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笹岡 拓也さん

文章で笹岡 拓也の世界を伝えられたらいいなと考えてます。 キャラクターたちがイキイキとした物語を書いて、読んだあと何か残れるような作品にしていきます。

性別 男性
将来の夢 自分の作品を多くの人に読んでもらうこと
座右の銘 生きているだけで幸せ

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日記という名のタイムマシーン

17/07/14 コンテスト(テーマ):第139回 時空モノガタリ文学賞 【 旅 】 コメント:1件 笹岡 拓也 閲覧数:384

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母さんの葬式が終わり、四十九日の集まりもひと段落ついた頃、姉ちゃんが実家の片付けを一緒にやろうと声を掛けてきた。しばらく有給を取っていなかった俺は、これを機に5日ほど実家に帰って姉ちゃんと片付けることにした。
「結局さ、この家管理できないから売ろうと思ってるんだよね。悠太はそれでもいい?」
姉ちゃんは結婚してからサッパリした性格になった。元々何も捨てることができなかった人間が、愛着溢れる実家を管理できないという理由で売ると言い出した。これもまた旦那が関係しているのだろうと俺は心の中で呟いた。俺はもう実家に何年も帰っていないから、実家のことは姉ちゃんに託している。その売ったお金を全部姉ちゃんが持っていくのも良し。それほど俺はこのことに関してノータッチだった。
「ねぇ!悠太ちょっと見てよ!」
埋蔵金でも見つけたかのように姉ちゃんは片付け作業に勤しむ俺に声を掛けてくる。面倒だと思いつつも、俺は姉ちゃんのところに足を運ぶ。
「見て見て!お母さんの日記だってさ!」
姉ちゃんが俺に見せてきたのは、ダンボールの中に仕舞われた何十冊にもなる日記だった。どうやらこの日記は母さんの物で、姉ちゃんや俺が生まれる前から書いていたものらしい。
「すごくない?ちょっと見ていいかな!」
俺は母さんの日記だからと言って見ることに少し抵抗を感じる。それでもどんな日記を書いていたのか気になった俺は、姉ちゃんが読む母さんの日記を覗き込む。覗き込んだ日記は本当に毎日のように書かれていた。
俺と姉ちゃんは母さんが書いた日記という名のタイムマシーンに乗って時間旅行の旅に出た。

1986年4月18日
今日はあなたと美琴が病院に来てくれた。美琴は痛がる私のお腹をさすってくれる。「痛いの?大丈夫?」そう言ってくれる美琴に私は勇気をもらった。早く赤ちゃん元気に生まれてきてね。

この2日後に俺は生まれる。俺は生まれる前から母さんが病院で入院していたことを初めて知る。そんな痛い思いをして俺を生んでくれたんだと考える。

1989年9月27日
悠太が大熱を出した。とっても辛そうなのに悠太は私に心配を掛けないようにニコっと笑ってくる。どうにかしてでも私と変わってあげれないかな?こんなに心優しい悠太のために私は何もしてあげることができなかった。ごめんね。

1992年4月8日
とうとう悠太まで小学生になった。入学式ではすごく緊張してたね。美琴の時も思ったけど、少し寂しいって思っちゃった。でも悠太が同級生の中で一番カッコよかったよ!ママの中ではね。

1996年9月12日
悠太が友達と喧嘩して手を出してしまった。学校に呼び出された時、悠太はずっと外を眺めてた。悠太は今何を考えているんだろう。こんなこと初めてで私は悠太にどう注意していいのか分からなかった。結局あなたに丸投げしちゃった。やっぱりこういう話は男同士の方が話しやすいのかな?

1997年12月14日
悠太が算数のテストで100点を取ってきた。私が褒めても全然喜ばなかった。でもこんな難しいテストで100点なんてお母さんには取ることできないよ?本当にすごいこと。悠太100点おめでとう!


母さんは毎日毎日色んな出来事を日記にしていた。姉ちゃんのことも多く書かれていたが、俺のこともよく書かれていた。俺が熱を出した時のことなんて全く知らなかったし、友達と喧嘩したことやテストで100点取ったことすらも忘れていた。でも色んなことがあったからこそ、今の俺がいるんだと感じることができた。
そんな母さんの日記は一ヶ月ほど書かれていない時期があった。

2009年1月6日
あなたがいなくなって初めて気がついた。1人ってこんなに寂しいものなのね。美琴も悠太も忙しそうで一緒に住もうなんて言えなかった。あの子たちはとっても立派に育ったわ。

久々に書かれた日記は父さんが死んでからしばらく経った頃だった。この時期、俺は仕事が忙しく父さんの見舞いにもいけなかった。父さんが死んだ時、母さんは気丈に立ち振る舞っていたから気づかなかった。もっと時間を作ってでも一緒にいてあげればよかった。
日記はそれからしばらくして終了した。きっと母さんの体調も良くなかったし、俺と姉ちゃんも帰ってあげれなかったからだろう。
しかしそんな日記の最後にはあるメッセージが書かれていた。

美琴と悠太へ
あなたたち2人は私とお父さんの宝物です。いつまでも仲良くね。

こんなメッセージを最後に残しておくなんて、母さんは最初から俺たちに日記を読ませようと思っていたのか?そうツッコミを入れながらも、俺の目からは大粒の涙がこぼれた。
そして俺はこの日記の続きを書こうと考えた。
日記という名のタイムマシーンで時間旅行をさらにできるように。


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このストーリーに関するコメント

17/08/03 のりのりこ

親から子への愛情の伝わり方にはさまざまな形があるんだと知りました。これを読んだ子供達が親の有り難みや家族の大切さを改めて感じてくれたら素晴らしいなと思う良い作品でした。

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