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つばきとよたろうさん

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花電車

12/04/05 コンテスト(テーマ):第二回 時空モノガタリ文学賞【 居酒屋 】 コメント:1件 つばきとよたろう 閲覧数:2361

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 その町ではお祭りに合わせて、二種類の珍しい路面電車が走る。一つは派手な電飾に彩られた車両で、花電車と呼ばれている。一昔前のネオン街を思わせる眩い明かりが、町中を滑走する。パッと目の前に現れ、通り過ぎると、初めてそれを目にする人も、見慣れている人も僅かばかり時を忘れたように、そのギラギラした光に顔を明るくする。夜になれば、一層その電飾の輝きは際立って、街並みの中でその電車だけが浮いているように思える。この季節の風物詩と言えよう。電車は町の中をパレードのようにぐるりと回って元の所へ戻って、また走る。

 もう一つは車両の中で、ビールとつまみが飲食できるビール電車で、路面を走る小さな居酒屋と言ったところだ。車内ではきんきんに冷えたビールを片手に、つまみを片手に、一口すすって、一つ摘む。車窓から見渡す街の景色を眺めながら一杯やる。そうしているうちに、窓の景色はどんどん流れていく。赤ら顔の同乗者のどよめきが起って、ちょうど上りと下りの二車線で路面電車がすれ違おうとしている。向こうから来るのは、にぎやかな明かりの花電車である。その車両の電飾がもう手の届きそうな所で、ぴかりぴかりと瞬いている。

他の客も皆、そっちへ振り返って外の景色に目を奪われている。これはとても忙しい。電飾に目を丸くし、ビールをすすって、つまみを口へちょいと放り込んで、またビールをぐっと喉に流す。花電車はすぐに行ってしまう。慌ただしくやりながらも、その一瞬を楽しんでいる。みんな誰も面識の無い乗客ではあるが、その時の心持ちは一つであった。花電車の明かりに心を躍らせていたのだ。いやー、一番いいところを頂きました。誰もが赤い顔で、口元をほころばせている。普通の居酒屋では、独りじゃとても寂しくて飲んでいられないが、電車の居酒屋だと独りでも十分に面白い。わいわいやるのもいいが、眼前を過ぎる夜景をつまみに一杯やるのも悪くない。


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このストーリーに関するコメント

12/04/08 かめかめ

もうすぐ花バスが走りますね

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