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瀧上ルーシーさん

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性別 男性
将来の夢 プロ作家になること。
座右の銘 犬も歩けば棒に当たる。

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三毛猫

17/06/19 コンテスト(テーマ):第138回 時空モノガタリ文学賞 【 猫 】 コメント:0件 瀧上ルーシー 閲覧数:334

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 今朝もいつものようにタマの頭を撫でようとチャレンジする。短い首を傾けて避けると、タマはわたしの手を引っ掻いた。手の甲から血が滲んでくる。
 タマは雑種だがメス猫で美形だ。三毛猫で鼻の下に髭のような黒い斑がある。太っていて手足も短いわりに顔は小さくパーツが整っているので総合的には美形という印象をわたしは抱くのだ。彼女は椅子から飛び降りると、窓際にあるもっと寝心地が良い毛布が敷いてあるキャット・ハウスに重い身体を引きずるようにして歩いて行った。外観は人間の一軒家を小さくした物でふわふわとした素材で出来ている。
 絆創膏を貼りづらい位置を怪我してしまったが、よくあることなので軟膏を塗って無理矢理それを貼ると、化粧をして高校へ行くためにわたしは家を出た。
 授業中は居眠りをしたりスマホを弄ったりしていた。だが頭の中では別のことを考えていた。猫のタマは何故わたしだけ嫌うのだろう。お母さんもお父さんも兄貴も弟も、タマに引っ掻かれないしヒステリックにみゃあみゃあ鳴かれたりしない。みんなタマに餌をやったり気づいたときにはトイレの掃除をして新しい猫砂を入れてやったりしている。だがわたしもちゃんとそうしているので、その点は見られていたとしてもタマに差別される要因ではなかった。それとタマは夜になると、二階にある家族達の寝室に一緒に添い寝しにくるらしい。どの寝室にもくることがあって、何故わたしの部屋には来ないのだ。別に煙草を吸ったりお香を焚いたりしていないのに。もしかしてわたしの体臭がいけないのか? そうだったら女としてガス管をくわえるくらいのダメージだ。
 昼休みになった。友達と机を合わせて購買で買ってきた菓子パンなどを食べていく。
 みんな彼氏がどうとか好きな人がどうとか話していた。だがわたしには赤の他人の男以上に執着する生き物がいた。猫のタマだ。彼女はペットだが家族なので嫌われたままではいたくなかった。
 わたしはみんなに聞いてみた。
「みんなはペット飼ってる?」
「家マンションだから無理」
「いないよ」
「犬なら飼ってる」
 なんてパックのいちごオレを片手に仲間達は言った。猫とはかなり違うのだろうが、犬を飼っていると言っていたミキに聞いてみた。
「家族の中で誰か犬に嫌われている人いる?」
「いないねえ。外で飼ってるから散歩には誰が連れて行っても喜ぶよ」
「そう……」
 わたしの顔を見てミキが聞いてきた。
「なんで? ペットに嫌われてるの」
「うん……実はそうなんだ」
 少し恥ずかしいがわたしはそう答えた。
「ペットって何?」
「タマって言う三毛猫」
「意地悪なことしてない?」
「してないよ」
「体罰は?」
「ないって」
「家族の中で自分だけ世話してあげてないとか」
「わたしもちゃんとやってるよ」
「自分が好きなときに猫が嫌がってるのに長い時間抱っこするとか」
「してないし、そんなことしたら引っ掻かれるよ」
 ミキ以外の二人もああだこうだと、わたしがタマに嫌われる理由を予想してアドバイスをくれたが有効そうな案は何も出なかった。
 その日の放課後。仲間達と遊びに行っても良かったのだが今日はいつもよりとくに早くタマの顔が見たくなった。電車の中で仲間達と別れて、最寄りの駅から歩いて家まで一人で帰って行く。玄関のドアを解錠して鞄も部屋に置きに行かずにキャット・ハウスがあるリビングに行くと、彼女は目を瞑って眠っていた。起こすと余計に嫌われる気がしたので、わたしも自分の部屋でスウェットに着替えて少し眠ることにした。
 気がつくとわたしは猫になっていた。横ではタマが寝ている。猫のわたしは静かにしていたのだが、いつしかタマが「みゃあみゃみゃあ」と鳴いた。猫のわたしはその言語を理解することができた。
「名前も知らない猫よ。私の悩みを聞いてくれるか?」
 タマはなんだか大仰な喋り方だった。わたしは、いいよ、と答えた。
「この家に住んでいる人間のメスのケイコを見るとつい攻撃したくなってしまうのだ」
 ケイコとはわたしの名前だった。
 猫のわたしはわたしがケイコなのだと悟られないようにタマに質問した。
「なんでそうなるの?」
「理由は私にもわからない……だが私はケイコのことが嫌いなわけではないんだ。このままだと私はケイコに嫌われてしまう……どうしたらいいのだ」
 タマも理由がわからないと言っていたが、わたしは彼女の言葉を聞いて救われた。
「大丈夫だよ、ケイコはそんなに薄情じゃないよ」
「そうなのか」
「そうだよ」
 気がつくとわたしは自分の部屋のベッドに寝ていた。身体もちゃんとした人間のものだ。
 キャット・ハウスまでタマを見にいった。そこで頭を撫でようとすると彼女はまたわたしを引っ掻こうとした。
 彼女の爪はわたしの手を傷つけた。血が滲んでくるがそれでも良かった。


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