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笹岡 拓也さん

文章で笹岡 拓也の世界を伝えられたらいいなと考えてます。 キャラクターたちがイキイキとした物語を書いて、読んだあと何か残れるような作品にしていきます。

性別 男性
将来の夢 自分の作品を多くの人に読んでもらうこと
座右の銘 生きているだけで幸せ

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たまちゃんと老女

17/06/21 コンテスト(テーマ):第138回 時空モノガタリ文学賞 【 猫 】 コメント:2件 笹岡 拓也 閲覧数:902

時空モノガタリからの選評

飼い主を気遣い、自分の代わりを務めるように依頼した「たま」。そして嫌々ながらも、老女の元で彼の代わりとして暮らす「俺」。二匹の行動によって老女の心が慰められる展開に読んでいて癒されました。老女にとって「俺」は「じいさん」の形見であり、「たま」の分身でもあり、彼を抵抗なく受け入れることができたのでしょう。最後に互いの感謝を分かち合えないのはちょっと切ないですが、彼の気持ちはきっと伝わっていることでしょうね。読みやすくまとまった作品だと思います。

時空モノガタリK

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人間はいつも偉そうなのに、実は大したことない生き物だ。私たちは豊かな知能を活かして個々の存在を認め合って生きていると抜かしたことを言っている。そして俺たちみたいな猫や犬をペットとして飼って優越感に浸っているんだ。
「たまちゃん、ごはんの時間よ」
俺は今、老女の家で暮らしている。朝昼晩と毎日決まった時間に同じ飯が用意される生活を送っているが、元々野良猫だった俺は今の生活が嫌いだ。
「たまちゃんはいつも偉いわねー」
老女は俺の頭を撫でながら、いつも優しい声を掛けてくる。その優しい言葉を浴びる度に、俺は人間の愚かさを感じる。俺がたまちゃんという猫じゃないことに気づかないなんて、本当に人間は愚かだ。
でもどうして俺がたまちゃんじゃないのに、老女は俺のことをそう呼ぶのか?それは半年前のことだった。

「なぁもう時期俺は死ぬみたいだ。だからお前に頼みがある」
俺の友猫のたまが、ここらでは本当に恐れられている猫に喧嘩を吹っかけられてしまった。一方的にやられてしまったたまは、もう明日を迎えることができないと言ってきた。
「運がよく俺とお前は同じ柄の猫同士。だから友猫のお前に頼みたいんだ」
その頼みはたまのフリをしてほしいということだった。友猫と言っても腹違いの兄弟である俺たちだからこそできることだとたまは言ってくる。でも正直俺は人間のペットになんかなりたくなかった。
「飼い主も長くないと思うんだ。1人にさせるのは可哀想だからよ、頼むよ。俺とお前の仲だろ?」
どうしてたまは人間に可哀想なんて感情を抱くのだろう。そんなことを考えながら、ここまで頼まれて断るワケにもいかなかった。止む終えずたまの言う通り、たまのフリをしたまま生活することにした。
「たまちゃん!ちゃんと帰ってきてくれてありがとうね」
たまの死を見届けた後、たまの飼い主である老女の元へ行く。すると老女は俺のことを見て嬉しそうにする。俺はすぐに違う猫に入れ替わってることなんて人間なら気づくと思っていた。でも老女は気づかなかった。

あの日から全く気づく気配もない老女。俺はそんな老女を見て、人間が大したことのない生き物だと気づいたのだ。
この生活にも少しずつ慣れてきた時のこと、老女が俺にしんみりとした口調で話しかける。いつもとは違い、何だか寂しそうだった。そう、あの時のたまのように。
「たまちゃん、私もそろそろじいさんが迎えに来るみたい。そんな気がするの」
俺は老女の話す言葉に疑う理由がなかった。たまから老女の命は長くないと聞いていたからだ。しかし何だろう、老女がこの世からいなくなるイメージが全く浮かばなかった。
「じいさんが拾ってきたたまちゃん。じいさんがいなくなった今、楽しく過ごせたのはたまちゃんのおかげだよ」
老女はたまとの思い出を振り返るように話す。たまはこんな俺でも分かるほど、老女に愛されていたんだ。
「あなたがニャーって鳴くと、私も生きてるんだって知ることができるのよ」
俺はこの半年間、老女の前ではたまのフリをし続けた。よくたまは鳴いていたから、俺も必死で老女に向かってニャーっと鳴いた。
「たまちゃんは私にとって大切な宝物。本当にありがとう」
老女は俺に向かって今まで見せたことのない笑顔を見せた。きっとたまも見たことがない笑顔だろう。その笑顔を見た時、俺は何故だか分からないけど心の奥が痛く感じる。たまは本当に老女に愛されていたんだ。そんな感情が俺を惑わす。こんな生活早く終われと思っていたのに、今日の俺はどうかしてる。
「たまちゃんがいなくなったあの日、私は悲しかった。じいさんだけじゃなく、たまちゃんまで私を置いてくの?ってね」
俺には老女の気持ちを知ることは出来ない。なのにどうしたものか、老女の側にいてあげたいと思うようになっていた。
「でもあなたが来てくれた。私のために、たまちゃんのフリをして」
俺は老女の言葉に耳を疑った。老女は全て知っていたんだ。俺がたまのフリしていたことを。
「じいさんとたまちゃんが、あなたを贈ってくれたんだ。私はそう思ったわ。あなたはたまちゃんのように、私のことをよく見てくれた。いつも駆け寄ってくれた。本当に嬉しかったわ。ありがとう」
老女は俺の目の前で静かに目を閉じた。俺は必死に老女に呼びかけるが目を開けようとしない。
たま、こういう時はどうすればいい?ずっと鳴いてれば目を開けてくれる?老女の顔を舐めればいい?何をしても目を開けてくれないよ。
今までのことを感謝したいって思えたのに。


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このストーリーに関するコメント

17/06/24 文月めぐ

『たまちゃんと老女』拝読いたしました。
ペットを「飼う」と表現すること自体、人間が動物より偉いと思っている証拠なのかもしれませんね。
しかし、この小説のおばあさんはきちんと動物に感謝することを知っていましたね。そこがステキなところでした。
猫は言葉を持たないけど、たまちゃんの感謝はおばあさんに伝わっているといいですね。

17/08/12 光石七

拝読しました。
悲しいけれど温かい、素直に心に入ってくるお話でした。
ヤバイ、涙腺が……
たまのふりをしてきた主人公の猫の感謝の思い、きっとおばあさんに届いていることでしょう。
素敵なお話をありがとうございます!

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