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笹岡 拓也さん

文章で笹岡 拓也の世界を伝えられたらいいなと考えてます。 キャラクターたちがイキイキとした物語を書いて、読んだあと何か残れるような作品にしていきます。

性別 男性
将来の夢 自分の作品を多くの人に読んでもらうこと
座右の銘 生きているだけで幸せ

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音楽の魔法にかかった友人

17/05/22 コンテスト(テーマ):第136回 時空モノガタリ文学賞 【 音楽 】 コメント:4件 笹岡 拓也 閲覧数:772

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大学生の俺は昼休みに友人とラーメン屋に向かった。この友人はかなりのくせ者で少々付き合いにくい。それでも友達が少ない俺にとっては大事な友人だ。
「ドレ?」
「あそこの店だよ。ほらあの行列の」
先日たまたまバイト帰りに立ち寄ったラーメン屋がとても美味しかったので、俺は友人をそのラーメン屋に招待したのだ。やはり俺が美味しいと思った店なだけあって、かなりの行列になっていた。
「ここのラーメン屋は何と言ってもトンコツなんだよ!店主も言ってたし!」
「ファッソ」
俺がここの店のラーメンを熱く語っているのに、友人は気が抜けたような相槌をする。少し気になったが、いつもこんな感じだったなと思い込み、俺は話を続けた。
「ラーメンも天下一品だけどさ!サイドメニューも凄いんだぜ?なんとマンゴージュースも飲めちゃうんだよ!しかも激ウマ!」
すると友人はマンゴージュースにピンと来ていない様子で
「ラッシー?」
と質問してきた。俺もマンゴージュースとマンゴーラッシーの違いが咄嗟に分からなかったので適当に
「そんなもん!」
と促した。そんな会話をしていてもまだラーメン屋には辿り着かない。美味しいラーメンほど長く待った方がいいと誰かが言っていたが、俺はいち早くラーメンが食べたかった。長い行列も終盤に差し掛かった時、友人が俺に
「ソラ!」
と言ってくる。友人が空に向かって指を差すので、俺も空を見上げるとかなり黒い雲に覆われていた。これは一雨ありそうだな。
今にも雨粒が俺たちの頭に降り注ぎそうな天気の中、ようやく俺と友人はラーメン屋に入ることができた。
「何味にしましょう?」
店員さんが俺たちのテーブルに注文を取りに来る。俺はメニューを見ずに
「俺はトンコツ」
と注文をする。友人もきっと「俺もトンコツ」って頼むと思っていると、
「ミソ」
と注文していた。俺があれだけトンコツが美味しいと言ったのに、どうして味噌なんか頼むんだ。これには少し怒りが込み上げてきたので友人に問いただす。
「なんでお前はトンコツじゃなくて味噌にしたんだよ」
すると友人は申し訳ない顔を浮かべながら
「ドレミファソラシド」
と言い始める。俺は急にそんなことを言い出す友人に返す言葉がなかった。しかし友人は言葉を発さずに身振り手振りで俺に説明してくる。
(俺は今、音楽の魔法にかかっている)
いきなり意味の分からないことを言い出す友人。とりあえず俺は必死に説明する友人を眺める。
(今日1日はずっと)
「ドレミファソラシド」
(しか言えないんだ)
全ての説明を聞いても理解し難い内容だった。まずこの世に音楽の魔法なんてものはきっと存在しないし、その音楽の魔法が仮にあったとしてももっと音楽要素を込めた魔法なはずだ。
「何が言いたいのか分からない。お前はそれだけ味噌が食べたかったのか?」
俺が美味しいとおすすめしたトンコツを差し置いてでも味噌が食べたかったなら正直に言ってほしかった。それならまだ理解できるのに。意味の分からない言い訳でおすすめを頼まないのは癪に触る。
(いや本当なんだって!魔法というか、罰というか)
「罰?」
「ソーソー!」
友人は魔法と言っていたが、どうやら誰かに罰を受けているようだ。きっと友人は何か悪いことをして1日音階だけで話せと言われたんだろう。
確かに今日1日振り返ってみると、友人はドレミファソラシドしか言葉を使っていなかった。
「じゃあ今日はそれしか話せないんだ」
「ソーソー」
そんなくだらない会話をしていると念願のラーメンがやって来る。俺は美味しいトンコツラーメンを頬張る。やはり待ちに待っただけあってとっても美味しい。友人もトンコツにすればよかったのに。
「お前トンコツ一口食うか?」
俺がお情けで友人にトンコツラーメンを一口食べさしてあげた。どんな反応が返って来るのか楽しみだったが、友人の反応は薄かった。そして
友人は俺に
「ミソ」
と言い一口食べてさせてくるので、仕方なく食べてみるとトンコツを遥かに超える美味しさだった。
こんなふざけた奴が頼んだ味噌が美味しいなんて、とても損した気分だった。
ラーメンを食べ終わりお会計をしようとすると友人は
「ソレ」
と言ってくる。友人が指差したのは伝票だった。どうやら音階しか話せなかったことへの謝罪も込めて奢ってくれるらしい。
俺は友人に遠慮せずラーメンを奢ってもらうことにした。お会計を済ました友人が店員に
「レシー」
と言っていた。俺はすぐに何が言いたいのか分かり
「レシートいただけます?」
と伝える。店員は慌ててレシートを渡して大きな声で「ありがとうございました」と一礼をした。
ラーメン屋を出た時、かなりの大雨が降っていた。俺は友人に
「この後どうする?」
と尋ねると、友人は当たり前のように
「ファミレソ!」
と上手く魔法で答えてきた。


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このストーリーに関するコメント

17/05/22 浅月庵

笹岡 拓也様

作品、拝読致しました。
46島太郎の時も思いましたが、
発想が秀逸ですね。
オチが上手くて思わず笑ってしまいました。
好きな作品です!

17/05/22 家永真早

面白かったです。
友人の言葉には音階がついているのか気になりました(笑)

17/05/22 のりのりこ

2人がラーメンを食べてるシーンが想像出来ます😅ラストも愉快でした✨

17/06/18 待井小雨

拝読させていただきました。
ドレミファソラシド、しか言えない罰による会話のやり取りがとても面白かったです!
オチの「ファミレソ」に笑わせていただきました!

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