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seikaさん

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性別 女性
将来の夢 生まれ変わること
座右の銘 朝、一杯のコーヒー

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海の季節の中の私…

17/06/27 コンテスト(テーマ):第137回 時空モノガタリ文学賞 【 海 】 コメント:0件 seika 閲覧数:158

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・・・潮騒が聞こえる。セーラー服を脱ぎ捨てて二、三ヶ月・・・わたしは友達のA美とともに、まだ白い肌だけどトロピカルプリントのティシャツにデニムショートパンツで防波堤の見えるネギ畑へと着ていた。あの防波堤を越えれば海なんだ・・・。足元の砂地には海星や貝殻が転がっている。やはり海なんだ・・・。
そして防波堤を見えた。そこには蒼青く広い海が広がっていた。生脚を潮風がくすぐる。十八の初夏のことだった。

・・・そしてこの浜辺で恋をしてそして恋が終わった。皆は潮騒の聞こえる浜辺からそれぞれ故郷へと帰っていった。友達も家業の酒屋のビールを自転車で配達している、サーフブランドのトレーナーがかつて潮騒の中で恋に燃えた日々の名残りだった・・・。

私は・・・というと帰るところは・・・無かった。私の生まれ育ったあの杉並の家には到底帰る気にはなれなかった。あの家は「世界一のドイツ文学者」とやらの戸舞賛歌の私物だった。小麦色に日焼けして、そしてさらさらの長い髪を潮風に靡かせて、そして裾がフリンジになったデニムショートパンツを穿いている私はドイツ文学者の家に入る資格などあるはずも無かった・・・。

 その頃わたしはドイツ文学者の家など到底いることが出来ず、おじの家に受け入れてもらっていた。が成人した私はいつまでもこのおじの家にいるわけには行かない。新しい居場所・・・誰かいい男の人を見つけて所帯を築き上げなければならない・・・そんな現実が時化の海のように私の前に迫っていた・・・。誰かいい人を・・・その頃、私はこの人と一緒になったら幸せにれるのかも・・・という人が居ない訳でもなかった・・・というより私をやさしく受け入れてくれていた男の人が居た・・・。
 がその気配を戸舞賛歌がかぎつけてきたらしい。戸舞賛歌としてはそのことにかなり危機感を感じていたようだ。わたしが誰か戸舞賛歌の文学や学問を理解しないような人と一緒になること・・・それは戸舞賛歌には到底受け入れられないことだった。

 ある日、友達とビーチで遊んでおじの家に帰ると、茶の間の雰囲気がどこか杉並の戸舞家のように感じられた。
「今、グリムが流行っています。グリムは心理学に関連付けられて出で行きます。この流れは大体河合隼雄が昔話の深層を発表したあたりから・・・。」
とあの甲高い女性的な声がする。戸舞賛歌だ。私は視界から色が消えうせ、モノクロトーンになっていくのを感じた。プリントティシャツにデニムショーパン・・・こんな格好を戸舞賛歌にみられたらどうなるか・・・。とにかく二階の自分の部屋に行き、貸し方無しに大人めのワンピースに着替えた。

「実はな、しばらくドイツに行くことになった。お前にも来てもらう。今その話をしていたところだ。」
要は戸舞賛歌がドイツに留学するのでわたしも同行しろという事だった。
「ビーチで知り合った皆との世界から引き離される・・・。」
わたしがそう悟った瞬間だ。その晩、私は妹のように可愛がってくれたユキエさんにすべてを打ち明けた。ゆきえさんは白い車ですぐに着てくれた。水色のテイシャツに紺のショーパンに紺のローファー・・・そんなゆきえさんは私を優しくそして強く抱きしめてくれた。涙があふれ出て止まらない。一緒に幸福な将来を築こうとしていた男の人とも別れなければらない・・・。その晩、ゆきえさんと夜の道をドライブした。悲しいドライブだった。

そしてゆきえさんはわたしに頬ずりをして、そして白い車に乗って去っていった。

少しして
「お前の分の航空券も手配してあるからな。」
戸舞賛歌からそういう電話があった。勤めていた観光協会もしばらく休職・・・だたがしかし結果的に観光協会に戻ることはなかった。





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