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空 佳吹さん

そら かぶき…です。 ちょっと奇妙な小説を書きます。どうぞ宜しく!

性別 男性
将来の夢 作家
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走る魔女 〜海からのプレゼント〜

17/06/06 コンテスト(テーマ):第137回 時空モノガタリ文学賞 【 海 】 コメント:0件 空 佳吹 閲覧数:187

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 種子島から数キロ、東南にA島という無人島がある。
 この島の東海岸ぞいの丘には、十年前にG財閥(ざいばつ)が建てた別荘があった。

 あるきっかけで僕は、その別荘を入手し、一週間ほど前に引っ越してきた。
 理由は、静かな海が大好きで、別荘の近くの砂浜が実に良かったからだ。
 僕は毎朝、この砂浜を散歩しようと決めた。

 その朝も、五時頃に、普段着にショルダーバッグ姿で別荘を後にした。
 気持ちの良い青空の下、ゆったりとした気持ちで沖を眺めたりしながら歩いていた。
 やがて、少し海に入った岩場で休憩しながら一服した。
 大きく深呼吸してから沖を見て、
「リアル天国だな……」
 やがて、また歩き出した。
 空は、いつの間にか曇りだしていて、微妙な表情を見せていた。
「まさか……雨でも降るのかな……?」
 特に沖の雲は、なぜか紫色をしている。
「妙な雲だな……」
 僕は別荘に戻ろうかなと思いながら、ふと砂浜の端を見て、
「えっ?」
 はるか先の崖(がけ)の向こうから、女らしい人物が一人、走ってきていたからだ。
 ロングヘアーでブルーのドレスを着ていて、二十歳くらいに思えた。
 そのスピードは驚くほど一定で、実に快適に走ってきていた。
 だんだん近付くにつれて、なかなかの美人で楽しそうな表情であることも分かった。
「えっ、女か? ボクに何か用事でもあるのかな……?」
 しかし、よく見るとドレスの下は、裸のようだった。
「この島の住人? にしてはミスマッチだよな……」
 どう考えても、訳が分からないので、僕は立ち止まって見詰めていた。
 その女は、そのまま真っ直ぐに走ってきて、不意に沖の方を指差した。
 僕は思わず、沖の方を見た。
 雲の紫色が濃くなっていた。
 その女が気になり、すぐに視線を戻した。
 すると、もう女はいなかった。
「あれ?」
 どこにも隠(かく)れる場所など無いのに……。
 気になって再度、沖を見ると、何かがピカッと光った。
「あれ?」
 そしてその光は、こっちに向って来ているようだった。
 僕が呆然と見ていると、その光は、砂浜の付近まできたところで、フッと消えた。
 その瞬間、肩から下げていたショルダーバッグに、ズシリ……という感じの重さが加わった。
「ん?」
 バッグのストッパーを回そうとしたが、なぜかビクッともしないのだ。
「まるで、別荘で開けろと言ってるようだな……」
 仕方なく僕は、さっきの女が現れた崖に向った。
 そして崖の向こう側に回ってみて、呆然とした。
 そこには人が立てる余地はなく、すぐに海だったのだ。
「まるで白日夢だな……。 この島って、何かあるのかな……?」
 僕は、不思議で訳が分からないまま別荘に戻っていった。
 別荘に帰った僕は、リビングのテーブルにバッグを置き、ストッパーを回してみた。
 すると、すぐに開いた。
 さらにフタを開けると、ものすごい白煙が噴出し、アッと言う間に部屋に充満した。
「ワーオ! なんだこれは――!?」
 僕は、あわてて窓を開けた。
 やがて、その白煙が消えた時、僕は驚いた。
 部屋の中央に、白いボートが現れたのだ。
「このボートで、釣りでもしろってか……?」
 笑いながら、昼食の準備にかかった。

 翌日は朝から雨だった。
 僕は、そのボートのことが気になり、触ってみると、なんとなく紙のようで、持ち上げると軽かった。
 あんな奇妙なカタチで手に入ったにしては、特に変ったところも無さそうだった。
「意外と丈夫そうだな……。沖まで行けるかな?」
 食後、窓から雨中の海を眺めながら、
「あした晴れたら、試してみるか……」

 翌朝は、快晴だった。
 僕は、例のボートを持ち出して砂浜へやってきた。
 すると突然、大地震が起きて、大津波が発生した。
 僕が呆然としていると、海の方から、
『早く、その舟に乗るのよ』
 僕が、そのとおりにすると、ボートの先にあの女が現れた。
「さー、行くわよ」
 ボートは大津波を上手く乗り越すと、沖へ沖へと進んでいった。
 島は大津波に飲み込まれ、僕の別荘も倒壊(とうかい)した。
 僕が悄然(しょうぜん)とボートの端を見ると、海水が入ってきていた。
「ヤバイ! このボート沈むぞー!」
「そりぁそうよ。紙だもの」
 言ってる間に、ボートは沈み始めた。
「うわー! 助けてくれー! ボクは泳げないんだー!」
「だったら、一番いい姿になりなさいな」
 彼女は僕を指差した。
 すると僕の体がピカーッと光り、大きな魚に変身した。
 そして広い広い海を、悠々(ゆうゆう)と泳いでいった。


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