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PURINさん

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パクパク

17/05/22 コンテスト(テーマ):第136回 時空モノガタリ文学賞 【 音楽 】 コメント:0件 PURIN 閲覧数:225

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友人に聞いた話。

ガタゴトという揺れと、暖かな日差しが心地よい。
電車の長椅子の端っこに座っていた友人は、うとうととまどろんでいた。
スマホにつないだイヤホンから流れてくるゆったりした曲も、眠気を誘っていた。

目的の駅まではまだだいぶあるし、このままちょっと寝ちゃおうかな…

そう思っていると。
急に半開きの視界の中に茶色い何かが現れた。

はっと見ると、向かいにやたら厚い、茶色いコートを着た人物が座っていた。顔を少し上げ、目線は天井に向けられていた。独りごちているのか、口を色々な形にパクパクと動かしていた。

あれ、この人いつからいたっけ。さっきの駅から?それより、何してんだろ?独り言?なんであんな方見ながら?気持ち悪いな…

「気持ち悪い」と感じたはずなのに、なぜか友人はその人の口の動きから目が離せなかった。

しばらくパクパクしていたかと思うと急に口を閉じ、ちょっとしたらまたパクパクを再開するというのを繰り返しているようだった。

ふと、友人は気付いた。

あれ、あの口の動きって…

ギョっとしたのと、友人のすぐ隣のドアが開いて駅名を告げるアナウンスが流れたのはほぼ同時だった。いつの間にか、電車は次の駅に到着していたのだ。
まだ降りる駅には程遠かったが、友人は電車から飛び出すようにホームに降りた。周りにいた数人が驚いた顔をしていたのが分かったが、気になどならなかった。咄嗟にホームにあったコンビニに駆け込んでしばらく時間を潰し、何本か後に来た電車にあの人がいないことを確認してから乗車して無事に目的地までたどり着いたそうだ。

もしかしたら気のせいだったのかもしれない。でも、その時はすごく恐怖だったんだ。

あの人は、友人が聴いていた曲の歌詞にぴったり合わせて口を動かしていた。
歌詞のない間奏のところでは律儀に黙り、また歌手が歌い出したら、同時に自分も、声を出さずに口形だけで歌い出していたのだ。

気を付けてるから音漏れしてたってこともないと思うんだけどね。ただあれ以来、なんとなくイヤホンで曲聴くのが怖い。

友人はそう苦笑していた。


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