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ちほさん

心のあたたかくなるお話を じっくりと書いてみたいです。

性別 女性
将来の夢 童話作家。
座右の銘 たいせつなのは、どれだけたくさんのことを したかではなく、どれだけ心をこめたかです。(マザー・テレサ)

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君の心は鞠のよう〜はずんではずんで何処へゆく?

17/07/12 コンテスト(テーマ):第138回 時空モノガタリ文学賞 【 猫 】 コメント:0件 ちほ 閲覧数:390

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 ボクんち、お酒とお料理のお店なの。
 2階には宿屋さんもあるよ。
 「お店があるから猫は飼えない」って、おとうさん言ってたの。
 だからお店から2階にのぼってく階段の一番上にすわって、ボク目を閉じて耳をすますの。
 お店のドアのカウベルが鳴るよ。

──カランコロン……カランチリン……チリンチリン……

 ほら、猫さんの鈴が鳴ってる風にきこえてきたでしょう?
 白い子猫さん、いるみたい。
 お店の中を長い尻尾を高く上げて、お姫様のようにしずしず歩いてるの。
 ボク、すっかり嬉しくなるんだけど……

──チリンチリン……チリンコロン…………カランコロン

 あぁ、白い子猫さん、いなくなっちゃったよー。
 代わりに子牛さんが来てくれるんだけど……なんか違うと思うの。
 ボクは子牛さんとも別れて目を開けた。
 階段上から1階のお店を覗いて小さな声で言ってみた。
 「今日も、商売大繁盛!」
       ◇
「あのね、猫さん飼いたいの」
 もう何度目のお願いだろうか? 父の返事はウォルターには分かっていた。
「うちは料理を出す店だからね、毛が落ちたりする猫は本当に困るんだ」
 いつも優しい父だが、毛のある動物を飼うことだけは決して許してくれない。初めて猫をねだった時、父がくれたのは、なんと5匹の『オタマジャクシ』だった。せっかくくれたので、『おたまちゃん』と名付けて可愛がっているが、いずれカエルになってしまう。おたまちゃんもカエルもまぁまぁ可愛いが……得意な空想でも彼らを『猫』だとは思い込めなかった。ウォルターが猫を欲しがると、優しい父は「ダメだ」という一言で終わらせるのではなく、ちゃんと説明してから『おたまちゃん』をくれる。猫をねだるたびにくれるので、『おたまちゃん』ばかりがウォルターの部屋の水槽にいる。その数、100匹。これから100匹の巣立ちを見守らないといけないと思うとうんざりしてくる。
 今日は、いつもとは違う方向から──まずは『ひよこ』から攻めてみた。
「あ、あのね、『ひよこ』は『にわとり』になるし、『にわとり』は『お肉』になるんだよ。ちゃんと食材になるの。1粒で3度おいしいの。すごくお得なんだよ! だから……」
 本気で発言したのだが、父の理屈が返ってきた。
「でも、美味しいのは『お肉』だけだね。ところでウォルター、ほんとうは猫さんのことを言いたいのだろう?」
「なんでわかったの?」
「なんとなく。うちには君がねだらなくても『ひよこ』はたくさんいるのだし。──あのね、知ってるかい? 猫さんのお肉は食材にはならないんだよ」
 料理人の父に静かに言われて、料理人に憧れているウォルターは、とても驚いた。うつむいて真剣な顏で考えはじめ、そして悟りきった表情で父に厳かに宣言する。
「じゃあ、牛さんでいい」
 父は(なんで『牛』なんだろう? そりゃあ牛肉は美味しいけど)と内心首を捻る。幼い息子は叫んだ。
「ボク、牛さんに『猫さん』て名づけるーーっ! 牛さんの『猫さん』ほしいーーっ!」
「負けたよ、ウォルター……。でも、もう少し考えてみようね。牛さんは大きいから」
「あのっ、あのっ、子猫さんサイズの……ううん、なんでもない」
 父は、とりあえずこの問題を棚上げした。一方で、留守番が多い息子には、子猫が必要だったのかもしれないと反省し、とうとう──。
 数日後、パブ『ロビン』の前に、帽子の箱が置かれていた。中には、綺麗な白い子猫が入っていた。ウォルターは目を丸くして、子猫のあご下を指先で撫でながら父に聞く。
「牛さんじゃなくて、猫さん来た? ……サンタさん? でも、もう春だし」
「サンタさん、春のピクニックのついでにでも寄ってくれたんだろうな」
「ボク、サンタさんにおてがみ書くね」
 昼食時に息子から「サンタさんにおくっといて」と完成した手紙を渡された。父は、わくわくしながら封を開いた。幼い字が、一生懸命に書いたのがよくわかるものだった。

『サンタさん 子猫さんサイズの牛さんください おねがいします うぉるたーより』
 
 父が途方に暮れていると、ウォルターが戻ってきた。
「あ、ボクの手紙。あのっ、それでいいよね? 子猫ちゃんはユキヤさんとこの双子ちゃんにあげるの。ボクは、子猫さんサイズの牛さん待つんだ。占いだと、あした届くの」
「あ……あした!?」
 翌朝、ウォルターにサンタさんから手紙が届いた。

『ウォルターくんへ 子猫さんサイズの牛さんは在庫切れです。すみません。  サンタより』 

 ウォルターは「子猫さんサイズの牛さん大人気!」と納得し、父の方も一件落着だが(猫さんへの情熱が、牛さんを絡めて暴走したかな?)と、幼い思考回路を理解できず頭を抱えてしまった。



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