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猫春雨さん

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ライフツアー

17/07/21 コンテスト(テーマ):第139回 時空モノガタリ文学賞 【 旅 】 コメント:0件 猫春雨 閲覧数:162

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 危篤です。
 そう連絡があって、おじいちゃんの居る病院に、お母さんと駆けつけた。
 やつれた口元には酸素マスクが取り付けられ、おじいちゃんの胸がゆっくりと上下している。
 表情は穏やかで、とても危篤状態なんて信じられなかった。
 それでも先生は今夜が山でしょうとつぶやくように言う。
 私とお母さんはおじいちゃんの手を握ったけれど何も口に出すことが出来なかった。
 お父さんはこんな時に出張だ。
 連絡したらすぐに帰ると言っていたけど間に合うかどうか……。
 私とお母さんは不安げにおじいちゃんの寝顔を見つめていた。
 
 気づけば深夜だった。
 お母さんと代わりばんこでおじいちゃんの様子を見守るつもりだったのに、私も眠り込んでいたみたい。
 傍らでは、付添人用の簡易ベッドでお母さんが寝息を立てている。
 おじいちゃんを見ると、さっきと変わった様子は無い。
 山だが峠だか知らないけれど、おじいちゃんは無事に越えられそうだ。
 と思った時。
 ふいに、おじいちゃんの額からひと筋の光がまっすぐに伸び上がる。
 すると額を内側から通り抜けて、二人組の小人が姿を現わしたではないか。
「いやぁ、今回の旅は少々退屈だったかな」
「そうねぇ、もっと波瀾万丈な方が刺激があっていいわ」
 二人の小人は私に気づいて居ないのか、おしゃべりしながらそのまま浮かび上がり、天井をすり抜けて消えていった。
 人生は旅だと言うけれど、ツアー感覚で本当に旅行を味わっている存在が居たのね……。
 きっと彼らは赤ん坊に宿り、それから死ぬまでの間、他人の人生を満喫しているのだろう。
 とそこで、私ははっと気がついてお母さんを揺さぶり起こすと、急いでナースコールを鳴らしたのだった。


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