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小高まあなさん

鳥と怪異と特撮ヒーローが好き。 ひねくれつつも清々しい物語がモットー。

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耳鳴リズム

17/06/19 コンテスト(テーマ):第136回 時空モノガタリ文学賞 【 音楽 】 コメント:0件 小高まあな 閲覧数:233

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 耳鳴りがする。
 キーンと音がする。
 ここ一週間、ずっとだ。
 うんざりしながら、ベッドに倒れ込む。うつ伏せになった状態で、後頭部から枕を押し当てる。
 こんなことしても、音は消えないけど。わかってるけど。
 貴重な休日を病院に行くことでつぶしたくない。だから、まだ医師の診断は受けてない。放っておけば治ると思うんだ、これぐらい。
 調子のいい時に、ケータイで耳鳴りで検索するぐらい。
 不安を煽るだけだから、やめればいいのに。わかってるけどさ。
 最初は一定の音しかしなかったが、いつの間にかキーンとか、ピーンとか、段々音にバリエーションがついてきている。そういうサービスはいらない。

 二週間経っても治る気配はない。
 しかし、耳鳴りに付き合っている間に気がついたことがある。
 音のバリエーションは一定周期で繰り返されているのだ。
 つまり、なにかのメロディのようになっている。

 耳鳴りがしだして、どれぐらい経っただろうか? 一ヶ月? もっとかも?
 耳鳴りは、気づいたら昼夜を問わず、ずっと聞こえるようになっていた。むしろ、人の声が聞き取りにくいぐらいに。
 上司にも心配されるようになり、病院に行けと溜まってた有給休暇をまとめて付与された。
 病院へは、行く。
 だけど、その前にやらなければいけないことがある。
 ずっと昔に買って、すぐに飽きた音楽作成ソフトを立ちあげる。
 治ってしまえば、もうこの音は聞こえない。なら、治す前に記憶に残して置かなければならない。
 聞こえるのは最早耳鳴りじゃない。
 どこか懐かしくて物悲しい、旋律だ。
 なにかを訴えかけてくるようなメロディだ。
 これは、残しておかなければ。
 いつの間にか覚えたメロディを口ずさみながら、作業していく。
 このメロディは、残しておかなければ……。

※※

 出来上がった音楽は、動画投稿サイトにあげた。タイトルは、耳鳴リズム。
 爆発的に人気が出るようなものではない。ただの音源。
 でも、いつの間にまことしやかに噂されるようになった。人を自殺に追い込む音楽だ、と。
 気に入って何度も聞いていた人が、ある日突然自殺するという。運営が消しても、いずれまた投稿される。
 今では最初にあげた以外のサイトでもあがっている。
 この音楽について、詳細を知っている人間はもうどこにもいない。

 製作者は動画をあげた直後、十階の自宅のベランダから飛び降りている。


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