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白昼夢

17/07/12 コンテスト(テーマ):第138回 時空モノガタリ文学賞 【 猫 】 コメント:0件 sandie 閲覧数:338

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あたたかな春の午後。
新居はぬくぬく日当たりが良く、リビングの床に寝そべる満ち足りた飼い猫一匹。
突然の訪問者にとび起きる。
電話工事?
ああそうでした、お願いします。

人懐こそうな笑顔を中に通す。
玄関ドアを即ロックした僕に、「カギは開けたままで。道具を取りに出たり入ったりしますので」。
すみません、目を伏せ思わず口ごもる僕。
「癖なんです…」
内と外を直ちに遮断せずにはいられなくて。
だって外は鬼だらけだから。
今夜僕の福の神は出張で留守だから、結界は張っておかないといけないのです。
きらきらした茶色の瞳で目礼すると、工事の彼は作業に取り掛かる。
すれ違う度に華奢なその体からは灰皿の匂いがしたし、目と同じ色の一つに束ねた髪はパサパサだったけれど。
なぜなのだろう。
こんな猫が欲しい。
ああ 飼いたい。
希望というより切望。
いやむしろ渇望。

こいつを膝の上にのせて、鼻をつんつん突いて嫌がられたり。
首筋に顔を埋めておひさまの匂いを嗅いだり。
なめらかな腹を思う存分なでまわしたり。
したい。
したい。 
したい。

「終わりました」
にこやかに告げる声。
我に返って冷や汗が出る僕。
一服盛ったお茶を出したくなるのはきっとこんな時だろう。
音もなく靴を履き振り返り、にゃあ(と聞こえた)と挨拶。
工具箱を抱えドアの外に行きかけるその細い手首、思いきりつかんで引き留めたい。

猫同士、視線が絡み合って――
一瞬の熱い閃き、火花のような衝動。
はじけて散りはせず、煙幕となり漂う。
その向こうにはほら、床の上。
転がりじゃれ合う2匹の猫。

陽だまりの中戯れる、飽きもせず。
あたたかな春の午後、酔いもせず。


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