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榊真一さん

閃くがままに書ければ良いと思っています。

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ブルーハワイと彼氏候補

17/06/22 コンテスト(テーマ):第137回 時空モノガタリ文学賞 【 海 】 コメント:0件 榊真一 閲覧数:259

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木製の長いドアノブ、それを引き暗い店内へと入っていく一人の女性。
ショートボブのダークブラウンの髪、ベージュのワンピース、スエードのハイヒールは髪と同じような暗い茶系。
リップにはグロスの赤、マスカラは眼をさりげなく強調している。
しかしその表情は何処となく寂しげである。
カウンターの中に居る店主は女性の姿を認めると、何も言わずに「ブルーハワイ」と言うカクテルを作り出した。

私の名前は石橋茜。
残業が終わった深夜は週末に向けて此処で気分をリセットする事が多い。
しかし、今日は一人で来る筈では無かった。
本当は同じ職場の先輩と言うか上司である広浜健吾さんを誘っていた。
彼は頼りなさそうな外見とは裏腹にミスした際には
鬼のように厳しい課長から守ってくれたりもする。
そんな彼に憧れから別の感情に移るのもそう時間が掛からなかった。
恋心、、そうなのだろうか、、多分そうなのかもしれない、、

そっと置かれたブルーハワイ、、私は腕を組んだままそれを見つめていた。
南国の青い海を思わせるこの綺麗なブルー、豊かな丸みを帯びたグラスの淵には飾られているパイナップル、そしてクラッシュアイスに刺さった赤いストローが存在感を示す。
キュラソーと言えばオレンジから作られるリキュール、その色は透明か薄い黄色だろうが、青いキュラソーはそれに着色料を加えて青色になっている。
細かい事は気にしない、私は青いカクテルが好きなだけ。

それを見つめながら溜息が出た。
「なんでかな、まさか一人で青いお酒を飲むとは思ってなかったよ」
彼を飲みに誘った台詞は短かった。

「帰り道に一杯だけ付き合ってください」

友達にも色々聞いた、雑誌だって色々読んだ、、彼が私の誘いを受ける可能性はかなり高いと思ったのに。
彼は少し考えた表情の後こう言った。

「予定は無いんだけど、、いきなり誘われても困るよ」

ああっ、こんなに簡単に断られるなんて。

グラスを華やかに飾っている一切れのパイナップル、私はそれを無造作に口へと入れた。皮は付いたままだがそのまま遠慮なく嚙み砕く。
赤いお洒落なストローは前に有った灰皿の中に弾き飛ばした。

「だって簡単に振られちゃったんだ、飲まずに居られないよ」
一息で飲み干されクラッシュアイスだけになったグラスは私のおでこを冷やしている。

「石橋を叩くようにその男を調べたんだけどなあ」
店主は気が向いた時に探偵の真似事をする趣味がある。
只石橋と言うのは余計だ、、苗字でギャグを飛ばすなんてつまんなさすぎる。
私の母も何年か前に石橋と言う苗字になっている、母の再婚相手は目の前に居る店主だから、勿論私も石橋と言う慣れない苗字を使っている。

広浜健吾さんを調べた義父からの報告は私の期待する物であった。
なのに私じゃあ駄目なのかな。
それに報告には抽象的な言葉が多い。
私は意を決して店主の顔を見つめた。

「パパの報告には何かを隠してように見えるんだ」

マスターとは呼ぶがパパと呼んだのはあまり記憶に無い。
その自分を示した単語を聞いた義父は明らかに動揺している。

「茜、、彼は、、」

詰まりながら言葉を選ぶパパ、その言葉が放たれる前に入口の扉が開いた。

ふん、誰か知らないけどカッコつけちゃって。
この暗い店内に大き目のサングラスを付けたまま入る神経が解らない。

灯り以外何も見えないだろうと思った私は顔を反らさず彼女の服装を値踏みするように眺めていた。
胸まであるような黒髪はさらさらとした感触が伝わるようなストレート、
袖がレース状になった黒のシフォントップス、対する眺めのスカートは白である。

「御免ね、待たせちゃって」
多分彼女はそう言うだろう、カウンターの席には間隔を開けながら2人の男性が居る。
一人は30前半位の男性で丁度良い感じに見えた。
もう一人は50代位だろうか、別にそう言った関係も有りかな。

しかし彼女の手は私の肩に置かれるのだった。
「お待たせっ、石橋君も制服を脱ぐとこんな感じに変わるんだ」
振り返った私の眼にはサングラスを外した女性、いやその眼は広浜健吾の眼に違いない。
何で広浜さんが女装しているのか、私の頭は今まで経験したことが無い位に回転している。

店主いやパパは2つの新しいカクテルをカウンターに置いた。

カウンターに居た2人の男性を見送った店主は飲まれていない「ガルフストリーム」
というカクテルを眺めながら居残った2人の客をそのまま置き去りにしている。

「ウオッカが入っているから酔うけど、、今のお前らには一番良いかもしれない」

憧れの広浜健吾さんとこうしてお酒が飲めるのもパパのお陰だと思う。
金曜の深夜、どちらが先に酔いつぶれてもいい。
私達はパパが作る海をイメージした次のお酒を飲むのであった。


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