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ジェームズボンバークライシスさん

ジェームズボンバークライシスです。 好きな作家はドストエフスキーと、ゲーテと夏目漱石と芥川龍之介です。よろしく。

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水平線

17/06/11 コンテスト(テーマ):第137回 時空モノガタリ文学賞 【 海 】 コメント:0件 ジェームズボンバークライシス 閲覧数:140

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僕には思い出があった。
水平線を目指してずっとずっと海の先へ行ったこと。
浮き輪もなく、帽子もゴーグルも着けず、水着だけで進んで、進んで、ずっと先へ目指してとにかくがむしゃらに泳いだ。
当時8歳の僕はアンデルセンの童話の「人魚姫」の存在を本気で信じていた。
水平線の向こうに行けば、きっと人魚姫に会えると。
しかし、途中溺れてしまい、気がついたら砂浜の上にいたのを覚えている。
救助隊の人たちが僕の周りを囲む、そして、家に帰ると母親に打たれた。
「何でこんなに危ないことをするのよ!」と。その晩の食事は抜きにされたのを覚えている。
それでも、僕はずっと人魚の存在を信じていた。
そして、僕は人魚姫に告白したいと夢を見た。
20年後
そんな事を思い出し、僕はその当時の砂浜で海を見つめる。
隣にはロングヘアーで髪を下ろした筋の通った鼻の白い肌の美女「紗希」がいた。
僕は彼女をこの海に誘い、デートをした。
彼女はインターネット上のチャットサイトでたまたま知り合った女性だった。
少し年上の彼女は僕と意気投合し、趣味も合い、僕の独身生活への終わりを感じた。
僕は、同窓会に行くたび結婚した元同級生を見るのが嫌で嫌で仕方なく、少しでも良い女性を見つけ、結婚するのが夢なんだ。
しかし、彼女は美人過ぎると言っても過言ではないほどの美女だ。
僕は、会社では特に出会いを求めずひたすら地味な存在で居続けた。
でも、地味だった毎日から少しだけ抜け出せた気がする。
彼女の瞳を見ることが僕にとっての幸福であった。
愛してる、ただ愛してる。
その言葉で全てが足りた、愛という嘘偽りのない感情が僕の精神を揺るがす。
まるで自分のアイデンティティが失われるようだが、そんな僕を見て笑う彼女を見て蕩けそうになる自分がいた。
この想いを口にするのか口にしないのかどうか迷ってしまった。
神にも仏にも誰にも聞けない、この気持ち、愛というのは実に複雑で混沌とし、様々なものを感じる。
ああ、どのように僕は彼女に気持ちを表現すれば良いのだろうか、僕は無能だからか良い言葉が出てこない。
ただ、時は一刻と、一刻と過ぎていくのを感じる。
ずっと砂浜で無言でいた僕と彼女、出会った当初は沢山、それはそれは沢山チャットで話していたが、今日の彼女は笑って僕を見つめるだけで何も語ることはなかった。
一種の寂しさを感じながらも幸福を味わった。
僕はずっとこのままでいたいと思った。
そして、このままいっときの夢を見た。
彼女とレジャー施設でデートして、結婚して、子供を産んで、そして、大きな家を建てて・・・。そんな夢を見た。
喉から手が出るほど彼女が欲しく、そして、多分彼女も僕を欲していそうであった。
ただ、黙って僕を見つめている、これは、僕に惚れているのでは!?そう思ってしまう自分に対し一種の幼さを感じた。
しかし、幸福は永遠ではないことに気付かされた。
海の向こうで溺れてかけている少女がいたのだ。
浮き輪もなく、水着姿の少女は、8歳ほどで、もがいてもがいて苦しんでいた。
僕は服を脱ぎ、パンツ一枚となり、海へ潜った。
そして、がむしゃらに泳いで少女の身体を抱きしめ浜辺まで泳いだ。
しかし、ここでとても大きな波が来て、僕たちは飲み込まれてしまった。

僕たちは死んだのだろうか、
意識が戻り、目を開けるとそこは、砂浜だった。
隣には少女がいた。
少女はずっと、僕のそばに居てくれたのだ。
「ありがとう、お兄ちゃん」
僕は紗希を探した。
そして、水平線に向かって紗希の名を叫んだ。
その時、ピンク色の尾びれが見えた。
そして、美しいロングヘアーが頭部に見えた。
「あ、お人魚さんだ!」
少女は指を指す。
僕は少女に呟いた。
「僕は人魚姫の恋人なんだ、最も僕はフラれちゃったけどね。」
少女は首を傾げ、家に帰って行った。
僕は日が暮れるまでずっと泣いた。
そして、夜の海で僕は呟いた。
「紗希、愛しているよ」


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