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小高まあなさん

鳥と怪異と特撮ヒーローが好き。 ひねくれつつも清々しい物語がモットー。

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俺が正義だ

17/05/22 コンテスト(テーマ):第134回 時空モノガタリ文学賞 【 正義 】 コメント:0件 小高まあな 閲覧数:687

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 愛は昔から正義の味方が大好きだった。
「じゃあ、まーくん、だーくすねーくやってね」
「えー、またぁー? いつもボクがわるものじゃん!」
「だってアイ、れっどぴーこっくやりたいもん」
 幼稚園の時、一事が万事この調子だった。他の女の子がおままごとしているのに目もくれず、男の子に混じって戦隊ヒーローごっこをしていた。その時やっていた鳥類戦隊バードマンを。
 しかもバードマンは、ホワイトクレインとブルーオーストリッチという二人が女の子なのに、頑なにレッドピーコックをやりたがった。正義の味方の、それもリーダーに憧れていたのだ。
 それは今もで。
「見て、これ!」
 差し出された携帯電話を受け取る。映っていたのは絶賛放映中の戦隊ヒーロー、トラレンジャーだった。
 ショーのようで、躍動感溢れるキックの瞬間だ。
「どこの?」
 尋ねると近くのショッピングセンターを挙げられた。またこの子は、高校生にもなって週末を近所のヒーローショー巡りに費やしたのか……。
 三つ子の魂百までとはよく言ったものだ。俺の幼馴染の高野愛は、未だ特オタをこじらせている。それも変身前がカッコイイからとかではなく、幼稚園児のように正義のヒーローに燃えている。
 高校は別々なのだが、家が向かいで、しかも出掛ける時間が一緒だから、なんとなく駅まで一緒に行く。というか月曜日の朝は愛が俺を待っている。週末に撮った写真を見せるのとと、日曜の戦隊ヒーローの感想を言いたくて。
 仕方がないのて、俺もなるべく戦隊ヒーローを見ている。他に話が合う人もいないだろうし。
「六人目出たね! まさか、一話目のあの女の人だったなんてねー」
 ヒーローの話をしている愛はとても楽しそうだ。
「あ!」
 愛はなにかに気がつくと、駆けていく。駅の階段をベビーカーと大荷物を持った女の人が困った顔で見上げていた。うちの駅は、未だにエレベーターが設置されていない。
 またかよ、と思いながら急ぎ足で近づく。
 私が運びますとか言っている愛の頭を軽く叩くと、
「お前はこっち」
 俺の鞄を手渡す。
「怖いんで赤ちゃん抱っこしてもらってていいですか? ほかの荷物こっちのせてもらって」
 荷物だらけのベビーカーを抱え上げる。これ、意外と重いんだよなー。
「正義(まさよし)、大丈夫?」
「へーき、鍛えてるので」
「私も鍛えてるんだけどなー」
 膨れる。知ってる。正義のヒーローに憧れて小学生になってすぐに空手を習いだしたことも、そこそこ強いけど週末はヒーローショー廻りがあるから今は部活に入ってないことも。でも、俺とは鍛え方が違う。
 ありがとうございました、と去っていく親子を満足そうに愛は見つめる。口先だけではなく、実際に動こうとするところがこの幼馴染の正義を応援できる理由だ。
「あ、知ってる? リアル正義のヒーロー、ジャスティバーのこと」
 とか思ってたら、唐突にパンチが飛んできた。くっそ、遂に愛の耳にも入ったか。
「あくまでネットの噂なんだけど。強盗とかをとっちめる正義のヒーローがいるんだって。銀色のスーツを着てるの」
「リアルで? いるわけないじゃん」
「かなぁー」
 そこで愛が乗る電車が来たので別れる。愛がこれ以上、ジャスティバーの情報を仕入れないことを祈るばかりだ。
 愛と俺とでは鍛え方が違う。何故なら、半年ほど前から俺は正義のヒーロー、ジャスティバーとして犯罪組織イヴァールと戦っているのだ。
「遂に愛も知ったようだな、正義」
 一見、スマフォのような外見をした変身デバイスが言う。画面上に表示される顔。こいつがジャスティバーの本体で、俺と合体して戦うのだ。
 偶然、こいつを拾ってしまったせいで、今や俺は正義のヒーローだ。
「最悪だよ」
 ジャスティバーに言葉を返す。
 愛には出来るだけジャスティバーのことを知らないでいて欲しい。知ったら最後、追いかけ始めるだろう。結果、犯罪に巻き込まれる未来が見える。
「わかってると思うが正体は」
「秘密なんだろ。頼まれても言わねーよ」
 そして俺がジャスティバーだなんてバレたら、ズルいだの私も変身したいだの言い出すに決まってる。高野愛の正義は時に、というか常に暴走気味だ。
「愛に色々バレる前にイヴァールを壊滅する」
 それが一番、良い方法だ。デバイスをぎゅっとにぎる。
「ところで、正義」
「なんだよ」
「実は私と同じような感じで行き倒れているであろうラバースという妹がいるんだが。もちろん、変身能力がある」
「そういうのは早く言えよ!」
 くっそ、愛が間違って拾う前に見つけなければ! 現実世界で危険な目に遭う正義のヒーローなんて、俺ひとりで十分なのだから。
「愛と正義なんていいコンビだろうに」
 ジャスティバーが他人事のように言った。うぜぇ、デバイスたたき割りてぇ……。


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