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デヴォン黒桃さん

「黒桃将太郎」名義でKindle作家として活動。「デヴォン黒桃」名義で猫面師としてアート活動も。人間ドラマや人の感情に興味があり、書きたい物をジャンル問わず書いております。「黒桃短篇集」発売中昭和浪漫のスコシばかり怪異なお話、アナタの脳髄へソット、注入サせて頂きます。 心の臓のヨワい御方は、お引き返し下さい。 精神に異常をキタしても、責任が取れませぬ故。http://amzn.to/2jPBe4m

性別 男性
将来の夢 りっぱなおとな
座右の銘 悔しいけど感じちゃう

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クラゲ

17/07/01 コンテスト(テーマ):第137回 時空モノガタリ文学賞 【 海 】 コメント:0件 デヴォン黒桃 閲覧数:353

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 嗚呼、僕は何をそんなに急かされて生きてるのだろう。

 海はいい……
 ただ何も考えずに、こうやって揺蕩うだけで心地よい。
 体の力を全て抜いて、不規則な波に揺られるがままに……まるで揺り籠のようだ。
 波がチャプチャプと心地良い響きを奏で、母親の羊水に浮かんでいるようだ。
 水面がキラキラと太陽を散りばめて僕をあやす。

 地上では、生き急ぐ人間たちが、コンクリートジャングルを戦場に、弱みを握られないようにと、自分を強く見せあう。弱い人間程、自分は強いんだと自分を偽るものだ。
 誰でも取れるような大したこともない功績に、尾ひれはひれを付けて、肋骨の浮き出た鶏ガラみたいな胸を張って、黄ばんだ不揃いの歯を見せながら、羽虫みたいな掠れた声で誰かれ構わず吠える。
 俺はお前より強いんだから従え、俺はこんな事が出来るんだから褒めろ、自己主張ばっかりで中身の無い人間の虚勢だらけ。

 まぁ……今はどうでも良い……
 海はいい……
 ただ何も考えずに、こうやって揺蕩うだけで心地よい。

 降り注ぐ陽の光。
 寄せては返す波。
 泳ぎ回る魚の群れ。
 何処までも深く。
 何処までも碧く。

 地上では、他人を蹴落とし、己の理だけを考えて生きる人間たちが、優しい人間たちを追い詰めている。無機質な顔をした奴らが、笑顔で涙を流す人たちを殺す。
 馬鹿者は刃物を振りかざし振り回す。利口な物は上手く避けられるが、慈愛に満ちた者がその凶刃に倒れて逝く。ソシテ法を手にした大馬鹿者が馬鹿者を庇い、愚行を助長する。
 阿呆みたいな夢を語り、やりもしない癖に能書きだけタラタラと垂れこぼし、ミットモナク出っ張った腹を抱えてよだれを垂らしてイビキをかいて眠る。
 
 まぁ……今はもう、どうでも良い……
 海はいい……

 ただ、今はこうやって揺蕩うだけで心地よい。
 僕はそんな世界が嫌で離脱した。ソシテ海の底に沈んでいる。
 ただ何も考えず、揺蕩うだけで心地よいのだ。
 
 降り注ぐ陽の光、僕の身体を腐敗させる。
 寄せては返す波、僕の腐肉を削り取っていく。
 泳ぎ回る魚の群れ、僕の腐肉を突いて食べる。
 何処までも深く沈む僕。

 何処までも。 
 何処までも。 
 何時迄も。
 クラゲのように揺蕩う。

 もう、何も考えられ無くなってきたが、こうやって揺蕩うだけで心地よい。


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