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村崎紫さん

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ゆうちゃんの海

17/07/01 コンテスト(テーマ):第137回 時空モノガタリ文学賞 【 海 】 コメント:0件 村崎紫 閲覧数:173

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7月に入って少しずつ汗ばんでくる頃。『うみ』のお歌を幼稚園で習ったゆうちゃんは、ふと、昨年の夏に初めて行った海を思い出しました。少し冷たくて、お口に入るとしょっぱくて、青くきらきらしている海。
思い出してくると見たくなって、そして素敵なことを思いつきました。
「ママー、うみ、つくりたい!」
「海?」
空になった洗濯カゴを抱えてママはゆうちゃんを見ました。ゆうちゃんのママは魔法の手です。何でも出来ちゃう魔法の手。ゆうちゃんはそう思っています。

「海ねぇ…。」そう言って考えた後に時計を見て、そして台所に向かいました。戸棚を開けて何かを確認していたママの後ろからゆうちゃんも覗き込みました。ホットケーキやかき氷などの写真が載っている袋やビンがたくさんあります。こんなところに!秘密の扉の1つだったので大発見です。
それから冷蔵庫も開けた後、ママはゆうちゃんを見てニッと笑いました。
「海、作っちゃおうか。」
「うん!」
「ではまず手を洗いましょー。」
「はーい!」
ゆうちゃんは元気よくお返事をして、すぐに手を洗いに行きました。海を作れるんだと思うとドキドキが止まりません。

それは魔法の時間でした。
ゆうちゃんはヨーグルトと牛乳とお砂糖と不思議な液をまぜまぜして、それをガラスのカップ3つに入れました。お昼ご飯を食べ終わって、冷蔵庫に入れてたそれを出すと、なんとプルプルになっていたのです!それだけではありません。
一番ドキドキしたのはサイダーとかき氷のシロップを混ぜた時。しゅわしゅわと泡が消えた後にとってもきれいな青色が出てくるなんて!
それをさっきのカップに注いだ後、冷蔵庫に入れてママは言いました。
「時計の短い針が3のところ、長い針が12のところに来たら完成です。それまでこの冷蔵庫を開けてはいけませんよ。」
電話に出る時のような綺麗な声で言うので、ゆうちゃんは面白くて仕方ありません。でも、この間一緒に見た絵本で同じようなことを海のお姫様も言っていたことを思い出しました。
「おじいさんになりたくないから、ぜったいあけない!」
そう言うと顔を見合わせてくすくす笑いました。

次に冷蔵庫を開ける時はどうなっているんだろう。想像するとゆうちゃんはわくわくしました。待っている間は長いようで、短いものです。いつの間にかソファで眠ってしまっていたゆうちゃんは、パパの声が聞こえてきて目を覚ましました。そして慌ててタオルケットを跳ね除けて、ママと台所で楽しそうにお話しているパパのところに走っていきました。
「れーぞーこ、あけちゃだめ!おじいさんになっちゃう!」
「おじいさん?」
パパはびっくりしていましたが、ああ、と納得したようで笑顔になりました。
「ありがとうな、ゆうちゃん。でも大丈夫だよ。ほら。」
パパが指差した時計の短い針は3をとっくに過ぎて6を指していました。もうご飯の時間です。うっかり寝ちゃったことに、ゆうちゃんはだんだん悲しくなりました。なんだか周りがぼやけて見えてきました。
「今日だけ特別。ご飯の前にちょっと食べちゃおうか。」
「やったなゆうちゃん。」
ママがそう言うとパパはゆうちゃんを抱っこして、冷蔵庫の前まで歩きました。目をごしごしと拭いて、ゆうちゃんはドキドキしながら冷蔵庫を開ける手に力を入れると、冷たい空気が流れてきました。目の前に白い砂浜と澄んだ青い海を閉じこめたようなゼリーカップが3つ並んでいます。そのうちの1つをママがゆうちゃんに渡しました。ぎゅっと握るとヒヤリと冷たさが伝わってきます。ガラスと海のきらきらがゆうちゃんの目にも移ったかのようにきらきらしています。

ママから渡されたスプーンでプルプルの海をそっとすくって、ぱくっとお口に入れました。噛むごとに冷たい海がしゅわしゅわとお口の中を広がっていきます。
「しょっぱくない!おいしい!」
「よかったなぁ。しょっぱくない海なんて、ゆうちゃんの海だけじゃないか。」
「やっぱりママすごい!!」
「作ったのはゆうちゃんだから、すごいのはゆうちゃんよ。」
すごい。ママの魔法の手と同じになったと思うと嬉しくなって、ゆうちゃんはパパに海を作った時の魔法のお話をしました。

冷たくて、お口に入れるとしゅわしゅわして、青くきらきらしているゆうちゃんの海。
海の思い出が1つ増えた素敵な日になりました。


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