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藤原光さん

藤原光 ふじわらひかる。ブログ「ひかるのこころhikaru99.com」を運営。 掌編小説や、ショートショートと呼ばれる、短めの小説を書いています。人間観察や、風刺的なものが主です。 Twitter @fhikaru99

性別 男性
将来の夢 心理学者・カウンセラー
座右の銘 人間万事塞翁が馬

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とあるピアノコンクールにて -音楽とは何か、容姿かコネか出来レースか-

17/05/26 コンテスト(テーマ):第136回 時空モノガタリ文学賞 【 音楽 】 コメント:0件 藤原光 閲覧数:4551

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光は、友人の朋子が参加するというピアノコンクールの話を耳にした。ただ朋子は「知り合いが来ると緊張するからダメ」と言っていた。

光は友人と、帽子をかぶり変装をしつつ、朋子にはこっそり会場に向かうことにした。光自体は音楽コンクール会場に来るのは初めてであったため興味津々で会場や周辺を観察していた。

朋子はあまり裕福な家庭ではなく、有名な先生に師事することはできない。それでも血がにじむような努力をし、この舞台に立つことができた。見た目も美しいかと言われると、若干疑問ではあるのは否めない。経歴としてもパッとはしない。

音楽家にとって、コンクールは優勝すると拍がついたり、可能性が広がるため、プロを目指すにはほぼ必須である。


変装した光は、コンクール会場で朋子を見かけた。ロビー近くの長椅子に一人で座っている。辺りをきょろきょろしたい衝動に駆られながらも、必死に楽譜に注意を向けている、ように見える。朋子とはコンクールには来ない約束なので、見つからないようにしておいた。

他のエントリー者や審査員は知り合いだったりもするようだ。審査員は佐木さぎ先生に、越後えちご先生の生徒が出場するからと挨拶しているし、何やらこそこそと紙袋を渡している。

自信満々なちょっと服装がパステルカラーのヨーロッパかぶれの青年は、パリの名門音楽大学の出身らしい。大層な貴族のようなご家族がお見えである。「のだめ」とも知り合いなんだろうか。なんかひきつけている人数は少ないが、カメラマンを連れている人がいる。ドイツのカメラのようだ。撮影しているのはすらっとしてモデルのような体系で目鼻立ちのすっきりした女性もいる。



コンクールが始まる。エントリーした演奏者には胸元に番号が付けられ、まるで機械作業のように演奏が進んでいく。

エントリーナンバー4番の朋子の演奏も始まる。身内効果か、一番上手く聞こえた。

エントリーナンバー7番のさっきの審査員に挨拶をしていた女性だ。なんかミスどころか、一瞬止まった。これは残念だろう。

エントリーナンバー9番は、モデル並みの女性。ドイツからのカメラが回っている。



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全員の演奏が終わり、審査会も終わり、結果が発表される。



結果は、

3位は、パリ名門音楽院で修業を積んだ男性。

2位は、先ほどのモデル並みの見た目の女性。

1位は、先ほどの師事する先生と一緒に挨拶に行っていた女性。


その何人か来ていた観客も「ああ、やっぱりあの子か。あの先生の教え子だよね。」「さっき演奏途中で止まってたじゃないか。」「佐木先生が審査員の時は、越後先生の教え子が優勝するんだよ。」

そもそもコンクールと言われるからには何百人もホールが埋まるほどの大盛況!、かと思いきや、ぶっちゃけ身内と超音楽好きか、若干ボケて何が起きているのかよくわからないけど、とりあえずコンサートホールに座っている老人くらいのものである。

素人からすると、課題曲なんて、ぶっちゃけみんな一緒に聞こえるし、本当に音楽で評価しているんだろうか?

疑心暗鬼とは怖いもので、人間一度怪しく見えだすと、全部が怪しく見えてくる。

ドイツのカメラは、モデルの女性が涙ぐむのを予想していたかのように、カメラを構えた。

さっきの紙袋を渡している光景は心のなしか、目も「越後屋、おぬしも悪よのう。」って言っているように、にやけて見える。



コンクールとは何なのか。本当に、実力を正当に評価しているのか。芸術は、いくら客観的に評価しようにも、スポーツのように得点や記録で出るわけじゃない。

しかも、論文審査のように相手が見えないわけではなく、審査員はホールで演奏を聴いている。ということは、審査員は誰の演奏だかが分かる。自分の教え子も見える。

番号による審査と言っても、エントリー者の学歴も書いてあるし、顔見えるじゃないか。

それとも「コンクール」とは、「出来レース」をそれっぽくして、「どこの馬の骨ともわからない新人が華々しくデビュー」そういうシナリオを形作るためだけに、開催されているのがコンクールなのか。これじゃ他の参加者はただの人数合わせじゃないか。朋子もなんで参加してるんだよ。

まあコネも実力のうち、顔も金も政治も「音楽」のうちならば、「音楽のコンクール」なのだから、的を射ているようである。郷に入っては郷に従えと言われればもうしょうがない。



ということで、今回の「ピアノコンクール」は、

銅メダル:経歴

銀メダル:容姿

金メダル:コネ

だったようである。

なんとも素晴らしい音楽のコンクールだことで。


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