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アベアキラさん

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His Wor[l]d

17/06/18 コンテスト(テーマ):第136回 時空モノガタリ文学賞 【 音楽 】 コメント:0件 アベアキラ 閲覧数:148

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 別に僕は学校が嫌いなわけではない、クラスにも最低限の友達はいるし、休み時間は談笑をするだろう。何の変哲もない、僕は普通の高校生だった。
 居場所がないわけではない、楽しくないわけではない。だけども満たされないんだ。足りないんだよ、なにかが。
 思春期特有の、と自分で言ってしまうのも恥ずかしい気がするが漠然とした不安が僕に覆いかぶさってくる。将来への不安とか、とにかくそんなの。誰もが持っているようなちんけで、ちっぽけで、だけども避けては通れない悩み。
 自分は人と違うんだなんて思えていた、小、中学生のころに感じていた万能感が懐かしいよ。そこまで昔のことではないはずなんだけど。
 怖くなっておめおめと逃げ出すんだ。そうして僕は自分の部屋に逃げ込むんだ。僕の秘密基地で絶対不可侵な領域。そこで音楽を聴くんだ。部屋の電気もろくにつけないでさ。
 ヘッドフォンで耳を塞いでなんにも聞こえないふりをしているんだ。現実から逃げているだけ、解決法は後回し、どうせ時間がくればどうにかなるんだ。今だけは知らん振りしてもいいだろ。
 
 僕のが聴くのは大体は洋楽でジャンルはハードロックにパンク、それとメロコア。とにかく激しいの。五月蝿いギターに突き上げるような重低音のベース、パワフルなドラムも合わさって僕の中に響くんだ。
 そんななかで一番好きなのは声、暗く湿ったヴォーカルの声が陰気な歌詞を歌うんだ。社会に、他人に、あるいは自分への不満を声を張り上げて叫ぶんだ。
 初めて聴いたときは感動したね。ここまで感情をむき出しにすることが出来るのかと、ここまで魂を込められるのかと。
 よく、エモいって最近聞くでしょ。みんなよくわからないものだって言うけど。エモーショナル、感情的。まさにそれだよ。僕にはわかるんだ。実際に音楽に殴られたものだけがわかる言葉なんだよ。
 音楽は物語という言葉を聞いたときに妙にしっくりきたのを覚えている。映画とかドラマはあんまり好きじゃない。時間がかかりすぎるから。だけど音楽は違うんだ。3分から5分のそこらで感動できるし、僕にはそれがあっているんだ。

 ここまでが僕が音楽を聴く建前。それがないと音楽が聴けないなんて哀しい世の中だよ。まだ20年も生きていないのに知った風な口を利いてるけど。
 いや、別に理由なんてなくても聴けるけどさ。どこが好きって言われてなんとなくとは答えられないでしょ。僕がかっこつけているだけだけどね。
 こうやって理屈をこねて、弄くり回したて小難しいことを並べたけど本質はそんなもんじゃない。本質なんてあるのもわからないけど。
 そう一つだけ確かにいえることは、ただ僕は音楽が好きなんだよ。確かに逃げる場所だし、確かに感動できる物語だけど、ただただ好きの一言で終わることなんだ。
 簡単なことでしょ。ただ回りくどい言い方をしたかっただけなんだ。どうせ洋楽を聴く奴なんて斜に構えたひねくれもんだよ。僕が言うんだ、間違いないさ。

 ヘッドフォンを被るとさ、周りの音が聞こえなくなるんだ。無音の空間、僕だけが世界から切り取られた感覚に陥るよ。
 あとは再生ボタンを押すだけ。そうするといきなり音の塊が襲ってくるんだ。ギターとベースとドラムだけの典型的なバンドの音が。
 誰にも邪魔されない。なににも遮られない。僕だけの世界。確かにそこにあるんだ、ヘッドフォンの中に、僕だけの世界が。

 さあ、今日も音楽を聴くとするか。


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