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宮城 透さん

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今日、君に伝える音。

17/05/27 コンテスト(テーマ):第136回 時空モノガタリ文学賞 【 音楽 】 コメント:0件 宮城 透 閲覧数:254

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「今の音はファね」
 青と白にキラキラと光る港。高い空にはカモメが気持ち良さそうに泳いでいる。今日は絶好のお出掛け日和。
 クリーム色のベンチで目をつむりながらそう言ったのは、僕の彼女だ。
「へえ。じゃあ、あの遠くで鳴ってる船の汽笛は?」
僕が港の奥で揺らいでいる船を指差すと、彼女は耳を澄ました。
「あれはドの音よ」
「君はすごいなあ、どんな音でも音階にできる」
「どんな音もってことはないわ」
「そうなの?」
てっきり、絶対音感は全ての音を音階に出来るのかと思っていた。しかし、そうではないらしい。驚い僕に、彼女は小さく笑った。
「あなたの声よ」
「声?」
港に揺らぐ船が、また汽笛をあげた。確かこれはドの音だったか。
「ええ。あなたの声ね、とても心地がいいの。だから音を感じるよりも先に、体にすっと溶けちゃうのよ」
僕が「なるほど。溶けてしまっては音が掴めないってことか」と、先ほどまで丸くなっていた目をやや細めると、彼女もつられて笑った。
「そうね。ホットミルクに角砂糖を入れちゃうような、そんな感じかしら」
「なんだいそれは」
くすくす笑い合っていると、いつの間にか船の汽笛がさらに遠くなっていたことに気がつく。
 他愛ない笑いに目尻を擦る彼女。もう少ししたら、隣にいる大切なこの人に、僕はプロポーズをしよう。
彼女の耳には、どんな音に聞こえるのだろう。その言葉も、彼女の体にすべて溶けていってほしい。目尻の涙を拭ってやり、僕は音を伝えるため口を開いた。


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