少しほっとしてもらえるようなお話を書きたいと思っています。

性別 男性
将来の夢 作家になりたいですが、 それが無理でも、何かの原案家とか、 自分の考えた物語が世に出ること。
座右の銘 我思う、故に我在り。

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ロードムービーみたいなあたしの絵日記

17/08/05 コンテスト(テーマ):第141回 時空モノガタリ文学賞 【 黒板 】 コメント:3件 むねすけ 閲覧数:530

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 夏休みの絵日記に丁度いいわ。
 父さんのスタンドバイミーごっこに引率つかまつろう。
「海外映画と時代劇、父さんとお母さんの娘やなぁ」
 八月の帰省は毎年、母さんの田舎。おばあちゃんが迎えてくれる愛媛県松山市。それにプラス今年は父さんの帰省。
「お母さんは留守番しとくわ、お腹これやもん」
 愛媛のおばあちゃんちは?
「そっちは帰るがね。お腹これでも」
 もうすぐお姉ちゃんになるから、私は今年の夏、苦手の泳ぎと夜のホラー映画を克服した。もう後は、お茄子と歯医者さえやっつければ、パーフェクトシスター陽菜ちゃん一丁あがりやで。
 勝平おじちゃんも同じ車で行くのん?
「あぁ、父さんの車で一緒に行くわ。大事な資源、省エネせんとな」
 ちゃうやん。ガソリン代ケチってビールに代えるだけやんか。でもえぇわ。父さん、運転してるとしりとりの相手も中途半端やから、勝平おじちゃんと遊ぼ。
「運転は交代でやるから、父さんも相手してやれるで」
 ふーん。じゃぁ、将棋持っていこうね。トランプも。
 ところで、帰省するの何年ぶりなん? あたし、行ったことないよね、新潟。
「あるある、まだ一歳ちょっとやったけど」
 これや。あたし飛行機乗ったことないもんなぁ、の返事もこれやった。パンダ生で見てみたいわぁの返事もこれやった。そんなん知らんわ。
「あの頃はまだ実家に兄さんが住んでたから、ちょうど十年前の夏やったよ。あのすぐ後で兄さん東京に移ったから、そうや、丁度十年か」
 父さんのおじいちゃん、おばあちゃんは若くで亡くなったから、あたしは会ったことない。これは、「そんなことない、赤ちゃんのころ」の、追いかけ言葉なし。やけど、そうかぁ、これが吾輩の人生二度目の新潟旅行でござるな。新潟の底なし沼で溺れたいわぁ。
「そんなもん、あらへんわ」
 じゃぁ、お母さん行ってくるから。お土産乞うご期待。お腹の中の妹ちゃんも、しばしのお別れ。
「弟かもしれへんゆーてるやろ」
 いーや、妹や!!
「勝平おじちゃんにうるさいゆわんよーに」
 どっちがやねん。勝平おじちゃん男のくせに喋りやねんから。
 父さんの運転でスタートした、大人たちのスタンドバイミーごっこ。車の中のクーラーが夏を切り取って仲間はずれみたい。クーラー切って窓開けようやー。
「勘弁してくれ、陽菜だけ残して、おっちゃん二人お盆で帰ってくるご先祖さんとすれ違いなるで」 
 大阪から、新潟までは遠い。車のスピードでも、とっても遠い。
 途中、何度も寄ったサービスエリア。毎回食べたソフトクリームは、汗より早く消えてなくなった。父さんとおじちゃんは交代で運転やから、ノンアルコールビール。二人してビールっぱらに栄養満点。
「さぁさぁ、我がふるさと」
「おぉおぉ、町の様子が全然ちごとんな」
「そらそや、十年やもん」 
 夜についた新潟は、新潟と言われへんかったら、青森かもしれへんかったし、岩手かもしれへんかった。大阪でないことは、人らの言葉でわかったけど。
「じゃぁ、学校は明日やな」
「あぁ、今日は温泉つかって、はよう寝よう。運転で体ゴキゴキや」
 あたし、卓球やる!!
「陽菜ちゃん、一人でどうぞ」
 できへんわい!! ついて来い!!
 朝、あられもなく乱れた浴衣と髪の毛はワンセット。父さんもおじちゃんも、寝ぼけた新入り相撲取りみたいやった。
 学校、ちゃんとまだいてるかな?
「いてるよ。取り壊しが九月に始まるねん。せやから来たんやで」
 わからんでー。田舎の人のすることは。
「口の減らんがきんちょやのー」
 そっちこそ、口の減らんおっちゃんやんか。
「ほら、学校さん、見えてきたで、いてくれてはるわ」
 父さんと、勝平おじちゃんがあたしと同じ小学生だった頃に、通った木の学校。茶色がとっても濃くて、深い深い。底なしの色と時間と、みんなの声が染み込んだ学校は、あたしら三人を迎えて、眠りから覚めたように風を吹かせた。
 風、通り抜けて、気持ちえーな。
「んー、窓、外してしもてんねやな」
 鍵もなんもないんやね。
「そやねん」
 あたしの学校でそんなんしたら泥棒うじゃうじゃ出てきよるで、きっと。
「都会もんのすることゆーたら、かないませんわ」
 そうか、あたしだけか。生まれながらの都会っ子。
「あ、正志、あったぞあった。黒板。六年四組。これこれ」
「おお、待てよ勝平。気持ちの準備」
 この黒板のために、あたしと父さんと勝平おじちゃんは大阪からやってきたのだ。
 父さんったら、ピールっぱらのおっちゃんのくせして、一度一番前のちっこい椅子に座ってもうて。
「勝平、お前先生役やれ。俺、てー挙げるから」
「お前アホで手挙げたことなかったやろ」
「理科だけ得意やったんじゃい」
 もー、そんなんええねん。黒板の木の枠に刻んだ初恋、はよ確認しなさい。


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このストーリーに関するコメント

17/08/06 あずみの白馬

拝読させていただきました。
なかなか面白いと思います。最後の一文がポイントで、そこに行き着くまでの長さが、主人公とともに追体験しているようでした。

17/08/08 浅月庵

作品拝読させていただきました。
文体に温かみがあって、陽菜ちゃんのツッコミも
ユーモラスで良かったです。
何気ない日常を面白く見せるのって、なかなか難しいんですよね。

最後の一文......めちゃくちゃ好きです。
その一言だけで青春がぶわっとよみがえるようで、素敵です。

17/08/09 むねすけ

あずみの白馬さん

コメントありがとうございます。書きながら頭の中でアニメーション映像を見るように、瞬くシーンを追いかけるように書きました。一緒に旅してもらえればとの狙いが、追体験して頂けたことにより報われました。ありがとうございます。


浅月庵さん

コメントありがとうございます。日常の中の楽しさ、面白くてあったかい人たちの空間。これは今回一番意識したポイントです。
そして、テーマである、黒板を最後の最後まで引っ張って、それでも単なる小道具にならず物語の芯になってくれるように、ラストの一文は、渾身です。残り字数が少なく、これでどーだ!という、全力でした。気に入ってくれる人がいて、本当に安心しました。ありがとうございます。

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