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蒼樹里緒さん

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万国黒板博覧会

17/07/31 コンテスト(テーマ):第141回 時空モノガタリ文学賞 【 黒板 】 コメント:1件 蒼樹里緒 閲覧数:204

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 おれが生まれてもいなかった大昔、学校の教室には黒板ってもんがあったらしい。
 目の前のでっかい透明なケースの中に、それはかざられてた。クラスのやつらも、すげーとか大きいとか言ってコーフンしてる。そのうちのひとりが、担任の先生に聞いた。
「せんせー。黒板は『黒い板』って書くのに、どうして緑っぽいんですか?」
「最初は黒かったけど、黒板を作るための材料とかの問題で、真っ黒よりも緑色にしましょうって決まったそうよ。緑色のほうが目にもいいし、文字も見やすいからって理由もあったみたいね」
「ふーん、そうなんだ」
「どうやって文字を書いてたの?」
「チョークっていう文房具が使われてたそうよ。白墨ともいって、黒板用のクレヨンみたいなものね」
「え、じゃあ手が汚れちゃうじゃん」
「そうねぇ。チョークの粉が周りに飛び散ったりもしたそうだし」
「わー、フベンー」
 その様子をイメージしたおれたちは、苦笑いをしたりあきれたりした。
「今はぜーんぶ、コンピュータとか立体映像とかですむのにな」
 おれがつっこむと、そうだよなーって友達もうなずく。
 おれたちが感想を言い合うのを見て、先生は楽しそうだ。
「でもね、黒板があったのは学校だけじゃないのよ」
「そうなの?」
「会社でも会議で、駅でも待ち合わせの伝言板として使われてたし、カフェとかのお店の看板代わりにもなったそうよ。メニューをイラスト付きで書いたりね」
「へー!」
「そういうのはかわいいかもっ」
 女子たちが顔を見合わせて笑う。
「こういうのもあるわよ」
 先生は、端末から立体映像を呼び出した。おれたちも、自分の手首につけた端末でそれを受信する。
 制服っぽいブレザーを着た人たちが映ってた。おれの兄ちゃんと同じ、高校生くらいの年に見える。黒板になにかを書いてるみたいだった。
 じっと見てると、あっ、てだれかが声を上げた。
「絵だ、絵を描いてるんだ!」
「ほんとだ!」
 おれも気がついてびっくりした。
 白い雲、ピンクの花、水色の鳥、いろんなものが描かれていく。最後には、『先生、結婚おめでとう!』って文字も、黒板の真ん中にドーンって付け足された。
「これは黒板アートっていうの。文化祭とか卒業式とかで、よくこういう絵が描かれてたんですって」
 映像の人たちも、完成した絵を見てスッキリしてるっていうか、うれしそうな顔をしてる。
 今日みたいに社会科見学で行った美術館にも、迫力のある絵があったのを思い出した。黒板より何倍もでっかくて、天井まで届きそうなくらいの。なにが描かれてたのかは、あんまり覚えてない。けど、とにかくいろんな色があってハデで、見ててわくわくした。
 この黒板アートも、あの絵と同じだ。ちがうのは、プロの画家じゃなくて、学校の生徒、シロートが描いてること。
「電子黒板っていうのもあるわよ。これからそっちも見ていきましょうね」
「はーい!」
 今日は、外国から日本に黒板が伝わって五百周年の記念日だ。この万博でどんな黒板が見られるか、わくわくしてきた。
 今も学校で黒板が使われてたら、おれはなにを書いたかな。発明した人は天才かもな。

 いろいろできる黒板って、ほんとすげー!


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このストーリーに関するコメント

17/08/20 トツナン

拝読しました。
黒板が過去の遺産となる日も遠くないのだろうと実感しました。万博で『ほんとすげー』と言われるような文化となるのかどうか……まだ過去になっていない、今の当たり前に関わりたくなってくる気持ちになる作品でした。

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