光石七さん

光石七(みついしなな)です。 子供の頃から空想(妄想?)が好きでした。 2013年から文章化を始めました。 自分では気付かないことも多いので、ダメ出しを頂けるとありがたいです。

性別 女性
将来の夢 可愛いおばあちゃん
座右の銘

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2

誘引

17/05/08 コンテスト(テーマ):第133回 時空モノガタリ文学賞 【 スイーツ 】 コメント:0件 光石七 閲覧数:591

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 幼い兄妹が森で迷子になった。泣きじゃくる妹を兄は懸命に慰める。
「大丈夫だよ、帰れるから」
 兄は妹の手を引き、帰り道と思しき道を歩き始めた。だが、それは帰り道ではなかった。兄妹は更に森の奥へと進んでいたのである。
 歩けども歩けども、鬱蒼とした森が続くばかり。疲れと空腹が兄妹を支配していく。
「お兄ちゃん、あれ……もしかして誰かのおうち?」
「ホントだ、行ってみよう」
 建物の影をみつけ、兄妹は走り出した。
 その一軒家を間近で見た兄妹は驚いた。ビスケットが煉瓦のように貼られた壁、ウエハースの窓枠に氷砂糖の窓、マシュマロの屋根――。全てが菓子で出来た家だった。兄妹はごくりと生唾を飲んだ。
「おいしそう! いただきまーす」
「ちょ、ちょっと待って!」
 兄は妹を制し、ココアビスケットのドアをノックした。
「すみません、誰かいますか?」
 返事は無い。中に人がいる気配も無い。菓子の甘い香りが腹をすかせた兄妹の鼻孔をくすぐる。――もう我慢できない。兄妹は菓子の家に手を伸ばした。
 ビスケットを剥がし、ウエハースを折り、マシュマロをちぎり……。兄妹は夢中で食べた。夢中になりすぎて気付かなかった。菓子の家がその周りの土と共に少しずつ隆起していることに。否、それは土ではなかった。兄妹は《それ》の腹の上で菓子を頬張っていたのだ。
 地面から顔を出した《それ》は、黒い触手を二本伸ばして兄妹を捕らえ、一気に口に運んで二人を飲み込んだ。あっという間の出来事だった。
 食事を終えた《それ》は、無数の触手で菓子の家を包み込んだ。触手が離れた時、菓子の家は兄妹に食べられる前の状態に戻っていた。
 《それ》は再び地中に沈んだ。地上に残ったのは菓子の家と森の静寂だけだった。


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