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瑠真さん

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暗転Nightステージ

17/06/11 コンテスト(テーマ):第136回 時空モノガタリ文学賞 【 音楽 】 コメント:0件 瑠真 閲覧数:146

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 闇とは、
 それがなければ「無」だという状況に、街中からこだまする騒音だとか吹き抜ける肌寒さに、かろうじて大気の存在のみを知れる、空間のこと。
 その闇の向こうから、獲物を狙うような眼は不意に浮かび上がる。
 次第に近づいてくる「ビースト」。もう眼の前という土壇場でそっぽを向いたかと思うと、前面に縦縞の格子を2つ、ナンバープレートとともに突き出したーー玄関前に堂々と横付けされた、大きな白のBMW。
 同時に下りてきた、プライベートでも派手な衣装が好きな「アイドルの卵」は、散々遊び回ったこの期に及んで、尚も彼のマンションまで引っ付いてくる。どちらと言えば「スターの座」よりも、「売れっ子プロデューサー」の泡銭を当てにして・・・。
 片腕に騒がしい「お荷物」を抱え、前後の感覚も曖昧な酩酊の中、最上階へ上がるためのボタンを押す、覚束ない指先。

     ×          ×

 部屋でソファに凭れていると、突然目の前の大画面にスイッチが入るーー頼みもしないのに、女がTVをつけたんだった。つけた本人は少しも視る気配なく、気づけば1糸纏わぬ格好で、シャワーブースへと入っていった。
 改めて映し出された映像をーーって、「またかよ・・・」
 それと分かった瞬間、いっきに酔いが醒めてく。
頭が「仕事モード」に切り替わるからか?既に浴びる程飲み果てた筈の身体は、冷蔵庫のシャンパンへと、改めて手を伸ばす。
 人気絶頂のそのバンドは、今日も深夜の歌番組で1曲披露の最中。
 「別に悪い気しないでしょ?」なんて人は言うけど、人気者も毎日登場となると、さすがに鼻につくというもの。
 けど、そう文句ばかりも言ってられない。
 カメラの向こうでサビを妖艶に歌い上げるその「カラクリ」は、元々自分が仕込んだものだとしたらーー仮にも自分が「プロデュース」してるとしたら、尚更だ。
 何よりこのバンドに対する周囲の評価は今のトコ、好意的なものばかり。他の雑多なバンドと少しも変わらない、装飾過多な外見さえ、その評価に含めたとしても。
 「人の心を掴む」とか言われる、ボーカルの歌唱にしても。
 なるほど、こういう「作詞者」が、意味合いの帳尻合わせで苦し紛れに使った「?」な言い回しも、良く通る声で歌いきる分には、少しも違和感なく・・・
 ーーそんな風に、ひと通り言って聞かせれる程、いつの間にかその姿に見入っている辺り、やっぱり「人を惹き付ける何か」は、少なからずある訳か。今や泡の立ち方も穏やかになったシャンパングラスへと、思い出したように口をつける。
 もっとも、
 その歌い終わりを待ち構えるのは、万雷の拍手ではなくーー

 「キャー♪」

 ーー『キャー』だ。
 果たしてどっちがシアワセなもんだか。
 番組はCMへの入り際。漫画の王子様みたいなブロンドの髪、白い顔立ちで茶目っ気満載に指抜きグローブの両手を振る彼等には、結局のところ、知る由もないーーこういう世界があることを。
 ひたすら歌い続ける彼等を画面越しに見ながら、のんきにシャンパンなんて飲んでる生活を。
 彼等をアゴでコキ使いながらーー自分の知る限り、余りに「栄光」とは釣り合わない額面の月謝を代価として・・・
 そうこうする間に、
 女は意外に早く、シャワーから上がってきた。バスタオルを巻いただけのなりも構わず、さっきからつけっ放しの画面を見るなり、今度は子供みたいにはしゃぎ出す。

 「私このバンド大スキなのーー特にボーカルの人、超好き♪だってカッコ良いもんーーねぇ『プロデューサー」でしょ?あの人チョット紹介してよ♪」

 少しも事情を知らずに、そんなことをせっついて来たりする。

 「・・・・・。」

 何も言わず、シャンパングラスにもうひと口。
 それにしても、
 あれからホントに色々のことが変わった。
 バンドにせよ、俺のこういう人生にせよ。

 ーーアイツに「ボーカル」の座を明け渡した、その日からというもの。

【END】


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