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ぴっぴさん

少し投稿してみて自分が『異世界』『ファンタジー』『魔法』『有り得ない設定』がダメだと知りました。

性別 男性
将来の夢
座右の銘 ブッコロリー

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再会したい

17/08/03 コンテスト(テーマ):第141回 時空モノガタリ文学賞 【 黒板 】 コメント:2件 ぴっぴ 閲覧数:282

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大学のキャンパスの目立つ通りに『将来の夢』を書いて下さい……という黒板が現れた。設置当初は学生たちも冷ややかだったものの、最初に『よし君のお嫁さんになりたい』と口火を切ると、2〜3日後には書く場所すらないほど未来の夢と理想で一杯になった。
「見ろよ! 高橋! 弁護士だってよ! ウチに法科ないのになに考えているんだ?」
この企画を立ち上げた山田が黒板を見て笑った。
「こっちも見て! ミステリーハンターとかある!」
山田と高橋は無責任な会話を楽しんだ。そもそも書いてある意見はジョークが圧倒的で、まともに取り上げるようなものは見当たらない。二人は社会部の部員で、学生の夢と現実がいかにかけ離れているかを面白くレポートするつもりで黒板を引っ張り出したのだった。
 しかし、黒板にチョークで書かれているものが大多数の中によく見ないと全くわからない鉛筆で書かれていたコメントがあった。

捨てた子供と再会したい

「これ……マジやばいわ。うちの大学生で子供産んでしかも捨てたって言ったらもう事件だろ?」
「事件ですね……」
「再会したいって書いてあるから……子供が死んだりはしてはいないようだな」
「ナーバス! ホント触れ方間違ったらトラウマですよ」
山田はある程度は真剣な夢が書かれると思ってはいたものの、想定外の重たさだった。
「高橋さ、定置点カメラに写っている画像から誰が書いたか確認できないか?」
企画の発表は動画にするつもりで黒板の前にカメラを設置していた。
「あー、その手がありましたね?」
32GBのSDカードが15枚あり確認するまでに2日かかった。
結果から言うと書いた人は学生ではなく初老の男性であった。黒い帽子と黄色いジャンパーを着ているほかは顔はわからない。二人はひとまず学生ではなかったことを喜んだ。
この二日後、山田はキャンパス内で偶然この男性を見かけた。同じ服を着ていたのですぐにわかった。無視するべきか、話を聞くべきか悩んだが、良心が声をかけるべきだと訴えていた。
「すいません。ちょっといいですか?」
「はぁ? 何でしょう?」
「あなたは一週間ほど前に黒板に『捨てた子供に会いたい』と書きませんでしたか?」
いきなり初対面でする質問ではないと思ったが、他に切り口を思いつかなかった。
男性は足を止め、言葉を選んでいるようだったが「書きました」とポツリと言った。

男性は名前を堀田辰也といった。二十年前、ギャンブル狂いの上に浮気、DV、離婚の調停にも出ず行方をくらました。その当時、一歳になる茂という息子がいたが母親に引き取られて母方の姓の長谷川を名乗っている。
たまたま息子がこの大学に通っていることを知って、どこかで会えるかもしれないと淡い期待でキャンパス内を歩いていたときに黒板を見かけて書いたということを話した。
「私も年をとったみたいで死ぬ準備をしているのでしょう。この世に
残す命は茂だけと思い、一目見たいと段々思うようになりました」
「では息子さんは『長谷川茂』君というのですね? それなら簡単だ。きっと見つかるでしょう。もし、見つかったとして会ってみたいですか?」
「会ってみたいです。しかし、茂は父親のいない生活しか知りません。
今更名乗ってもじゃまでしょう。だから遠くから見るだけにしたいです」
「わかりました。息子さんにはお父さんが探していることを言っていいですか?」
「あっ……いえ、できれば内密に……もう私にあわせる顔などないのです」
山田は、まるでドラマのワンシーンのようなやり取りにどこか他人事だったが、その男性の泣く姿が印象に残った。

長谷川茂はすぐに見つかった。影のある少年だろうとドラマ読みしていたが、明るい性格で好青年の一言に尽きる、とてもいいやつだった。
「オレも会いたいです!」
「じゃあ恨んでないのかい?」
「オレ恨んだことないですね。寂しくないだろうか?とか病気になっていないか?とかそんなことばかり考えてましたよ」
「お父さん聞いたら喜ぶと思うよ」
「オヤジも元気そうでしたか?」
「ああ、君に会ったらもっと元気になると思うよ」
山田はこれで少しの責任を果たせたと感じた。父親の連絡先を渡して後は彼らに任せようと思った。

しかし、次の日社会部の部室に長谷川茂が父親と連絡がつかないと言って訪ねてきた。考えがあるので黒板を貸してくれと言う。二つ返事で貸してあげた。何に使うつもりか興味がわいた。
彼は黒板を設置した場所に繰り出し『再会したい、怒っていない会いに来て』と一杯にチョークで書き黒板を背負ってキャンパスに立った。晒し者覚悟で耐える茂をからかう者もいた。
慌てて父親にメールをする。緊急事態だとして呼び出した。
ここで会うしかチャンスはないと感じた。

その父親が息子に会い、跪くまで二時間とかからなかった。


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このストーリーに関するコメント

17/08/21 トツナン

拝読しました。
鉄道駅の伝言板を思い出させる筋立てに好感が持てました。トントン拍子に巻き込まれたドラマながらも、力技でハッピーエンドを引き寄せようとする登場人物達の大学生らしい行動力が眩しかったです。

17/08/21 ぴっぴ

トツテンさま
コメントありがとうございます。あれもこれもとしているうちに、いつも2000文字をはるかにオーバーしており圧縮ソフトのいいのがあれば買いたいと思っています。(笑)これからもどうぞよろしくお願いします。  ぴっぴ

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