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犬飼根古太さん

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性別 男性
将来の夢 どれだけ掛かっても作家になることです。
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音楽は騒音だと思う。まず何から語ればいいか分からないがとりあえず語ろう。

17/06/10 コンテスト(テーマ):第136回 時空モノガタリ文学賞 【 音楽 】 コメント:1件 犬飼根古太 閲覧数:253

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「音楽というものが嫌いだ! あれは僕にとっては騒音以外のなにものでもない。声も楽器の演奏も機械的な音でも何でもだ! そもそも君は知ってるのか? 音楽というのはもともとエセ宗教や軍隊などで大きく用いられることで発展したということを! 音というのは防げない。案外やっかいなものなのだ。考えてみてくれ。汚い物からは目を背けらる。だが音から〈耳を背けられる〉か? 目は閉じることができる。だが〈耳を閉じる〉ことはできるか? どうだぁ? できないだろぅ? ――そうだろ、そうだろ。やっとわかったか。まずそこが音楽の厄介なところなんだ。嫌なら見ないことはできる。だが嫌でも耳に飛び込んでくる音はどうしようもない。耳栓だって十分じゃない。それこそが音楽の暴力性なんだ。暴力性というのが過激すぎるなら、攻撃性とでも言い換えても良い。(コツコツコツ……)
 話を戻すよ。音楽がなぜ宗教だの軍隊だので用いられるかといえば、音楽は精神を高揚させることができるからだ。無論、音によってだ。僕だって日本人だ。太鼓の音くらいは聞いたことがある。――太鼓は悪くない、悪くないさ。和太鼓なんて好きだよ? だが太鼓などの音色、あの体に来るような振動が精神を揺さぶるのはわかるだろ? わかりやすい例だろ? ああして音楽というものは、耳に、体に、振動を与えることで影響を与えることができる。そして古今東西、音楽のないところはない。(コツコツコツ……)
 ――え? それこそが音楽の偉大さじゃないかだって? 違う違う!! 全然違うよ!! いったい君は何を聞いていたんだい! 僕がわざわざ定時で仕事を終えたのに君にこうして長々と音楽について講釈しているのは、音楽の問題点についての話なんだ。音楽は人に対して能動的な立場を取る。対して人は受動的だ。聞かざるを得ないからね。(コツコツコツ……)
 じゃあ話を戻すよ。軍隊で有効なのは、もう言うまでもないだろう。君だって楽器を演奏する軍隊くらい映画なりなんなりで見たことがあるだろうし、なんなら古い戦場でどらを鳴らしたりするのをドラマで見ているかもしれない。そういうことさ。(コツコツコツ……)
 まず音楽には言葉がいらない。ここがまず気に入らないね。音楽に国境はないし、言葉もいらない、って言うと聞こえはいいが、そいつは何も考えていない、論理的な思考をしていないってことだ。ただ気持ちいいだの、ただ楽しいだの、ただ面白いだの……くだらないね。人はもっと建設的かつ前向きに物事に取り組むべきなんだ。刹那的に一時の快楽を求めるなんて、人ではなく野獣だ。まあ音楽は人がまだケモノと呼んでもいいような頃からおそらくあっただろう。ただ石と石をリズミカルにぶつけるだけとかさ。(コツコツコツ……)
 そうそう、話を戻すが、宗教で音楽が役立つってのもそういうわけさ。どんな未開の地に住む住人でも、音楽は伝わる。言語が通じなくてもオーケーさ。わかるだろ? それがどれほど新大陸だので有効だか。そして未開の地に住む人達に、もし見たこともない楽器……そうだな、バイオリンとか知らないとしたら、きっと驚愕するだろう? 音色もそう。形状もそう。ましてモーツァルトもバッハも知らないような連中にソロを聞かせたらきっと感動することだろうさ。そういうもんだからね。音楽というのは。(コツコツコツ……)
 見知らぬ人間が自分達の住む場所にやってきて、音楽をがなり立てればみんな集まるだろうさ。人を集めるのが宗教を広めるための第一段階。第二段階は興味を持たれることだそうだ。だから音楽ってのは非常に効率的に、布教活動の前の、地ならしみたいなことをやってのけられる素晴らしいアイテムなのさ。(コツコツコツ……)
 軍隊でもそうだ。母国語が同じって軍隊ばかりじゃない。昔の軍隊は、小国が入り乱れて、今みたいにテレビもラジオもないもんだから、方言が酷い酷い。結果話が通じないことだってあり得た。学校教育だってなかったり、あってもまったく不十分だったりしてね。つまりそういう時に〈総員突撃〉なり〈退却〉なりの合図を音楽で与えられれば有効なのさ。あとはリズミカルに鳴らすだけでも士気が高揚する。(コツコツコツ……)
 え? 話を戻すとだって。話は十分戻しただろ? 音楽が軍や宗教で……――え? 違ってカラオケの話だって? おいおい、まだ僕を誘うつもりかい? 言っただろ、僕は音楽は嫌いだって。騒音だと思うって」
「じゃあ、カラオケ行かないんですね?」
「ああ、その通りだ。――だいたい感情のまま音に乗せてがなり立てるだなんて、まるで騒音のようじゃないか(コツコツコツ……)」
「わかりました」
 カラオケの誘いを断ることに成功した僕は、コツコツと無意識のうちに机の角を人差し指の指先でつついていたのをやめた。


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このストーリーに関するコメント

17/07/28 光石七

拝読しました。
まさかそれを断るための力説だったとは。
時折挟まれる(コツコツコツ……)も効果的で、その音の正体も皮肉が効いてて面白いと思いました。
楽しませていただきました!

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