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寛解男子さん

いつもの日常、変わりのない平凡。ただ、それでも見方を変えれば、非日常的。毎日が少しづつ変わっている。みんなそんなことも知らないで笑ってる。その中で、切り口を見つけたい。

性別 男性
将来の夢 童話作家
座右の銘 安寧秩序(あんねいちつじょ)

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「コスモスの咲く頃」

17/05/24 コンテスト(テーマ):第136回 時空モノガタリ文学賞 【 音楽 】 コメント:0件 寛解男子 閲覧数:226

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夏が終ろうとしていた。青木睦子には、大好きな秋がやってくることが嬉しくて仕方がない。毎年のことだが、落ち着きがない。そんな彼女をもっと嬉しい落ち着きのないことが待っている。今日は、睦子にとって何十年目になるかわからないが、試乗者に乗る。ペーパードライバーだった睦子にとって、自動車学校に行って、自動車の、路上運転の講習会に参加して、さらに、夫がいつも運転しているセダンの自動車にも乗った。何回もシュミレーションしてきた。夫と睦子がこの町のマンションに引っ越してきたのは最近である。子供の手が離れ、大きな家に夫婦二人だけの生活に無駄なことが多くなった。子供にこの家を譲り、新しいマンションに引っ越したらよいかもしれない。いつもお互い目の届く範囲で好きなことをするのもいいかもしれない。
「睦子もひとりで行動したい時が多くなるかもしれない、いつまでも私の運転で買い物に出かけるのもいいが、睦子も一応免許持っているのだから、好きな車に乗って、買い物とか、好きなことをすればいい」夫から言ってくれた。確かに、食料品の買い物には必要である。睦子は、一番近いスーパーマーケットに自転車で行っていたときは。片道三十分の自転車で、買い物かごに食料品をのせてまた三十分以上の時間を費やし、自宅に戻る。時間も、体力もきつかった。夫の言葉に甘えて、自動車を買うことになった。そして睦子が運転する。前々からどうせ乗るならこれに乗りたい。と言っていた自動車あった。夫も気にいっていた。でも、やっぱり買う前に試乗してみたい。林は大手自動車ディーラーの営業である。ふつうは、自動車の試乗は、営業所が出発地点であって、走るコースも決めて試乗するのが定番である。それを、「自宅を出発地点に、近くのスパーに行きたい」こんなことは保険にもかかわるし、だいたいは断る。しかし、林の考えでは、ほぼうちのクルマを買ってもらう、長い付き合いが始まるのを前提に上司にお願いした。「その客を次の機会にも、うちのクルマを買うようにしろ、それが絶対条件だ」本部長の許可が取れた。林はインターホンに話していた。「青木様、おクルマの試乗に参りました林です」「はい、少し待っていていただけますか」返事があった。睦子は小さなバックを持って、ジーパン姿で、マンションの外に出た。「わぁなんてきれいなクルマかしら、色も素敵!」「青木様、とりあえず近くのスーパーマーケットに行きましょう」「はい、よろしくお願いします。なんだかどきどきするわ、落ち着け、睦子ん〜」           
睦子は、緊張した。後続車がイライラするくらい法定速度で到着した。もちろん車庫入れも問題はなかった。「え〜うそ〜十分よ、十分で着いてしまったわ。こんなことなら早く決めておいたらよかった」これからが林の営業の見せどころである。「このまま、ここでお話ししましょう、ちょっとクルマから出て見ましょう」「青木様、色は薄いピンクで、シートも同じ色でよろしいでしょうか?内装、外装また、オプションなど細かい・・」「ええいいわ、もう最高!これなら、どんなこともできるわ」睦子はもう林の話は聞いていなかった。
納車の日、睦子は朝から落ち着かない。昨日の夜もなかなか眠ることが出来なかった。
林は予定時刻の午前十一時に青木睦子のマンションに来た。また営業所に戻るための社用車と、運転手。林は予定されているクルマかどうか睦子と一緒に確認をした。睦子は林に少し興奮気味に言った。「林さんお願いがあるの、この新車でもう一度私の運転であのスーパーマーケットに一緒に行って私の運転を見てほしいの」「えっそれは指示にはありませんが、ちょっと待っていてください」林は営業車と運転手ひとりに帰ってもらった。
睦子が運転席に座り、林は助手席に座った。運転は法定速度で走った。睦子はもう少しであのスーパーマーケットに着くとき右折するための指示機を点けなかった。                           「林さん怒らないで聞いてほしの。初めての自分のクルマで運転できたら、一番初めに行きたい場所があるの」林の返事を待つことなく、睦子のクルマは直進した。まだ路面電車が走っていた頃車道の中央にホームがあった。
今は花壇となっている。睦子は。路面電車のコースどおり左折した。花壇には、コスモスの花が一面にたくさんの色の花が咲いていた。
「わぁー素敵、なんてきれいなコスモスなの、来てみて、よかったわ」コスモスは秋晴れの中、キラキラ輝いていた。「秋もなかなかいいもんだな、コスモスは幸せを運ぶ花のようだ」林は営業所に戻るタクシーは、コスモスの花壇には入らず直進した。タクシーのカーラジオから、「オータム」(ジョージウインストン)のピアノの曲が流れていた。ピアノの鮮烈が、まぶしかった。


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