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マナーモードさん

推理小説が好きです。童話も書いてみたいと思っています。

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割り箸

12/11/22 コンテスト(テーマ):【 箸 】 コメント:0件 マナーモード 閲覧数:1511

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割り箸の生産量が減少しているというニュースをラジオのアナウンサーが伝えたとき、浅野は高校生だった頃の同級生の一人を思い出した。
彼と同性のその同級生は、学業成績がやや上位だということのほかに、これといって取り柄のない人間であり、クラスの中ではまるで人気がなかった。
「俺ってこれだけの顔なのに、どうして男にも女にもモテないのかなあ」
 そんなことを、平原というその男は口癖のように度々云っていた。確かに彼の顔は精悍な印象で、非常にバランスが取れていて、まるで二枚目俳優のようだった。
クラスの中の代表的な「イケメン」と云えば、誰でも彼を思い出したものだった。平原の不人気の原因は、いつも無愛想で生意気だったからなのだが、本人はそれに気付いていないらしかった。
「おい、浅野。お前食堂から帰って来るとき、割箸持ってきてくれ」
 ある日の昼休みに、そう頼まれたことがあった。彼に頼まれたのが浅野だった理由は、教室にほかの生徒がいなかったからだ。
「お前のおふくろが入れ忘れたのか?」
「今日はファッションショーを見に行くとかで、心ここにあらずという状態だったんだ」
平原はいつも母親に手作りの豪華な弁当を持たされて登校していた。彼の父親は大手企業の重役だという噂だった。
浅野は平原に対して明確な返事をすることもなく食堂へ向かい、安くて旨くないうどんを食べ、校舎の裏で仲間と共に談笑しながら、ゆっくりと煙草を吸って教室へ戻った。
「何だよ。箸を持ってきてくれなかったのかよ」
「えっ?そんなこと頼まれた?」
 そのとき、午後の授業が始まることを報らせるチャイムが鳴り渡った。浅野は、ほかの同級生たちからの要望もあったので、わざと平原の頼みを無視したのだった。
 平原への反感は、彼が裕福な家の息子だったことと無関係ではなかった。浅野も親に弁当を作ってもらいたいと、思ったこともある。だが、貧しい彼の家ではそんな余裕はなかった。彼の母は早朝から仕事に出ていたのだった。

              了


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