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j d sh n g yさん

学生時代に中国へ行き、漫画創作から小説創作の面白さに本格的に気づく。 なぜか中国語の方がすらすらと小説が書け、日本語での小説はその後から徐々に挑戦。 日常をテーマに書いていきます。

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僕らに黒板は似合わない

17/08/03 コンテスト(テーマ):第141回 時空モノガタリ文学賞 【 黒板 】 コメント:1件 j d sh n g y 閲覧数:250

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賑やかなダイニング・バーの店内の黒板にはメニューを兼ねたチョーク・アートが描かれている。

僕は、紗良とテーブルで料理が運ばれてくるのを待っていた。海鮮盛りだくさんの石釜ピザと、チーズとバジルのジェノベーゼパスタ。

僕らはチョーク・アートを眺めながら、休憩時間にした他愛のない落書きについて語り合った。ふざけ半分で描いた相合傘、美術部の本気デッサンなど、出身校は違えど黒板という魅力的なツールには、ある程度の共通した思い出があった。

板書の音が響く高校の教室。

広がるのは千差万別の世界。

僕はそのあまりの情報量に圧倒され、よく鉛筆の芯を折った。

そして、僕は次第に黒板から目を背けるようになっていった。満腹なところに大盛りなメインディッシュが運ばれてくる苦しさといえばいいだろうか。

「私もそうだった気がする。教科書は開いてたけど、授業と関係ない面白そうなページを見てた」紗良は色とりどりのメニューブックをパラパラとめくった。

「あれ、おかしいなあ〜たしかにやったんですが…違うノートに宿題を書いたみたいです」

僕は白紙のノートをペラペラとめくった。難しい宿題の日は大概この手の手段で乗り切った。

僕らは運ばれてきた料理をそれぞれ取り分けた。

海鮮とバジルの香りが漂う。

僕は紗良とワイングラスで乾杯した。
パスタを僕が食べ始めると、紗良はピザを口にほおばった。

I like pizza.

英語教師が黒板に簡単な英文を板書し、likeに丸をつけた。

「この単語を使うことわざがあります」そう言いながら、英語教師は板書を続けた。

Like attracts like.

「アトラクションてあるよね、遊園地とかに。人々を惹きつけるもの。だから、attract は惹きつける、引き寄せるという動詞。またlikeには、好きという意味以外に、似ているという意味があるよね。では、このことわざは日本語でいうと?」

僕はとっさに教科書で顔を隠した。

誰も答えようとしないので、英語教師は諦めて黒板に答えを書いた。

「似たものは似たものを引き寄せる、つまり類は友を呼ぶ、となります。では今日はここまで」

チャイムに追われるように授業を切り上げて英語教師は教室を出ていった。

類は友を呼ぶ。Like attracts like.

僕らは、幸せだ。

これまでも、そしてこれからも。

ただ、僕らに黒板は似合わない。

それだけのことだ。

僕らは手をつなぎ、ダイニング・バーを出た。黒い夜空に相合傘の落書きを指で描きながら。【完】


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このストーリーに関するコメント

17/08/05 文月めぐ

『僕らに黒板は似合わない』拝読いたしました。
色とりどりのチョークで描かれた黒板に広がる世界を想像できました。
英語のことわざも取り入れた、おしゃれな作品だと思いました。

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