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風宮 雅俊さん

テーマに沿った物語を、どのくらいのレベルで書けるかな? と言う事で登録してみました。 アマゾンの電子書籍キンドルで作品出してます。こちらも宜しくお願いします。 ツイッター: @tw_kazamiya

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二分の一 成人式

17/07/17 コンテスト(テーマ):第140回 時空モノガタリ文学賞 【 育児 】 コメント:4件 風宮 雅俊 閲覧数:625

時空モノガタリからの選評

「文を作るのが作文だ。本当の事を書いちゃいけないんだ。フィクションだ。」というのは、やや極端にせよ、かなり的を射たセリフだという気がします。教育現場で作文を書かせることの目的は(道徳的で教育的な側面もあるにせよ)、第一義的には文を作る能力を育てることだと思うのですが、実際に周りの子供達を見ると、“本当”にこだわるあまり、結果的に何も書けない(本当に一行も書けない)という事例がかなり多いようです。おそらく学校の先生たちも、本音では、文章がしっかりと書けていればそれで良いと思っているのではないかと想像するのですが……。それにしても、この「父ちゃん」の作文はさりげないリアリティがあって、良いですね。まさに理想の家族、という内容なのですが、細かいディティールで嘘っぽくないような工夫が感じられて、作文としては文句がつけようがないと思います。現実の父子は、“理想”とは程遠い暮らしながらも、ユーモアで現実を切り抜けていけそうな逞しさがあり、キャラクターが魅力的に映りました。

時空モノガタリK

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「とうちゃん、作文の宿題があるんだ」
 夕飯の片づけが終わって、とうちゃんが風呂に入る前に捕まえる。一日に一回のチャンスだ。
「おまえの宿題だろ?」
 逃げの態勢のとうちゃんに低姿勢かつ逃げ場を与えない様に言わなくてはいけない。
「生まれた時の事を両親に訊いて書かく様に先生に言われたんだ」
「産んでないよ」
 面倒くさい全開のオーラが出ている。
「とうちゃん、お願いだから真面目に答えてくれよ」
 低姿勢を崩したら負けだ。
「だってとうちゃん、男だもん。産めないよ」
 ドヤ顔で言われても・・・・。
「産んでなくていいんだよ。産まれた時はどうだったの?」
 生まれた時の事を思い出せたら聞かないよ・・・・。
「産婦人科のババアが『産婦人科に男は入っちゃいけない』とか言ってよ。知らないんだ。産婦人科のババアに聞くか?」
 退院後の話で十分だけど、正論はとうちゃんを怒らせるだけだ・・・
「ババアなら、十年経って死んでるから訊けないよ」
「お! うまい事言うね。親の躾が良いからだね。で、何を知りたいの?」
 今のうちだ!
「生まれた頃の事を教えてくれよ」
「おれも父親になるんだ。って思ったよ。ガッポリ稼がないとなぁ」
 いつの間にか、発泡酒のカンを開け飲んでる・・・・。
「パチンコでも競馬でも分かるんだよ。『これだ!』ってね。一日で月給以上を稼いだ時もあったよ。それで分かったよ。天職は勝負師だってね」
 脱線の予感がする・・・・
「生まれた時はいいよ。もう少し後の事教えてくれよ。作文書けないと居残りになるんだよ。夕飯作れなくなっちゃうよ」
 とうちゃんの目が真剣になった。
「夕飯は大事だ。ちゃんとに作文書きなさい。もう少し後なら、おまえも覚えているだろ」
「うん」
「おれは風呂に入るから出るまでに終わらせるように」
 結局、何も聞けなかった。


「とうちゃん書けたよ」
 一読すると、ニヤリとする、とうちゃん。
「そんな事、書いちゃダメだろ。これもダメ。こっちもダメ。先生ドン引きしちゃうよ」
「そうなの?」
「おまえが入学する時に家族構成出してるの。かあちゃんと妹が出てこないとまずいだろ」
「かあちゃんって? 妹って?」
 物心ついた時からとうちゃんと二人だと思っていた。
「そもそも、作文を分かっていないな。文を作るのが作文だ。本当の事を書いちゃいけないんだ。フィクションだ」
 とうちゃんが、何か考えてる・・・・
「原稿用紙一枚分だな。おれが言うから書き写せ」
「分かった」
 やっぱり、とうちゃんだよ。

「言うぞ」
「うん」
 鉛筆を握りしめて待ち構える。

「僕の家は、三人で夕飯を食べてます。父は帰りが遅く出張も多いため一緒に食べる事が出来ないからです。夕飯は母の手作りで一汁三菜と言って僕と妹の健康を考えて毎日違ったご飯を作ってくれます。ハンバーグや餃子の時は僕も妹も手伝って作るので『我が家の手作り』だよと母は嬉しそうに言ってくれます。父も夕飯を一緒に食べたいと言っていますが社会人としての責任があるからと言って我慢しています。
 父が家にいる時には、サッカーを教えてくれます。プロ選手になりたいと言ったら、喜んで『おまえなら出来る。頑張れ』って言ってくれました。
 父とサッカーをした時にズボンに穴を開けてしまったら母さんが直してくれました。父が新しく買ったらと言いましたが、物を大切にする子に育てたいからと母が言いました。母さんの言う通りだと父が言っていました。
 いつも僕と妹の事を考えてくれる母さん、家族の為に遅くまで頑張ってくれる父さんありがとう」
 とうちゃんは満足そうに頷きながら、いつの間にか発泡酒を飲んでいる。

「これが普通なの?」
「そうだ」
 ドヤ顔でとうちゃんがせまってくる。
「いいな・・・・」


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このストーリーに関するコメント

17/07/19 沓屋南実

二分の一、いつからこういうのが始まったのか、子どもが感動的な作文を発表し、見に来た親が涙する……。
気分が悪くなりました。感動ポルノだ、学校がそんな場を作るなんて。こんなことのために、授業時間を削らないで!
と、ずいぶん怒っておりました。
書きづらい身の上の子どもだっているのです。少数の子たちは無視ですか?って。
不憫に思っていた私ですが、猛省です。たかだか、学校のイベント、適当にしておけば良い。
例えばこのお父さんみたいに、文を作ってしまえば良いのだ、そのほうが先生だって困らない。
さすが、父ちゃんだね!

17/07/20 風宮 雅俊

沓屋南実 さま
感謝の言葉で締めくくらせる事で、先生の教育者としての能力の誇示。その猿芸に感動する親。
自由奔放なとうちゃんには関係なしです^^
ただ、サッカーではなく野球にすればよかったと反省しております。

17/09/22 光石七

遅ればせながら、入賞おめでとうございます!
拝読しました。
「文を作るのが作文だ。本当の事を書いちゃいけないんだ。フィクションだ」、この台詞が衝撃的で、でも妙に納得できました。
なかなか型破りな「とうちゃん」ですが、この作文は完璧ですね。
この「とうちゃん」のもと、主人公はしっかりしたたくましい子に育っていきそうな気がします。
面白かったです!

17/09/22 風宮 雅俊

光石七 さま
ありがとうございます^^
文を作るのが作文だ・・・ これほどの反響を頂く言葉と思っていませんでした。
親の視点、物書きとしての視点が、この言葉に注目するのだと思います。

ちなみに、小学生の頃、作文で一行も書けずに居残りばかりでした。それが賞を頂けるまでになるとは、連続した自分ではないのかも知れません(笑)

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